女たちが脱いだ時代! 宮沢りえ『Santa Fe』、菅野美穂『NUDITY』…「はだかはわたしを強くさせる」最近のヌード写真集事情

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更新日:2020/5/8

 そして時は経ち、2017年4月、玄光社からヌードモデルの兎丸愛美の初となる写真集『きっとぜんぶ大丈夫になる』が発売された。おもしろいのはこの兎丸愛美というヌードモデル。元々モデルだったわけでもなんでもない。ごく普通の大学生だったのだ。そんな彼女がヌードモデルとして活躍するようになったきっかけこそが、SNSなのだ。

 TwitterやInstagram、TumblrなどのSNSに、ヌードを含めた自身の写真を投稿していくうちに反響が広がり、多くの撮影依頼が舞い込むようになった…という、ちょっと予想の斜め上をいくはじまり方。そもそもSNSに裸体を載せていいのか? という疑問が生じるが、これに関しては各運営会社に基づいた規約があり、彼女はそれに準じた写真をアップしていたようだ。

 なぜ大学生だった彼女が、SNSに自分のヌードを投稿するという行動に出たのか。巻末に収録されているショートエッセイにその理由が書かれている。

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「20歳になるまえに、大人になるまえに遺影を撮らなくちゃいけないと思ってしまって、わたしはとにかく死にたかったのである。遺影はぜったいにはだかじゃなくちゃだめ」(本書より抜粋)

 遺影のつもりで撮ったはだかの写真が、彼女のヌードモデルのはじまりだったのだ。SNSに公開するとたちまち話題になり、彼女を普通の大学生からヌードモデルへと変えた。

 ページをめくると、公園や駅、寝室やバスルームなど、日常的なシーンでの写真が続いた後、突如フルヌードの兎丸愛美が現れる。田舎道の真ん中で佇む姿は、ヌードではなく“全裸”という表現がぴったりだ。自分のすべてをさらけだしているように見える。

 駅で愛しい誰かに迎えられながら人懐っこい笑顔でかけよってくる兎丸愛美。屈託のない笑顔は、読者に自分が彼女の恋人になったような錯覚を抱かせる。あるいは涙のショット。すぐそこにふれられそうなほど生々しく臨場感のある泣き顔。

 SNSに自分のはだかを載せる――もしかすると、出発点は若い女性特有の自傷的行為だったかもしれない。しかし、遺影を撮るつもりではだかになった兎丸愛美の写真集は、伸び伸びとした裸体、嘘のない表情、5年間にわたりヌードモデルとして活動してきた兎丸愛美の生き様がふんだんに詰まっている。

「『きっとぜんぶ大丈夫になる』はだめだったときのあの頃のじぶんと重ねてみてほしいです」(“kinakoiro.tumblr.com”より引用)

――兎丸愛美は自身の写真集に対してそう語っている。

 平成3年のヘアヌード写真集解禁から27年経った今、SNSで一般人がヘアヌードを投稿し写真集が出せるまでに進化した。…するとこのあとは? ちょっと予想もつかない。

文=坂本七海(清談社)