「トラウマ」が行動を動機づける? あの人気キャラクターの秘密もわかるかも

エンタメ

2018/12/4

『トラウマ類語辞典』(アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ/フィルムアート社)

 小説家、脚本家、マンガ家など「創作者の強い味方」として、じわじわ話題となっている「辞典」シリーズの第5弾『トラウマ類語辞典』(アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ/フィルムアート社)。

 本書は物語を創作するにおいて重要な「キャラクター作り」の一助となる、とても画期的な一冊だ。

 過去の傷(=トラウマ)は、キャラクターの行動を動機づけるものである。

過去の傷によって、重要なキャラクターはそれぞれ、どのような破滅に向かい、どのように人格が変化し、どのような先入観を抱き、そしてどのように行動や態度が変わっていくのか。本書を読んで考えてもらいたいのは、そういう事柄だ。

 しかしなぜトラウマが、フィクションの登場人物に必要なのか、疑問に思う方もいるかもしれない。本書はその理由から、丁寧に説明してくれている。

人は過去の産物だ。読者にとって信憑性や真実味のあるキャラクターを作り出したいのなら、キャラクターの背景的な過去の出来事も理解しておく必要がある。(中略)揺るぎない、説得力溢れるキャラクターを作り出すには、彼らが体験した痛みを理解することが先決になる。

 というわけで、キャラクターにはトラウマが必要らしい。言われてみれば、自分の好きな小説やマンガの登場人物で、(程度の差はあれど)一切の心の傷がないというキャラクターはいない気がする。

 本書は様々なトラウマを「検索できる」辞典なので、自らのキャラクターにもっと魅力を加えたいのなら、自分が構想している展開や、そのキャラに合いそうなトラウマを見つけ出すことができるのだ。

 紹介されているトラウマの種類は、大きく分けて7つ。

・犯罪被害のトラウマ
・障害や損傷によるトラウマ
・失敗や間違いによるトラウマ
・社会の不正や人生の苦難によるトラウマ
・誤った信頼と裏切りのトラウマ
・幼少期のトラウマ
・予期せぬ出来事によるトラウマ

 例えば「犯罪被害のトラウマ」の項目に、「殺人を目撃する」がある。

 書かれているのは、まず、これがどのような状況なのかの具体例。「道行く人が強盗に殺されるところを目撃する」「校内で起きた銃撃事件でクラスメートが死ぬ」etc.

 そして、この事例で損なわれる欲求。今回の場合は、「安全・安心」「帰属意識」「愛」である。キャラクターに生じる思い込みは、「事件を阻止するために、自分は何かできたはずだ」「人間は本質的に暴力的だ」等々。

 他には、キャラクターが抱く不安、行動基準の変化、この事例が形作るキャラクターの人格、トラウマを悪化させる引き金となる出来事、トラウマに向き合う/克服する場面の例が列挙されている。

 その他、「仲間外れにされる」「過保護な親のもとで育つ」「拷問」「死体と一緒に取り残される」等、想像しやすいトラウマから、かなり特殊な状況まで、ありとあらゆる心の傷を網羅し、その過去を持つキャラクターが何を不安に思い、どういう思考になり、何を以て克服するのか。その具体例が余すことなく書かれている。

 創作に行き詰まっている。技術を高めたい。それなら、本書は仕事机の脇に、常に置いておくべき一冊だ。

文=雨野裾