頻尿や尿漏れに悩む全ての女性へ… その“わかってもらえない悩み”の原因と治療法

健康・美容

公開日:2018/10/22

『女性泌尿器科へようこそ マンガでわかる「頻尿」「骨盤臓器脱」』(奥井識仁/ハート出版)

 世の中、頻尿に悩んでいる女性は多い。仕事中なのに何度もトイレに行きたくなったり、夜中に何度もトイレに目が覚めてしまったり。そんなストレスを抱えたまま、「今すぐ命に関わるわけではないし…」となんとなく放置している人もいるのではないだろうか。

『女性泌尿器科へようこそ マンガでわかる「頻尿」「骨盤臓器脱」』(奥井識仁/ハート出版)は、そんな女性たちの悩みを、テレビや新聞で活躍するドクターがサポートする1冊だ。「女性泌尿器科」とは、泌尿器科と婦人科の境界領域である。本書では、「頻尿」と「骨盤臓器脱(膀胱や子宮、直腸などが膣から出てくる病気)」の原因や治療法について、マンガを交えわかりやすく解説してある。本稿では、その中から「頻尿」の原因と治療について一部紹介したい。

 本書によると頻尿の原因には年齢別の特徴があるという。20〜30代の頻尿は性交渉による細菌感染が主な原因なのだそうだ。また、まれに子宮内膜症などの痛みが原因のこともある。40〜50代になると、女性ホルモンの低下によって前述の骨盤臓器脱が出始め、それが原因の頻尿が増えてくるという。60代からは骨盤臓器脱のほかに、尿道や膣などが萎縮して狭窄して、それが原因の頻尿が増える。そしてさらに高齢になると、足の動きが悪くトイレに間に合わないなどの失禁が目立ってくる。

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 頻尿の治療には、さまざまな分野からのアプローチが存在する。本書からそれぞれのアプローチ法の一部を紹介しよう。

・泌尿器科での治療
 内服薬は原因によって使用する薬が異なる。過活動膀胱(尿意を感じたら我慢できない)や萎縮膀胱(尿が出にくくなったり漏れやすくなる)には抗コリン薬を、細菌感染を起こしている場合は抗菌薬を用いるそうだ。また女性ホルモンを補充する場合もある。原因、症状に応じて、薬を組み合わせて使用することもできるのだ。

・東洋医学科での治療
 女性の漢方を考えるときに重要なのは「瘀血(おけつ)」だという。瘀血とは、血の流れが悪くなり、たまってしまうことだ。冷えを伴う症状の人には、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」などを用い、冷えを伴わない症状の人には「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」などを用いるそうだ。

・婦人科での治療
 閉経前後の10年間ほどの更年期は、女性ホルモンのエストロゲンが急激に低下するという。その影響で膣や尿道の粘膜の変化が出てくる。その対策として、エストロゲンを補う薬物療法「ホルモン補充療法」がある。現在、エストロゲン剤には、大きく分けて飲み薬と貼り薬の2種類があるそうだ。

・その他の治療
 内科ではメタボリックシンドロームの改善がすすめられることもある。アンチエイジングの分野では抗酸化作用を持つ栄養素や、免疫を刺激する栄養素を摂ることが対策として挙げられている。看護科ではカテーテルや、夜間のみのオムツの使用、排尿時の体位の工夫(前かがみになる)がすすめられている。

「このような複雑な女性泌尿器科の悩みは、“わかってもらえない悩み”といわれます」と著者。医師にはいくつもの視点が要求され、患者自身も複雑すぎて医師に伝えることが難しいという。本書は、そのような難しい話を噛み砕いてマンガにしてあり、女性の泌尿器の悩みが分かりやすい仕組みになっている。自分だけではなくて、周囲の悩んでいる女性の症状を理解するためにも役に立つ1冊なので、“わかってもらえない悩み”の治療のきっかけとして読んでみてはいかがだろうか。

文=ジョセート