『ポプテピピック』があんなにパロディできた理由——「逆説」ビジネスモデルとは

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更新日:2018/11/27

『ビジネスモデル2.0図鑑』(近藤哲朗/KADOKAWA)

 ビジネスモデルに「永遠に通用するモデル」は存在しない。株式会社そろそろ代表取締役の近藤哲朗氏は『ビジネスモデル2.0図鑑』(近藤哲朗/KADOKAWA)でそう語る。「今の時代、“ずっと続くビジネスを0からつくれる”という考えは幻想だ」——それは、どの業界にも通じることだろう。

 近藤氏は「ビジネス×図解の追求」をコンセプトに、大企業やNPO法人向けにビジネス図解のコンサルティングを行っている。本書は、100個もの実際のビジネスモデルを徹底的に「見える化」したものだ。

 ビジネスの世界において「昨日やっていたことが、まったく通用しない」「昨日良しとされていたことが、悪とされてしまう」という変化が最もわかりやすい形であらわれるのが「ビジネスモデル」だという。その中で生き残るために必要なのは「今の業界の定説を覆す」ことだ。その「逆説」も、時の流れとともにまた「定説」になっていくかもしれない。そこで、著者は本書を「定説」と「逆説」を見極める教科書として使ってほしいと語る。

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 本稿では、本書に掲載されている具体的なビジネスモデルを3つ紹介する。

・ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)

 株式会社ZOZOが開発した採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」。これまで、衣料品ECでは服の試着ができず、届くまでサイズ感がわからないというのが定説だった。それを「試着しなくてもサイズが合うかわかる」という逆説を作り上げたのがZOZOSUITだ。ボディースーツは無料(送料は200円)で配布して話題になった。自社通販サイトはそれまでプラットフォームに徹してきたが、体型データに合ったサイズの商品を提供するプライベートブランド「ZOZO」を発表した。

・ポプテピピック

 アニメファンのあいだで「クソアニメ」と呼ばれ熱狂的な人気を誇ったポプテピピック。この作品がビジネス上重要だったのは、単独出資方式で製作した点。アニメ界の定説である「製作委員会方式」では、複数の会社が出資して制作し事業のリスクを分散する。一方、ポプテピピックはキングレコードの単独制作にすることで、本来なら多くのリスクを伴う多数のパロディ作品を実現できた。

・ライザップ

 従来のトレーニングジムは「自己管理のもと理想の体をつくる場所」だった。ライザップは、1人のトレーナーが付きっきりで生活習慣からメンタル面までサポートし、マニュアルの提供、完全個室での指導などを行う。利用料は2カ月で約35万円と高額だが、目標が2カ月で達成されない場合は返金保証がある。完全予約制なのでスタッフの稼働の無駄がなく、マンションやビルの一室があれば完全個室の店舗が作りやすいので多店舗展開しやすい。粗利益は80%という高収益だ。

 いかがだろうか? ビジネスモデル図解のコンサルティングを請け負う著者のもとに最も多い依頼が「自分の会社のビジネスモデルを一度図解して、可視化してもらえないか」というものだという。「見える化」すると、自社のサービスの強みと弱みがよくわかるそうだ。本書の巻末には、ビジネスモデル図解を実際に作れるツールキットが紹介してある。自分のビジネスをしっかり把握し、課題と新たなチャンスを見つけるために本書が大いに役立つことだろう。

文=ジョセート