縞蚊は「どうすればいなくなる?」 昆虫館の元館長が関西弁でぼやく、“家の中の生きもの”の本音

暮らし

2018/7/8

『家の中のすごい生きもの図鑑』(久留飛 克明/山と渓谷社)

 これからの季節、どんどん増えてくる蚊やコバエやゴキブリ。都会に住んでいても、否応なしに奴らの生命力を感じるのが、春から夏にかけての季節である。ましてや我が家は猫やウサギや小学生も同居中なので、ノミやダニなんかもどんどん存在感を増してくるのである。おまけに家の前は数か月前まで雑草ぼうぼうの空き地だったので、やぶ蚊の凄まじさは軍勢とも言うべきで、ハチ、アブ、カメムシ、カマドウマにダンゴムシ、ワラジムシなんかも普通に家の中に入ってくる状態であった。無論、ドアの開閉時にゴキブリも飛来する。

 しかし、人間目線から言うところのこれら「害虫」のお陰で、季節の移り変わりを否応なしに知らされ、「面倒臭いけど、衣類の入れ替えやるか」とか「米びつ用の防虫剤買わないとヤバい」とか「今週末はカーペット丸洗いだな」とか、季節の家事に向けて重たいお尻を叩いてくれているのも事実。あいつらがいなければ、間違いなく、家まわりの細々した雑用などはついつい先延ばしにしていたであろう。

 しかし、やつらを季節の家事リマインダーとしては受け入れつつも、人間目線で招かれざる客的に考えていたのは事実。が、『家の中のすごい生きもの図鑑』(久留飛 克明/山と渓谷社)は、人間と対等な同居人(?)としてのヒメマルカツオブシムシやらチャドクガの立場から、大阪の昆虫館の元館長で「NHK夏休み子ども科学電話相談」でおなじみの久留飛氏が、彼らの本音を関西弁でぼやくという、「やつら」目線の一冊なのである。

 例えば、コクゾウムシの本音はこうだ。

「知らん間に、米の中に黒い物が混じってても、気にせんといて。食べても毒はないからな。ほならやで」

 いや、そう言われても。でもまあ、毒がないのは良かったとしか。

 アタマジラミに予防法を聞けば、「そのうち人間の体毛がなくなったら、私らおらんようになるわ」。そりゃそうでしょうが……。

 ヒトスジシマカに「どうすればいなくなる?」と聞けば、「この質問愚問や。蚊がおらんところに行ったらええねん」と一刀両断。そりゃ、蚊の側からしたら、人間が居場所を変えりゃいいだけですからねえ……。という具合に、種を超越した元館長さんのイタコぶりが全編冴え渡っているのである。しかし、キンバエの項目で、「都会の宝石、例えばエメラルドなんかに見えるはずや」って言うのは、もはやキンバエの心の声ではなく、元館長さんの虫への偏愛の告白でしょう。キンバエを見て、「都会の宝石」と言えるのは、相当なもんです。

 そこはさておき、虫以外にも、「害獣」や「害鳥」とされることもあるドバトやアライグマ、ハクビシンなども取り上げ、あまり普段考えていなくても、人間が色々な生物と共生していると考えさせてくれる本書。クロゴキブリの項目から始まり、最後の項目は人間。ヒトもしょせんは「家の中のすごい生きもの」のワンオブゼムなんですよ! ちなみに、元館長のイタコ芸は、ヒトの項目よりクロゴキブリのほうが完全に上です。

文=ガンガーラ田津美