「異常気象」はなぜ増えた? TBS『ひるおび!』気象予報士の森さんがわかりやすく解説

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2018/8/1

『異常気象はなぜ増えたのか』(森朗/祥伝社)

 ここ数年、異常気象が続いている。平成最悪の被害となった西日本豪雨は各地に甚大な被害をもたらした。その後、異常な猛暑が日本列島を襲い、7月23日に臨時記者会見を開いた気象庁の予報官は「災害と認識」とコメントした。

 報道では「観測史上1位」「数十年に一度」「記録的」というワードが連日のように並び、もはや「異常気象」が「日本の気候」になりつつあるように感じる。

 それにしても、異常気象はなぜ増えたのか。その疑問にストレートに答える1冊がある。『異常気象はなぜ増えたのか』(森朗/祥伝社)だ。著者は、TBS『ひるおび!』でおなじみの気象予報士・森朗さん。さっそく本書よりその原因をみていこう。

■ゲリラ豪雨が起きる仕組み

 異常気象が増えた原因はいくつかある。その中でも大きな原因となっているのが「気温の上昇」と「海水温の上昇」だ。本書では両者がもたらす影響について、森さんが気象予報士の知識をふんだんに織り交ぜながら解説している。しかし少々難しいので、この記事ではその雰囲気だけをお伝えしたい。

 暖かい空気は軽く、冷たい空気は重いという性質がある。暖気と寒気が混在すると、暖気は上へ、寒気は下へ、という動きが生じる。これが気象の基本の1つだ。

 最近では、気温が年々高くなる傾向にある。私たちが生活する地表付近の空気が暖かいのだ。そこへ上空に寒気が流れ込むと、上空が冷たく、地表は暖かいという逆転現象が起きる。つまり大気の状態が不安定になりやすい。

 地表の暖かい空気は大量の水蒸気を含んでいるので、上昇気流が急発生すると濃密な積乱雲を生みだす。その結果、激しい雨が降り、落雷が鳴り響く。これがゲリラ豪雨の仕組みだ。近年、気温が高くなっているので、これが各地で盛んに起きているのだ。

■岐阜県多治見市が毎年猛暑になる理由

 一方、日本海付近の海水温が上昇すると、同じ低気圧でも雨雲が発達して雨量が多くなり、雨の降り方がますます激しくなる可能性がある。ここ数年、豪雨被害や大型台風が頻発しているのも、海水温が高いことが一因だ。

 また、一般的に海沿いの地域では、夏は涼しい海風が吹いて気温の上昇が抑えられる。しかし例えば真夏の海水温が30℃に達すると、海風が吹いても涼しくならない。東京や大阪など、海沿いの大都市で記録的猛暑が観測されているのは、こうした影響もあるようだ。

 さらに、埼玉県熊谷市や岐阜県多治見市が毎年のように猛暑になる原因は、近郊の大都市にある。大都市では人間の生産活動による発熱と、コンクリートジャングルによる蓄熱の影響で、気温が高くなる。この熱い空気は海風によって都市部から近くの内陸部、つまり東京から埼玉や群馬へ、名古屋から岐阜へ運ばれる。今年も多治見市で40度超えを記録したが、その一部は名古屋が生みだした熱が加わっていたかもしれない。

■トランプ大統領よ、反省してくれ

 そもそも気温と海水温の上昇が起きている大きな原因として、地球温暖化が挙げられる。これは人間の生産活動を経て排出する二酸化炭素が要因だ。19世紀半ばと比べて、空気中に含まれる二酸化炭素が40%も増加したというので、異常気象の増加はある種必然かもしれない。

 異常気象を抑えるには、二酸化炭素の排出を減らすことが絶対条件なのだが、やっかいな人物がいる。トランプ大統領だ。

 国別で見て、二酸化炭素の排出量が多いのがアメリカと中国。それを受けて、二酸化炭素の排出を減らす世界的な取り決めを定める会議が開かれ、中国が推進を表明した(本気かどうかは分からない)一方、トランプ氏は自国の経済を優先して取り決めから離脱してしまった。

 このように、地球温暖化は環境問題と考えられがちだが、実は政治経済問題の側面が強い。そしてトランプ氏のせいで、日本の異常気象が減る見込みは薄くなってしまった。

■春と秋は似ているようで大きく違う

 ここまで、本書より異常気象が増えた原因をご紹介した。しかし、本書は2017年に刊行されたものだ。読者にもっと天気に関心をもってほしいという森さんの願いから執筆された本であり、異常気象が増えた原因に特化しているわけではない。天気に関する基本的な知識、天気予報がもっと分かる天気図の見方、日本人が知らない日本の気候など、予報士だからこそ解説できる気象全般の知識がつめこまれている。

 個人的な感想を述べると、読んでいて非常に興味深かった。というより、天気にかんする科学の雑学をたくさん得られたので楽しかった。

 この記事の最後として、個人的に面白かった「春と秋の違い」をご紹介して終わりにしたい。

 日本には大きな季節が2つある。乾季(=冬)と雨季(=夏)だ。そしてこの季節の移り変わり(=つまり大きな気団の移り変わり)が、春と秋なのだ。

 両者は似ていると思われがちだが、実は違う。春がもたらす低気圧は南から吹き込む空気をエネルギー源に発達するので、暖かい南風(=春風)が強く吹いて降水量が多くなる。一方、秋がもたらす低気圧は大陸からの乾燥した冷たい空気がエネルギー源なので降水量は多くならずに晴れる。しかし寒冷前線が通過する際は、雷雨や突風のおそれが高くなり、通過後は冷気が入って寒くなる。

 簡単に表現すると、春はひと雨ごとに暖かくなり、夏に近づいていく。一方、秋は雨が降るたびに寒くなって冬を迎える。春と秋は、夏と冬の間に訪れる、季節のグラデーションなのかもしれない。

 異常気象は、今すぐ対策しなければならない大問題だ。その対策の1つとして、現場で起きる異変に対応する知識を私たちの頭に入れておく必要がある。その点で本書はぴったりだ。天気って面白い。気象って興味深い。そんな入り口から知識を取り入れて、また起きるであろう異常気象に備えたい。

文=いのうえゆきひろ