38歳で乳がん発覚! “乳房再建手術”で起きた心の変化とは?

健康

2018/10/17

『身体のいいなり』(内澤旬子/朝日新聞出版)

 さくらももこさんが乳がんで亡くなったのは記憶に新しい。実際に日本では乳がん罹患者は増加傾向で、若い世代でも増えているというデータがある。乳がんの患者数の増加の理由は、食生活の欧米化が原因ともいわれているが、これといって原因がわかっておらず、誰にとっても身近な病気である。

 ルポライターである内澤旬子氏の書いた『身体のいいなり』(朝日新聞出版)は、取材をしているかのように病とそれによって移り変わる自分を冷静に見つめている。悲劇のヒロインになってもいなければ、己の不幸を嘆いてもいない。自らの病に対して平坦ともいえるほどに淡々とした視点で語ってくれる。手術で何度も切り刻まれる経験をした著者の、人間とは肉の塊にすぎないという哲学が、「身体のいいなり」というタイトルの所以である。

 アレルギー体質で腰痛持ち、他にも体に問題を抱えており健康とは言い難かった著者が、38歳で乳がんに罹患したことでヨガに目覚める。乳がんという病を患いながらも、テレビ番組のドキュメンタリー出演、離婚、マンション購入など、劇的に人生が変わっていく。

 がんに限らず病気になった際には、標準治療から代替療法まで様々な治療方法があり、病院や治療方針を自ら選ばなくてはならない。保険診療しかしないと最初から決め、自分の病を静かに受け入れていく著者のその姿は、一種の悟りのようなものまで感じるほどだ。

 乳房という女性特有の器官にまつわる病だからというわけではないが、著書自身が避けていたメイクアップやお洒落に、自然に立ち向かっていくところも不思議な流れである。病になっていたとしてもそうでなくても、女はどこまでも女ということだろうか。

 著者の心の変化だけでなく、乳がんになった場合、どういった手術をしてなんの薬を使うのか、手術後の経過など治療に関することが具体的に記されているので、乳がん治療の参考書にもなる。なにより、著者の病への心の振れ幅が少なく、「乳房の摘出施術は、盲腸よりも軽いのではないか」と冷静なので、これから治療に立ち向かう際の心の支えになってくれるのは間違いない。

 病や天災、身近な人との別れなど、何が起こるかわからないのが人生である。そんな何か自分では支えきれない出来事が起きた時こそ、著者のように淡々と「身体のいいなり」になってみたいものである。

文=ナガソクミコ