「死ぬまで捨てるもんか!」尿瓶、変な掛け軸…みうらじゅんの『マイ遺品セレクション』

エンタメ

2019/2/26

『マイ遺品セレクション』(みうらじゅん/文藝春秋)

 みうらじゅんといえば、「ゆるキャラ」という言葉・概念の生みの親。その楽しみ方を世に広め、日本の一大文化にまでしてしまった人物だ。

 しかし、彼が収集し続けているモノをまとめた新著『マイ遺品セレクション』(文藝春秋)を読むと、世間にまでブームが広まったものはごく僅かだと分かる。同書で紹介されている収集物は56に及ぶが、ゆるキャラ以外は「みうらじゅんさん以外、まだ誰も価値を見出してないんじゃ……」というものばかりだ。また、ここでの「遺品」の定義は、故人のゆかりの品物ではなく、みうらじゅんが“死ぬまで絶対に手放さないもの”だ。

 ラッセン風のイルカの絵が描かれた、誰も床の間に掛けたがらない変な掛け軸「変軸」。土産物屋にある一点物の木彫りの置物「きぼりん」。今や使用品まで集めている「シビン(尿瓶)」。冬場になると旅行パンフ置き場を赤一色に染める、カニが描かれた旅行パンフレット「カニパン」……。

 よくよく考えると、どこか見た目や存在感に可笑しみがあるものだが、「だからって、それを集める?」というものばかりだろう。

 ちなみに「カニパン」は、大概は16ページで嵩張るし重く、旅行に出ると「1日目にしてカバンの中はカニパンでいっぱいだったりする」という。そして「シビン」には「発音するとアントニオ・カルロス・ジョビン的なボサノヴァ風味が出る」と謎の良さを見出し、「変軸」については「当然のことながら飾る場所などなく押入れ行き。でも、そこがいい」と書いている。

 収集するモノがおかしいだけでなく、それを無理やり面白がるパワーが尋常では無いのだ。

 そもそも、普通の人が「欲しい!」と思うものは、世の中ですでに価値が認められているもの、生活の役に立つもの、誰でも楽しみ方が分かるものなどだろう。

 だが、みうらじゅんが欲しがり、実際に収集しているものはその真逆。世間で価値が認められていないもの、持っていても役に立たないもの、何が面白いのか分からないものなどだ。

 そんなモノの収集を続けるには根気がいるし、大量のお金も時間もかかる。そもそも不要なものなのだから、買うときは男気も必要で、自ら楽しみ方を見出すにはセンスも求められる。誰も「いい!」と言う人がいないものを「いい!」と言い切るには勇気も必要だ。

 みうらじゅんは「おかしなモノを集めて発表しているおかしな人」なのだが、そこに誰よりも情熱を注ぎ続けている。だからこそ、そのバカバカしいかもしれない活動は時としてカッコよくも見えるのだろう。

文=古澤誠一郎