60歳で広さ半分以下の賃貸へ家族で引っ越し! 暮らしを「小さく」して見えた“シニア世代の生き方”

暮らし

2018/7/11

『生き方がラクになる 60歳からは「小さくする」暮らし』(講談社)

 60歳はこれまでの暮らしを見つめ直し、残りの人生をどう生きていくかを考える節目となる。そんなシニア世代に、暮らしを「小さく」していくことで生き方を変えていこうと提案しているのが『生き方がラクになる 60歳からは「小さくする」暮らし』(講談社)だ。本書にはNHKの人気テレビ番組『きょうの料理』にも出演されていた藤野嘉子氏が実体験で感じた、心地よい老後を送るコツが詰まっている。

 藤野氏は還暦を迎える頃に、住み慣れた150平方メートルのマンションを手放し、半分以下の広さである2LDKの賃貸マンションに引っ越したことを機に、暮らしを小さくしていった。

 老後は持ち家で暮らすもの。そう思っているシニア世代は多いだろう。現に藤野氏も夫の賢治氏から引っ越しを提案されたときは、不安が先だったという。しかし、シニア世代の現実は想像以上にシビアであることに気づき、暮らし方を柔軟に変えていこうと決心した。

 日本では家を買うことが人生の一大事で、買ってしまえば一安心という考え方が一般的であるが、年金暮らしになれば、現役の頃よりも収入が減り、肉体的な衰えも感じ始める。そうした状況に置かれても、私たちは本当に持ち家や住み慣れた賃貸住宅を維持し続けていけるのだろうか。

人生設計においては、持ち家を手放すことも選択肢の一つ。変化を恐れず、より広い視点で判断して、自分自身に合ったライフスタイルを見つけたいと思っています。

 そう語る藤野氏は子どもたちに財産をたくさん残すよりも、これから先、迷惑をかけないで済むような生き方をしたいと思い、マンションの売却に踏み切り、保証人不要のUR賃貸を契約した。

 自分の人生はいつどうなるか、分からない。だからこそ、生きているうちにできる子ども孝行を考えていくことも、よい老後を満喫するためには大切なのかもしれない。

■シニア世代以外の心にも刺さる! 必要なものにだけ囲まれた生活とは?

 毎日を楽しく生きていくためには、最低限度のものさえあればいい。そう実感させてくれる藤野氏の体験談は、物に溢れた現代で生きているすべての方に“本当に大切なものは何か”という問いを与えてもくれる。

広さよりも大切なのは「どんなふうに暮らすか」です

 引っ越しを経験し、心からそう感じた藤野氏は暮らしを小さくすることで、自分の中に渦巻いていた「もっともっと」という欲望から解放されたという。必要なものだけに囲まれた生活は、心を健康にしてもくれるようだ。この場合の“必要なもの”とは、ただ単に生活で使う機会が多いアイテムを捨てずに取っておくということではない。周りからすれば、なんてことないように見えるものでも、深い思い入れや印象的な思い出があれば、自分の暮らしにとって必要なものだといえるのだ。

 藤野氏の場合はそれが祖母から貰った人形や置物、飾り棚であったため、引っ越し先の賃貸マンションにも持っていったのだそう。自分にパワーを与えてくれる一点ものは、慣れない土地で暮らし始めた引っ越し後の不安定な心にも穏やかさを与えてくれたという。

 愛着のあるものには、目には見えない価値が宿っている。豊かな現代はそんな事実を忘れてしまいそうになるくらい、物が溢れている。本書は老後の暮らし方がテーマになっているが、心の掃除を行いたいと思っている方にも藤野氏の言葉は染みるはずだ。

 終わりの見えない欲を抱えている方や老後の不安が強い方は、人生の節目を機に思い切って生活を変え、素直な生き方をしてみよう。暮らしを小さくしてみれば、自分を好きになれたり、本当に必要なものが見えてきたりするかもしれない。本書には藤野氏直伝の料理レシピも掲載されているので、そちらも併せて楽しみながら、自分らしい人生の送り方を考えてみてほしい。

文=古川諭香