モンスター(嫌な奴)と戦うな!僧侶が教える、モンスターから自分のお城(心)を守る方法

暮らし

公開日:2019/2/26

『やっかいな人を自分のお城に入れない方法』(小池龍之介/マガジンハウス)

 人間関係は、人生の宝にもなり、人生をぶち壊す爆弾にもなる。もっと身近な言い方をすれば、心身の調和・不調和に大きく関わってくる。

 そこで読んでおきたいのが、『やっかいな人を自分のお城に入れない方法』(小池龍之介/マガジンハウス)だ。著者の小池氏は、東大出の僧侶で、昨年11月からは著作活動もすべて停止し、ホームレス僧侶空朴(くうぼく)として、悟りに専念する活動を始めている。本書は、そんな小池氏からのとりあえずのラストメッセージとなる、人間関係を通した「お城(心)の築き方」ガイドだ。

 本書で著者は、自分のお城(心)を脅かすやっかいな人として、「7つのモンスター」を取り上げる。その中から、いくつかのモンスターを紹介しよう。

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■「でも、~」と相手を否定して上に立つ支配欲モンスター

 最初に「支配欲モンスター/なんでもかんでも、押しつけてくる人」だ。

 例えば「あの店って美味しいよね」と言えば、「でも、あっちの店の方がもっと美味しいよ」など、会話で往々にして「でも、~」と相手の意見を否定するタイプの人だ。

 他人の意見を否定して自己主張することで、自分の独自性や有力さを示し「相手を支配している(もしくは上に立つ)私ってスゴイ?」という感覚に酔いしれたいやっかいな人なのである。

 なぜ、こうした言動をとるのか。著者によれば、「本人の自尊心が脆弱なため、自分一人では『自分は大丈夫』と安心できないのが原因」だという。そして、「自分には何かが足りない」という落ち着きのなさが、潜在的にいつも心を脅かしているため、対人関係を使って「自分の方が上だぞ、私は大丈夫なんだぞ」と自己暗示にかけ、安心を得ようとしているわけだ。

 そこで支配欲モンスターが周囲にいたら、「自分の精神のもろさを隠そうとしているんだね」と慈悲の心で見てあげて、「その人の持っている他の長所を見てあげるようにしよう」と著者はアドバイスする。

■満たせば満たすほど肥大する「承認欲求モンスター」

 次に紹介するのは、「承認欲求モンスター/評価を求めてくる、メンドウクサイ人」だ。

 SNS全盛の昨今、自分の投稿に対する周囲の評価を“過剰なまでに”意識している人が、あなたの周囲にもいるのではないだろうか。口を開けば「自分がどうした、こうした、自分はこんなに頑張っている」などと、周囲を気にせず自分アピールに終始する。このようにわかりやすい承認欲求モンスターもいれば、もっとやっかいなのは、プライドが高いため、そんなことは口には出さないタイプの人だ。こうした人の場合、不機嫌さで「自分を評価して」とアピールすることが多いそうだ。

 いずれにせよ承認欲求モンスターに共通しているのは、「他者の視線に依存している」という心の脆弱性だ。

 そのため、こうした相手の「承認欲求を満たし過ぎるのは禁物」だと著者はアドバイスする。満たせば満たすほど肥大してあなたに近づき、頻繁に愚痴を聞かされ、相手をねぎらわなくてはいけなくなり、それを遮断しようとすれば、逆恨みされる危険性さえあるという。

 一番いい付き合い方は、「この人は承認されたくて必死になるほど、心が飢えているんだな」と、同情心を持って話を聞いてあげて、半分は聞き流し、適度に相槌を打つくらいの適度な距離感を保つことだという。

■モンスターの侵入を許すのはじつはあなた自身

 さて、ここまでに2つのモンスターを簡単に紹介したが、著者からの重要なアドバイスをさらに加えておこう。

 これら2つのモンスターという外敵はいずれも、あるサポーターの存在がなければ、あなたの「自分のお城(心)」には容易には侵入できないのだ。

 そのサポーターとはなにか? それがあなたのお城にいる内敵、つまりあなたの心の一部だ。あなたの心はつい、モンスターに対して「ああ、やっかいだ」「むかついた」「大嫌い」などと、引っ張られてしまうだろう。そのときこそが、まさにお城にモンスターが侵入した瞬間なのだ。そのための対策は、「相手に同調しないこと」だ。

 本書には他にも、念が強すぎるモンスター、略奪者モンスター、誤解魔モンスター、偽善者モンスター、侵略者モンスターなど、身近にいるタイプばかりが登場する。本書の目的は、どんなモンスターが目の前に現れようと、お城をほんの少しもザワつかせないような城壁を築くことだ。だが、目的はそれだけではない。

 著者は、誰もが何かしらのモンスター要素を持っていると指摘する。つまり本書は、わが身を振り返るためのガイドでもある。他人事としてではなく、セルフチェックのためにも、本書のアドバイスに耳を傾けてみよう。

文=町田光