不登校やひきこもりは好きなだけやればいい? リリー・フランキー、西原理恵子…20人が語った『学校に行きたくない君へ』
公開日:2018/8/30
あなたは「不登校新聞」をご存じだろうか? 不登校の体験談や進路情報、フリースクール情報など、不登校当事者に必要な情報を集めて月2回発行されている専門のタブロイド紙だ。このほど同紙で人気のインタビューコーナーから20名を厳選してまとめた『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)として出版された。
登場するのは樹木希林さん、リリー・フランキーさんなど俳優から、荒木飛呂彦さん、萩尾望都さん、西原理恵子さんといった漫画家、作家の辻村深月さん、声優の高山みなみさん、棋士の羽生善治さんや脳科学者の茂木健一郎さんなど豪華すぎる20名。これらの方々に取材をしたのは、不登校やひきこもりの当事者・経験者である「子ども若者編集部」のメンバー。彼らのそうしたまっすぐで強い思いに感応したからだろうか、取材に応じたみなさんは誰も一般的な「いい話」で終わらせたりはしない。自身の弱さや痛み、生きづらさを正直に打ち明け、そうした自分といかに「折り合い」をつけてきたのか、自らの言葉で語ってくれているのだ。
たとえば大学卒業後の5年間、ほぼ無職のひきこもり生活を続けていたというリリー・フランキーさんは、「(不登校やひきこもりは)好きなだけやればいい。自尊心が強いなら、美意識を持ちながらやっていけば、自然に外に出ることも働くこともなんでもなくなる」と語った上で、「迷う時間も糧になる」とメッセージを送る。
あるいは西原理恵子さんは、なぜ自分がこんな状況になったのか原因究明しても「無駄」ときっぱり。「八方ふさがりなら働くしかない」と、自分の力で生きるために懸命に働いてきた経験を振り返る。「大人はいいよ~。私は子ども時代になんて絶対に戻りたくない」の一言は、「未来を見よう!」という清々しいエールにも思える。
つい私たちは「成功者」をみると、最初からすごい人だろうとか、すごく強い人なのだろうとか、「自分とは違う人なのだ」と勝手に思い込みがちだ。だが、精神論やタフネスではなく、こうして等身大の言葉で真摯に語られる人生論からみえてくるのは、誰もが悩みながら、弱い自分を抱えながら、そしてそんな自分を「認めて」生きてきたから「現在」があるということ。不登校やひきこもりに悩む人はもちろん、明日、会社に行くのが「ちょっとツラいんだ」という人にも、きっとしみることだろう。
文=荒井理恵
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