飾りじゃないのよ“メタファー”は。説得力あるスピーチを可能にするテクニック

ビジネス

2018/11/8

『よくわかるメタファー』(瀬戸賢一/筑摩書房)

「人生は船旅である」――この表現は、ときに楽しくときには厳しい人生の道のりを、凪のなかゆったりと進むこともあれば荒波にもまれることもある船旅になぞらえた文だ。「~のような」などの表現を使わない“たとえ”のことをメタファー(隠喩、暗喩)というが、この表現がまさにそれである。

 メタファーとか隠喩とか暗喩とかいうと小難しく聞こえるが、わたしたちはいたるところで無意識にこの表現技法を用いており、日常生活とは切っても切れないものである。そんな生活のいたるところにあふれる表現技法のしくみを詳説した『よくわかるメタファー』(瀬戸賢一/筑摩書房)を、本稿ではみなさんに紹介したい。

■メタファーは“飾り”ではなく、言葉の“根っこ”

「人生を船旅にたとえるなんて、そんなオシャレな言葉遊び、わたしにはできない」と感じる人もいるかもしれない。しかし、メタファーはオシャレな言葉遊びでも飾りでもない。“根っこ”が共通する言葉を使って、あることを説明するれっきとした表現技法だ。

 たとえば、「あいつは我がチームの期待の星だ」とか「なんだか胸騒ぎがする」のように、普段の生活でよく使う言い回しも立派なメタファーだ。野球部のエースの“あいつ”は決して“星”などではなく人間であり、いつもこの時間に帰宅する娘が連絡もなしに帰宅してこないときに“胸”のなかで酒盛りが行われているわけでもない。けれども、言葉の上では「あいつは星」であり、「胸は騒ぐもの」なのである。

 こうした比喩は、たとえられるものとたとえるものの“根っこ”の部分が共通しているのだ。「あいつは期待の星だ」というとき、チームの中で目立つ存在の“あいつ”を夜空に輝いて目立っている“星”になぞらえているのである。ここで“あいつ”と“星”に共通しているのは目立っているということだ。

■部分に分けていくと、共通するものが見えてくる

 メタファーを使おうとするときの初歩的なテクニックとして、「部分に分けて考える」という手法がある。いったいどういうことなのか、“会社組織”を例に見てみよう。

 会社のような組織は、人事部や経理部、営業部のようにいくつかの部署に分けることができる。そして各部署には長がおり、その下にたくさんの部下がいる。“組織”は“身体”になぞらえてトップを「頭脳」や「心臓」、「中枢」とみなすことができるし、長の重要な補佐役を頭に対する「右腕」と呼ぶこともできる。頭脳や心臓がなくなってしまえば身体は成り立たないのと同様に、「頭脳」、「心臓」がなければ当然会社のような組織も崩壊してしまうだろう。

 このようにあるものを部分に分けてとらえることで、共通の根っこの部分がおのずと現れてくる。そうしたら、あとは「ような」という言葉は用いずにつなげてあげるだけで、あっというまにメタファーの完成である。たとえば、「彼は本社の心臓部で働いている」のように。

 本書を読み、メタファーのしくみを理解すれば、ツイッターなどのSNSで、あるいは普段の友だちや同僚との会話でも、説得力があり、かつ美しい言語表現ができるようになるだろう。

文=ムラカミ ハヤト