33歳OLと14歳中学生。二人の関係についに変化が…!? ますます目が離せない『私の少年』5巻

マンガ

更新日:2018/12/3

『私の少年』(高野ひと深/講談社)

 愛されることで満たされる心があれば、愛することで癒されていく傷もあるのだと『私の少年』(高野ひと深/講談社)の最新5巻を読んで思った。相手が誰であろうと、自分に愛情を向けてくれる人、自分の愛情をためらいなく受け止めてくれる人がそばにいてくれることは、強さになる。それがひしひしと伝わってくるがゆえに、本作は切ない。

 累計110万部を突破した同作は、33歳のOL・聡子と14歳の少年・真修の交流を描いた物語だ。最初は、母親を亡くしネグレクトされている気配のある真修を、聡子が放っておけず面倒を見ていただけだった。ところが、外見だけでなく心根も美しい真修とともに過ごす時間は、鬱屈した日々を過ごす聡子にとっても癒しとなっていく。だがその深まっていく関係が、しだいに大きな“問題”へと発展していく。

 なぜ、二人は一緒にいられないのだろう。いかがわしいことなんて、何もしていない。むしろ真修は、聡子によって救われた。変質者の手から逃れ、荒んだ生活から抜け出せたのは、聡子のおかげだ。それなのにはたから見れば二人の関係は「大人が子供をかどわかしている」ようにしか見えない。血縁も社会的にも、まるで繋がりのない他人であるがゆえにその関係は不自然で、真修の父の逆鱗に触れてしまう。――その父親は、真修の窮状に何一つ気づいていなかったというのに。親というだけで権利を行使し、結果的に聡子は仙台支社へと飛ばされてしまう。

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 なんて、ずいぶんと父親を悪く書いたが、常識的に見れば当然のこと。これが男女逆だったら有無をいわさず、男性が犯罪者扱いされかねない。どんな善意がそこにあっても、踏み越えてはならないラインがある。聡子も、そして読者もそれがわかっているからこそもどかしく、読んでいてやるせないのだ。そして「どうして一緒にいちゃいけないの」と、まっすぐに悲痛な叫びをあげる真修にも。

 一度は引き離された二人は偶然にも再会を果たし、5巻で聡子はふたたび東京に戻ってくることとなった。近づいてはいけないとわかっていても、ぐいぐい距離をつめてくる真修を前に拒絶しきれず、慎重にその距離感を探り続ける。その一方、聡子の過去を知る妹のまゆから厳しい指摘をつきつけられる。

「お姉ちゃんは真修のお母さんになろうとしてるの?」「自分がお母さんからもらいたかったものをまんま真修くんに与えて 与えることで真修くんから同じものをもらって 埋めあいっこ?とかしてるんじゃないよね」

 決して自分のためだけじゃない。真修を守りたい、安らげる場所を与えてあげたいと思った彼女の気持ちは本物だ。守ると同時に、守られていた。それはごく自然な、というよりも理想的な人間関係のありかただ。それなのに、年齢差があるというだけで――真修が子供だというだけでたちゆかなくなってしまう。

 聡子への「すき」を自覚した真修。大人としての自分に縛られ、苦しむ聡子。まゆの介在と聡子の帰京によって、事態はどう動いていくのか……6巻の刊行が今から待ちきれない。

文=立花もも

(C)高野ひと深/講談社