誰かに“手紙”を出したくなる! 町の郵便屋さんがあなたに届けるハートフルな物語

文芸・カルチャー

2018/11/24

『みつばの郵便屋さん 奇蹟がめぐる町』(小野寺史宜/ポプラ社)

 最近、4歳になる甥が、“おてがみ”にハマっているらしい。彼に旅先からハガキを出したところ、届いた夜はよろこんで、ベッドまで持っていったそうだ。

 たった一枚のハガキでも、誰かにとっては、それだけ思い入れのあるものになりうる。そんな一通を届けるのが、春夏秋冬、雨の日も晴れの日もバイクで町をゆく、郵便配達員の仕事だ。

『みつばの郵便屋さん 奇蹟がめぐる町』(小野寺史宜/ポプラ社)の主人公・平本秋宏は、みつば郵便局に来て6年目の郵便配達員。新年度のある日、秋宏は、転入を知らせる転居届に目を留める。そこに書いてあったのは、秋宏の初恋の人の名前だった。

 とはいえ、転居届だけでは、彼女の年齢も顔立ちもわからない。同姓同名の別人だという可能性もある。そもそも、たとえ彼女が初恋の相手だとしても、秋宏と彼女は配達人と受取人の関係でしかないのだ。その距離を崩してはいけないと、秋宏は自分に言い聞かせるのだが──。

 彼女が越してきたみつばの町には、たくさんの人が住んでいる。おばあちゃんの遺した土地で、トレーラー生活を送るトレーダー。秋宏に、地域の移り変わりを語ってくれるクリーニング屋さん。遠方に住む恩師と、50年ものあいだ年賀状のやりとりを続ける女性。

 みつばの町は、個性が際立つタイプの人も、取り立てて目立つところのない人も、泰然として受け入れる。秋宏は、そんな町の住人たちに封書やハガキを届けつづける。

 秋宏が町の人たちを思い浮かべるとき、まず出てくるのは漢字のフルネームだ。いかにも郵便配達員らしいその気質に、読み手は思わず微笑んでしまう。わたしたちが彼をさらに好きになる場面は、挙げていくときりがない。が、とくに印象的なのは、地元の中学校の職場体験学習で、みつば局がある女子を受け入れたときのこと。見た目は西洋人、着ているものはみつば南中のジャージという出で立ちの彼女は、内に意外なものを秘めていた。秋宏は、彼女の印象をこう述べる。

みつば南団地の配達原簿に名前があるから、知ってはいた。でも名前以外、何も知ってはいなかった。外見からも名前からも、判断できることは一つもない。

 ごくふつうに見える人でも、知るほどにドラマがある。穏やかに見える町だって、いつのまにかめぐる季節のように、少しずつ変化している。恋に対する考え方すら、当事者の年齢や時代によってさまざまだ。それに気づくことができるのは、日々実際に町を走り、そこに住む人々の想いに触れる、郵便屋さんだからこそ。

 人気シリーズの第5弾となる本作。平凡だと思っていた自分の人生も、あらためて見直すと、心あたたまるストーリーになっている──この本は、そんな事実を知ってほしいという、著者からあなたへの“一通”なのかもしれない。

文=三田ゆき