いらだちと諦めの先にあるのは笑顔? 介護家族がたどる「4つの心理的ステップ」とは

暮らし

2018/11/12

『認知症と笑顔で暮らす本』(内藤孝宏・西村有樹・浅岡雅子・福地誠/洋泉社)

 あるブラウザで「認知症 介護」というキーワードを打つと、検索候補にこんなワードが並ぶ。

・認知症 介護 ストレス
・認知症 介護 疲れた

 違うブラウザで同様のキーワードを打つと、こんな検索候補が並ぶ。

・認知症 介護 限界
・認知症 介護 地獄

 様々なマスメディアが認知症を患った家族の介護の過酷さを伝えているが、いざその当事者になると想像以上の負担が待っているようだ。その結果が、苦しむ介護者たちの検索結果に表れている。

 超高齢社会を迎える日本は、65歳以上の4人に1人が認知症の時代に突入する。そこで『認知症と笑顔で暮らす本』(内藤孝宏・西村有樹・浅岡雅子・福地誠/洋泉社)より、年老いた肉親と最後まで“笑顔”で暮らすためのヒントをのぞいてみたい。

■すべての介護家族がたどる“4つの心理的ステップ”

 認知症と暮らす家庭も様々だ。いつも暗い顔で苦痛そうに介護する家。年老いた両親を慣れた手つきで世話する家。笑顔あふれる明るい家。それぞれ環境や慣れなどの違いはあるだろうが、本書によるとどの家庭も4つに分類できるという。すべての介護家族がたどる“4つの心理的ステップ”だ。

【第1ステップ とまどい・否定】

 これは家族が認知症と判明したときの初期段階だ。当人の不可解な言動にとまどい、認知症のはずがないと否定しようとする。しかし日に日に変わるその姿を見てどうしていいか分からず、場合によっては、他の肉親に悩みを相談できずに孤立無援状態に陥ることも。

【第2ステップ 混乱・怒り・拒絶】

 認知症と接する正しい知識を得られないまま時間が過ぎると、やがて「混乱・怒り・拒絶」に変わる。どう対応していいか分からず混乱し怒ってしまうのだ。そのうち「徘徊」や夜中に大声で騒ぐ「夜間不眠」などが始まることもあるので、肉体的・精神的に疲弊するもっとも辛い時期。まれに介護家族の虐待・殺人という悲惨なニュースが流れるが、その多くがこの第2ステップを乗り越えられなかったのかもしれない。

 本書ではこの辛い時期を乗り越える4つのポイントを解説している。

1 認知症に対する正しい知識を持つこと
2 様々な専門職と接すること
3 介護サービスを割り切って使うこと
4 認知症介護について気軽に話せる仲間を作ること

 詳しくは本書を読んでほしい。

【第3ステップ 割り切り、またはあきらめ】

 第2ステップを越えると、悟りの境地に至る。怒ることを損と思うようになり、割り切って接することができるのだ。

 しかし悲しいことに、認知症が進行することである症状に慣れたのも束の間、別の症状を発症して困惑させられる、イタチごっこが起きる。これに負けて「第2ステップ」に逆戻りしがちだそうだ。これが介護の辛いところ。多くの場合が「第2ステップ」と「第3ステップを」交互に繰り返しながら、最後のステップに進む。

【第4ステップ 受容】

 病気への理解が深まり、認知症の人に残された良いところに目が向くようになる。あるがまま家族の一員として受け入れられるのだ。どの介護家族も苦しいステップを踏んで、ようやく第4ステップへたどりつく。

 どれも必ず通る苦しい道のりだが、認知症を理解し適切な対策を立てるだけで、比較的楽に乗り越えられるかもしれない。疲れやイライラがたまるだろうが、まずは“介護する側”から歩む寄ることが大切だ。

 この他にも本書は、認知症に正しく対処するための10のケーススタディー、“遠距離介護”という選択、認知症を理解するための「9大法則・1原則」、介護離職経験者が送る3つのアドバイスなど、介護に頭を抱える人に希望を与えるような内容をいくつも紹介している。

 介護をする上で大切なのは、認知症を知ることだ。野球を知らない人が「プロ野球を目指します!」と言えば笑うだろう。それと一緒だ。介護をするならば、介護する相手のことを理解しなくてはいけない。

 最愛の家族と毎日笑顔で暮らすためには、日々変化する彼らを受け止めて、最後まで根気強くそばにいてあげることだ。

文=いのうえゆきひろ