駅のホームで食べるのはラーメン?! 全国に広がる「駅ラーメン」の魅力

食・料理

2018/12/27

『全国「駅ラーメン」探訪 地域に人を呼ぶ、ご当地の味』(鈴木弘毅/交通新聞社)

 駅での食事というと、「駅そば」を思い浮かべる人は少なくないだろう。しかし、昨今はターミナル駅でのいわゆる「駅ナカ」と呼ばれる、駅構内の買い物や飲食のできるスペースが充実し、多彩な食事を楽しめるようになってきた。中でも小生が注目したいのは、全国に地域それぞれの文化を築くほどに親しまれているラーメンだ。本書『全国「駅ラーメン」探訪 地域に人を呼ぶ、ご当地の味』(鈴木弘毅/交通新聞社)は、長年にわたり「駅そば」を食べ歩き関連著書も豊富な鈴木弘毅がその経験を活かし、全国の「駅ラーメン」を考察する一冊である。

 そもそも「駅ラーメン」とは何だろうか。「駅そば」なら、カウンターでの立ち食いがメインで、安くて早いイメージなのだが、「駅ラーメン」の場合、テーブル席も少なくないし、1杯の価格に開きもあり安くて早いとも限らない。実を言えば線引きが難しいので、本書ではあえて定義を曖昧にしているそうだ。ただし当然、駅構内や駅ビルに入居というのは外せない条件で、更に駅と一続きとなったガード下や地下街も含まれる。また、「駅そば」店や食堂がラーメンを供することもあり、それらも範疇としている。それだけ「駅ラーメン」とは多彩なのだ。

 また著者自身の面白い基準として、店頭のポスターなどで「店主が腕組みをしている」店は除外されている。決してそのイメージを売りにすることを否定するわけではないのだが、あくまで「駅そば」と同様に「気軽に入れるか」に拘っているのだ。確かに、電車の待ち時間にサッと入ってサッと食べようと思っているのに、店主に睨まれながらでは、暖簾をくぐること自体を躊躇してしまいそうだ。

 では「駅ラーメン」が増えているのはなぜか。例えば「駅そば」が普及したのは、そばが江戸時代から庶民に親しまれていたことが大きく、明治中期には鉄道の発達に伴い、すでに駅構内で食べられるようになっていた。列車を待つ間に短時間で供されて食べられるため、昭和の高度成長期にも慌ただしい通勤客に好評だったという。

 一方、「駅ラーメン」は国鉄分割民営化後に無人駅が急増し、空いた旧事務室スペースなどを利用して開業していった。「駅そば」より客単価がやや高く薄利多売に頼らなくても成り立ち、1980年代以降は鉄道会社と簡易委託契約を結んで駅舎内に入居することで、切符などの販売実績に応じた手数料収入を得る店も出現。それにより客が少なくても売り上げをカバーできたのだ。

 また「駅ラーメン」は街なかの店舗とは営業時間が違う。一般的なラーメン店はランチタイムである11時に開店し14時頃からの昼休みを経て、17時以降のディナータイムへと至り、深夜まで営業する店舗が多いのだが、駅ナカ店では終電前に閉店してしまう。一方で昼休みがないどころか、朝の通勤ラッシュ時には開店し多くの客の朝食をまかなっている。実はこれが強みであり、「駅ラーメン」が求められる理由ではないだろうか。現在では駅の内外に関わらず、そば・うどん店を合わせての年間新規出店数が約3000軒に対し、ラーメン店は3800軒という話もあるほど。勿論、閉店する店も少なくはないが、「駅ラーメン」の出店も増えるだろう。

 全国にご当地ラーメンがあるが、街の玄関口である駅にはその土地を代表するラーメン店が出店していることも多く、いわば「駅ラーメン」はご当地ラーメン巡りの第一歩。本書は著者自身が食べ歩いた全国の店も多数紹介されており、読者諸氏もぜひ近場の店を訪れてみてほしい。個人的には、JR名古屋駅新幹線口に直結するエスカ地下街の「らーめん寿がきや」をお勧めしたい。「スガキヤ」といえば名古屋のラーメンチェーンだが、この店舗はその上位版。独特の和風豚骨スープは癖になること間違いなし!

文=犬山しんのすけ