「グーグルマップ」も「ポケモンGO」も同じ男が作った! その内幕と奮闘を臨場感溢れるストーリーで描く

ビジネス

2019/1/18

『NEVER LOST AGAINグーグルマップ誕生』(ビル・キルデイ:著、大熊希美:訳/TAC出版)

 2005年、相次いでサービスが始まった「グーグルマップ」と「グーグルアース」。画期的だったのは、地球が丸ごと衛星写真で3Dデジタル化され、まるで自分が渡り鳥になったかのように、世界中を訪問できるようになったことだ。

 このグーグルマップ&アース誕生の裏には、2004年にグーグルが立ち上げた「グーグル地図チーム」の功績があった。その熱きチームメンバーたちの群像劇を、ドラマチックに描いたノンフィクションが、『NEVER LOST AGAINグーグルマップ誕生』(ビル・キルデイ:著、大熊希美:訳/TAC出版)だ。

 本書によれば、オリジナルの地図サービス提供はグーグルにとって、長年の果たせぬ夢のひとつだったようだ。その夢を叶えるべくグーグルが買収したのは、グーグル地図チームを構成する、「キーホール」(スタッフ29名)と「ウェアツーテック」(スタッフ4名。主に2Dマップの基幹技術を担当)という、2つのスタートアップだった。

■「地球の3Dデジタル化」を可能にしたキーホール社

 中でも、「地球の3Dデジタル化」を可能にしたのが、キーホールだ。同社が所有する「クリップマッピング」という特許技術(解像度の異なる複数の画像を組み合わせて、切れ目のない1枚のモザイク画像を生成する技術)のおかげで、ワクワクするような地球の3D旅行が可能になったのである。

 著者は、キーホールでマーケティング担当者だった人物だ。そして本書は群像劇ながらもひとりの中心的な人物が登場する。それが、著者のテキサス大学時代からの親友で、ビジネス・パートナーにして盟友、キーホール創業者であるジョン・ハンケ氏だ。

 本書の前半部分では、ハンケ氏とクリップマッピング技術との出会いや、2000年に立ち上げたキーホールと「キーホールアースビュアー」(グーグルアースのプロトタイプ)の歩みが描かれている。

 この頃のいちばんのドラマは、資金難から倒産の危機に瀕したことだろう。しかし、どんな困難があろうとハンケ氏がキーホールをあきらめなかったのは、「地球の3Dデジタル化」や「位置情報技術」の活用は、近い将来に必ず「人々の関心を呼ぶイノベーションにつながる」と直感していたからである。

 この危機は、CNNネットワークによって救われる。彼らの技術がニュース中継に使われたことで、一躍「キーホールアースビュアー」は話題となり、グーグルからの買収オファーへと進展するのだ。

■グーグルのカリスマ創業者たちやスティーブ・ジョブズ氏も登場

 買収劇をめぐるエピソードは、筆者のお気に入りのくだりのひとつだ。買収承諾にあたりハンケ氏は、「チームメンバーの全員雇用」を絶対条件としてグーグルに提示した。その結果、晴れて全員がグーグラー(グーグル社員に対するシリコンバレーでの愛称)となった。

 著者によれば、「テクノロジー企業の買収で、こうした(全員雇用という)条件は聞いたことがない。たいていの場合、買収される側の社員の多くは雇用されない」という。

 このように人との絆を尊重するハンケ氏の価値観と行動からは、イノベーションを起こすのに必要なヒューマンファクター(人的要因)や、あるべきリーダーシップが学べるだろう。

 一方で、全員雇用はグーグルのクリップマッピング技術への関心の高さの表れでもある。本書には、入社したキーホールメンバーたちを、グーグル創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンという2人のレジェンドが出迎え、ミーティングを行う様子が記されている(ここでのやり取りもかなり興味深い)。著書によれば、買収したばかりのメンバーと、この2人が直接ミーティングすること自体、レアケースなのだそうだ。

 また本書には他にも、2005年当時、グーグルの検索画面他、コンテンツ部門で絶対的な権力を持っていたマリッサ・メイヤー氏(2012年7月にYahoo! CEOに就任)や、故・スティーブ・ジョブズ氏(グーグルマップをアイフォンのキラーコンテンツにしたい、とハンケ氏に直々に電話をかけてくる)などのレジェンドたちも随所に登場する。

 彼らと著者やハンケ氏がどうかかわるのかも、本書の読みどころのひとつだろう。

■2016年には、「ポケモンGO」を作った男として話題に

 そして本書終盤で著者は、2016年ハンケ氏と一緒に来日し、東京・六本木で過ごしている様子を描写している。

 ハンケ氏はじつはこの年に、日本で非常に大きな話題になった人物なのだ。その時にマスコミが好んで使ったハンケ氏のキャッチフレーズが、「『ポケモンGO』を作った男」だ。

 ハンケ氏はグーグル地図チームで成果をあげた後、位置情報を活用したAR(拡張現実)技術に取り組む。そして2015年にナイアンティックCEOとして独立するや、16年にはARゲーム「ポケモンGO」を株式会社ポケモンと共同開発。再び、世界に名を馳せたのである。

 本書には、「ポケモンGO」の誕生秘話も記されているので、興味がある方はぜひ本書でチェックしていただきたい。

 著者はもちろん、ハンケ氏の盟友としてグーグルを共に退社し、現在もハンケ氏をサポートしている。本書はシリコンバレーが舞台ではあるが、この2人の友情・絆を軸にしたヒューマンドラマでもあり、だれもが手に取りやすい内容だ。

「人を動かす要素」「ピンチの乗り越え方」「掲げたビジョンや目標へどう向かうか」「絆の深め方」などのテーマに関心のある方にとって、特に多くを学べる1冊だろう。

文=町田光