このマンガ、『ムラサキ』の魅力は言葉にできない!

マンガ

更新日:2018/9/12

『ムラサキ』(1)(厳男子/LINE Digital Frontier)

 椎名林檎は「どうして歴史の上に言葉が生まれたのか」と歌い、ICEの国岡真由美は「人は言葉の代わりに 伝える術を失くした」と歌った。小田和正なんてもの凄い。「嬉しくて嬉しくて 言葉にできない」の後、サビで「LaLaLa LaLaLa」。マジで言葉にしていない。

 つい音楽のたとえ話を続けてしまったが、ことは音楽に限らない。言葉の無力さを痛感し、「言葉の代わり」となるモノを表現しようというトライアルは、古今東西さまざまなジャンルのクリエーター達が挑戦してきた。

 電子コミックサービス「LINEマンガ」にて連載中で、9月1日にコミックス1巻が刊行される『ムラサキ』(厳男子/LINE Digital Frontier)は、その最新のトライアルだ。題材はズバリ、創作ダンス。

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(C) Kibidango / LINE

 ぽっちゃり眼鏡の一条紫(いちじょうむらさき)は、創作ダンスに情熱を燃やしている女子高生。ひょんなことから学園のアイドル・菫ソラの背後で、彼女に気付かれぬよう全身全霊のダンスを捧げる存在に気付く。その男(ストーカー)の名前は、翡翠翔之助。

 幼馴染の翔之助とソラは、成長した今でこそ「言葉」での意思疎通を図っているが、幼い頃は言葉など要らなかった。ダンスで、体で、2人はコミュニケーションすることができていた。「昔 言葉が言葉になる前 そこは僕らだけの世界だった」。美しいモノローグだ。やってることはストーカーだが。

 ヤバいやつだと思いながらも、紫は翔之助のダンスに魅せられてしまう。「わたしダンス部創るわ!! だから入部してくれませんか!!」。しかし、拒否。諦め切れない紫は、翔之助を創作ダンス部に入部させるため、25キロの減量を誓う。……ん?

(C) Kibidango / LINE

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 第1話の時点で明らかとなるこのマンガの魅力は、絶妙に歪んだ論理展開がもたらす脱臼感だ。と同時に、「こういうシチュエーションで、このイラストが出てきたら、ヒロインにどんな台詞を言わせる?」的な大喜利があれば、きっちり座布団をかっさらっていく笑いの数々。しかも、絵は超絶うまい。これはギャグマンガなのか!?

 しかし、その後は青春部活モノへと早変わり。ソラを挟んだ紫と翔之助の、特殊な三角関係が展開していく。そして第1巻ラストで、作画が大爆発を起こす。見開きをふんだんに使い、言葉を用いない、言葉にならないダンスを、絵で表現することに成功している。

 ……でも第1巻のラストまで読み進めた印象は、やっぱりギャグ。このマンガの一番の魅力はどこなのか、どのジャンルに属するのかは、なんとも言えない。言葉にできない! だから、とにかく読んでいただきたいんです。

文=吉田大助