利己的な人間こそ、他人を幸せにできる。許される「わがまま」とは?

ビジネス

2018/9/23

自分に負けない生きかた みるみる心が強くなるクスリ
『自分に負けない生きかた みるみる心が強くなるクスリ』(デヴィッド・シーベリー:著、加藤諦三:訳/三笠書房)

 両親からたっぷり愛されて、何不自由なく育った青年が、親の期待通りに家業を継ぐことを拒み、大学も途中で辞め、自分の生きたい道を探している――この男の態度は、はたして“わがまま”だろうか?

「わがままを言わないこと」「自分を抑えること」は、しばしば美徳とされてきた。しかし、これは時によって深刻なストレスやトラブルの一因にもなる。

『自分に負けない生きかた みるみる心が強くなるクスリ』(デヴィッド・シーベリー:著、加藤諦三:訳/三笠書房)は、冒頭に挙げたような問題意識に対して、「いくら他人のために自分を犠牲にしても、人生は好転しない」と説いている。

■許される「利己主義」とは?

 本書の英文原題は「The Art of Selfishness(利己主義の方法)」。いささか刺激的なタイトルだ。しかし、訳者・加藤諦三氏(心理学者・早稲田大学名誉教授)のまえがきによると、一口に利己主義といっても、「自分がない利己主義」と「自分のある利己主義」の2つがあるのだという。

「自分がない利己主義者」は、判断基準のない、ただの自己中心的な人だ。なんでもかんでも手に入れよう、自分だけ得しよう、とにかく自分にだけは被害がないように、といったスタンスは、そのときの利益を優先しているだけで、長い目で見れば割に合わない生き方だといえる。

「自分のある利己主義者」は、自分がどの立ち位置にいるかを知っており、自分の意思通りに人と接することができる「強い人」だ。「これはおかしい」と感じたときに、相手に「これはおかしい」と、臆せずに面と向かって言うことができる。本書が推奨する「利己主義」とは、もちろん後者のような生き方だ。

■成功のカギを握るポイント

仕事を探しているときには、こう自問しましょう。
「わたしは、自分自身の生き方ごと雇われることを望んでいるのだろうか。現在の状態で、自分らしい生き方と仕事の両方を望めるのだろうか」
これが、仕事への適応性を知るためのまず第一の質問なのです。(本書82頁)

 強く生きていくために安心感を確保したいと思ったら、自分の信念を保ち、心の葛藤を避けながら、経済的な保証も求めなければならない。たとえば、自分がいかに進歩的な考えを持っていても、自分と世間のズレが目立たない仕事を選べば、社会とぶつかることはないだろう。本書によると、仕事の問題の多くを解決する秘訣は、次の4点だ。

(1)自分の生きている社会、時代に適応すること
(2)妥協をはねつけること。つまり、自分の内にあるものの見方や信念を維持し、かつそれらを強化するためにいつも努力すること
(3)自分の仕事が何であれ、自分の持っているものすべてをそれに注ぎこみ、自分の価値を高めて、自分の働きぶりを世の中が“必要とするよう”にすること
(4)趣味、あるいは稼ぎとは関係のない「はけ口」を持つこと。それは自分の中に眠っている創造力を満足させるためばかりでなく、そうした力を発揮できる、よりよい状況を生むようにするためである (本書84頁)

 多くの人は、このようなポイントでバランスを保てないことから、失敗するのだという。そして最も失敗を招きやすいのは、順応が中途半端だったり行きすぎたりするときだ。社会のしきたりを考えると順応せざるをえないのは確かだが、妥協するだけの生き方もまた、健全で幸福な人生だとは言い難いのだ。(4)に挙げられた、仕事以外のストレス発散のはけ口を持つことについては、多くの人がその効果を実感しているのではないだろうか。きちんと仕事と向き合うためにも、創造性を満足させる趣味を持っていたいものだ。

「とりあえず幸せになりたい」「幸せになれたらいいな」とただ闇雲に期待している状態は、良いことだとは限らない。なぜならば、そこには自分の意思がないからだ。本当に自分を理解し、したたかな信念を持つ“利己主義”的な生き方は、真の意味で「自分を大切にしている」といえるだろう。他人を大切に、幸せにできる人になるためには、まず自分たるものをしっかりと持ち、満たされていることが必要なのではないだろうか。

文=K(稲)