“性犯罪者の頭の中”とは? 「結婚しても性犯罪がやめられない…」元エリート外資系会社員の思考回路

社会

2018/12/12

『性犯罪者の頭の中』(鈴木伸元/幻冬舎)

 突然だが、みなさんは“性犯罪者”と聞くと、どのような人物像を思い描くだろうか。きっと、いわゆる「ロリコン」と呼ばれる「小児性愛者」や見た目からして変わっている人を想像する方も多いはず。しかし、実はそうではなく、真面目そうな見た目をし、社会人としての生活をごく普通に営んでいるような性犯罪者は少なくない。

『性犯罪者の頭の中』(鈴木伸元/幻冬舎)には、私たちが持ちやすい“性犯罪者”のイメージと、その実像とのギャップが描かれており、加害者の思考回路に迫っている。加害者の頭の中を知り、思考パターンや行動が理解できれば、卑劣な性犯罪から身を守ることもできるかもしれない。

 結婚をし、家庭も持っているようなごくごく普通の人たちが、性犯罪者という「裏の顔」を持つようになるには、どんな理由があったのだろうか。

■エリートサラリーマンが性犯罪者に

 さまざまな犯罪の中でも性犯罪は被害届けが提出されにくく、闇に葬られやすい。現に、平成24年の1年間に警察が認知した強姦は1240件、強制わいせつは7263件だと発表されていたが、これはあくまでも明るみになった事件のみの件数であり、未遂事件も含めれば、実際の被害は10倍近くにもなるといわれている。

 性犯罪は体だけでなく、心も傷つける犯罪だ。警察の事情聴取で詳しい行為内容を話さなければならないため、被害者は被害届けの提出を躊躇ってしまい、自分ひとりで言葉にできない苦痛と痛みを抱え込んでしまう。

 では、その一方で加害者側はどんな気持ちを抱えながら、性犯罪に手を染めているのだろう。鈴木氏は文通により、刑務所で服役中であるA受刑者に取材を試みた。真面目そうな外見の彼はとても性犯罪者には見えなかったが、10件以上もの性犯罪を行い、30年の懲役刑を受けている。

自分の体と頭脳をフルに活用して犯行を計画していく過程は、ゲームに通ずる感覚かもしれません。

ロールプレイングゲームにおいて情報収集をし、フラグを立てて、目的を攻略していく過程に似ているように思います。犯行がエスカレートしていくにつれて経験値が増え、自分が“レベルアップ”していく感覚がありました。

「ロールプレイングゲーム」という言葉を使いながら性犯罪を説明するA受刑者は犯行に及ぶ前には必ず、逃走ルートや被害者の身辺を入念に調査し、スリルを楽しむのではなく、「逮捕されない」という枠を設けながら、性犯罪を繰り返していったという。

 A受刑者はなぜ、そんな「裏の顔」を持つようになってしまったのか。そこには彼の「表の顔」が深く関係していた。

 関東地方にある中高一貫の有名私立高校を卒業後、大学へ入学したA受刑者は、外資系企業へ入社。しかし、職場での叱咤でプライドが粉々になり、精神状態が不安定に。激務だったこともあり、一時は「死んでしまいたい」と思うほどだったという。

 そんな彼が心の拠り所に選んだのが、インターネットの違法サイト。反社会的な好奇心を持った彼はサイトを閲覧するだけでなく、次第に行為を「模倣」し始め、朝から深夜まで仕事三昧な表の顔とは違う「もうひとりの自分」を作り上げていった。

 その後A受刑者は結婚をしても性犯罪が止められず、5年後に逮捕されたが、その時の心境を彼はこう振り返る。

大変なことをしてしまったという思いはもちろんありました。ただ一方で、これでようやく終わったという感覚も少しありました。自分ではどうにもならないところまで拡大していた“裏の顔”が遂に消えたのです。

 A受刑者の体験からもうかがえるように、性犯罪は「満たされない気持ち」や「死への願望」が引き金になっていることも少なくない。大阪大学で性犯罪の加害者研究を行っている藤岡淳子教授によれば、性犯罪は性的衝動や性的欲求ではなく、A受刑者のように犯行の成功率を考え、入念に計画されていることが多いのだという。そして、加害者は犯罪を繰り返すことでスキルアップしたような感覚になり、自力ではやめられなくなってしまうのだ。

 もちろん、性犯罪は許されるものではないが、被害者だけでなく、加害者にもならないために、私たちがしていけることは何なのだろう。本書はその問いに答えを与えてくれる1冊となるだろう。

文=古川諭香