警備員と警官ってどう違うの? 「警備ビジネス」が抱える大問題とは?

社会

2018/11/18

『警備ビジネスで読み解く日本』(田中智仁/光文社)

 皆さんは「警備員」にどんな印象をお持ちだろうか? 筆者には、「スゴイ。頼りになる」と、「おいおい、大丈夫?」という両方が混在している。

 前者を感じたのは、その昔、勤務先マンションの一室にあった「警備会社への通報ボタン」をついつい間違えて押してしまった時だ。素早く警備員が駆け付けてくれただけでなく、すぐさま連携する所轄警察からも警官と刑事さんにご足労いただき、一転、自分が不審者ではないことを説明する事態となった。

 一方で後者は、道路工事現場での交通誘導警備員だった。信号とは異なる指示を出され、大いに戸惑ったのだ。

 では、まずここでクイズに答えていただこう。

問1:筆者のように、交通法規と交通誘導警備員の指示が違った場合、どちらに従うべきなのか?

問2:信号が青なのに交通誘導警備員の指示が「止まれ」の場合、従う義務はあるのか?

 その答えを『警備ビジネスで読み解く日本』(田中智仁/光文社)に求めてみよう。著者によれば、問1の答えは「交通法規に従わなければいけない」で、問2の答えは「義務はない」となる。その理由はいずれも、警備員は警官ではなく、あくまで民間人だからだ。

 

●「日本には何社くらい警備会社があるのか」その驚きの答えとは?

 さて、社会学者による本書は、日本における警備会社の歴史と警備員の仕事、労働環境、人材状況などを紐解きながら、日本の抱える問題点を浮き彫りにするという内容だ。

 ではここで、本書からもう2つクイズを。この答えには筆者も驚かされたので、ぜひ挑戦してみてほしい。

問3:日本には何社くらい警備会社があるか?
 (1)約100社 (2)約1000社 (3)約5000社 (4)約9000社

問4:日本には何人くらいの警備員がいるか?
(1)約1万人 (2)約5万人 (3)約26万人 (4)約54万人 

 その答えは少し後でお伝えするとして、「なぜ警備と日本の問題が関係するの?」と疑問視する人は多いと思われるので、その点から触れていこう。

 本書によれば、警備需要の高まりは、経済成長と足並みをそろえてきたという。1964年の東京オリンピック、そして70年の大阪万博。この2つのビッグイベントは、日本の高度成長の象徴であると同時に、警備業界が大きく躍進する契機ともなった。つまり警備業は、経済成長の「写し鏡」と見ることができるという。

 そして日本は今、超高齢化社会という大きな課題を抱えていて、それはそのまま警備員人材にも当てはまるそうだ。

 ここで先ほどのクイズの答えを明かすと、問3、問4共に正解は(4)だ。日本にはなんと9000社もの警備会社があり、警備員人口は54万人である。

●「警備員」を深堀りしていくと、そこには「日本社会の縮図」が見えてくる

 ただし問題がある。本書によれば、この約54万人のうち42.2%を占めるのが60歳以上の人材だ。そして今後も、高齢者人材のシェアはさらに高まると予想されるという。

 こうした警備員人材の高齢化は同時に、「いつまでも働かなければ生活できない」という、年金事情を含む高齢者の貧困問題の表れでもあるという。このように「警備員」を深堀りしていくと、そこには「日本社会の縮図」が見えてくるというのが著者の見解だ。

 一方で、警備業界にも若い人材からの注目が集まる材料はある。それが2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に躍進すると考えられている、AI・ロボット・ドローンや、その他の先端技術を使った警備のハイテク&サイバー化だ。

 本書によれば、「会場や選手村をフェンスで囲って防犯カメラやセンサーを設置するほか、顔認証システムによる出入り管理や、サイバー攻撃への対策として警備と情報システムを一体化するなど、最新技術を駆使した警備体制が立案されています」という。

 もちろん、今後、AIやロボット技術が多くの警備業務を奪う可能性もあるが、テクノロジーの進化は若年層が警備業界に関心を持つきっかけのひとつにもなるだろう。

 本書では他にも、約9000社ある警備業界の業界分析、会社によって大きく異なる警備人材の質と給与格差の問題、警備員の業務区分や人材の高齢化に伴う諸問題など、まさに「日本社会の写し鏡」としての警備ビジネスと警備員の在り方を示し、さまざまな問題点を提示している。

 現在の日本が抱える問題を、警備という切り口から考えてみたいという方、またこれから就活を行う学生さんなどにも、ぜひ、本書をおすすめしたい。自分が持っていたイメージとはまったく違った、警備会社・警備員の姿、そして課題と魅力が見えてくるだろう。

文=町田光