「罪の意識が一切無いのです」完全犯罪の犯人が独白!『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』の真実とは?

小説・エッセイ

2019/3/14

 昨年8月、あの「三億円事件」の犯人と名乗る「白田」による告白が、小説投稿サイト「小説家になろう」に公開され、ネットは騒然となった。12月に書籍が緊急出版されるや、発売5日で10万部を突破。「罪の意識が一切無いのです。(中略)――この事件は、私の青春そのものなのです。」白田の一人称で語られた事件の全貌は、果たして真実なのか? 気になるその中身を紹介しよう。

『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』書影

『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』
白田 ポプラ社 1000円(税別)
息子夫婦と孫と幸せに暮らす老人・白田は、妻を交通事故で亡くしたことをきっかけに、自らが「三億円事件」の犯人であることを息子に告白する。事件はなぜ起きたのか、なぜ逃げ切ることができたのか、その後の人生はどうなったのか。すべては1968年、4人の若い男女――大学2年生の白田、親友の省吾、同級生の京子、学生運動家の三神――が出会ったことからはじまった……。

 

 1968年冬、東京都府中市でおきた、偽の白バイ警察官による3億円窃盗事件。現金強奪事件としては当時日本最高額の窃盗であり(現在の貨幣価値に換算すると約20億円ともいわれる)、未解決となった完全犯罪である。

 その犯人による独白である本作は、小説投稿サイト「小説家になろう」で800万PV超を記録し、日間・週間・月間ヒューマンドラマ(文芸)ランキングで1位を獲得(2018年10月)。単行本は発売2カ月の累計発行部数が13万部を超えた超話題作だ。

「三億円事件」をテーマにした作品は数多いが、50年を経て、ついに真犯人が真実を語ったとなれば、熱い注目が集まるのは必至だろう。

学生運動全盛の時代、4人の若者が出会う

 語り手は、自身が事件の真犯人だ、と告白する白田。時は学生運動が盛んな1968年。大学2年生の白田は、学生運動の波にも乗れず、親しい友人も作れず、ぼんやりと、ほとんどひきこもりのような生活を送っている。白田の古くからの親友である省吾は、高校を出てからも暴走族を続け、周囲の信頼を得てリーダー格に出世している。高校を卒業して生活が変わっても、街の外れにあるプレハブ小屋を拠点にして、ふたりの交流は続いていた。

 ある日、ふたりは大学で、白田の同級生の京子に出会う。カスタムしたバイクをほめられた省吾は京子に好感を持ち、3人の交流がはじまる。それはまるで、絵に描いたような青春の時間であった。

 さらに白田は、大学を席巻する学生運動の会合で、美しく知的で、カリスマ的な求心力を持つ学生運動家・三神千晶を知り、彼女が会長をつとめる経済理論研究会に参加することになる。そこで耳にした何気ない会話が、やがて破天荒な運命の幕開けとなり――。

青春小説か? 真実の告白か? 果たしてその真相は

 この本で、大事件の裏側として描かれるテーマのひとつは、若い4人の男女の間に生まれる、青春時代のかがやきと痛みだ。

 誰が誰を好きなのか。誰にどんな秘密があるのか。誰が何を隠しているのか。白田、省吾、京子、三神はそれぞれ、お互いに明かしていないことがあった。その結果として、白田は永遠に、かけがえのないものを失ってしまう。

 誰がどんな愛を誰に向けていたのか。その真実は、ラストに向けて、万華鏡のように、くるくると見え方が変わっていき、目が離せない。

 文中で「読者の皆さん」という白田からの語りかけが、かなりの頻度で繰り返されるのも、印象的だ。何度も言われているうちに、だんだんと、まるで白田に直接話しかけられ、一世一代の告白を受けているような気持ちになるのだ。興味深いテーマな上に、展開がスピーディなので、読者はあっという間に作品の世界観に引き込まれてしまうだろう。

 この本は、タイトルの通り「府中三億円事件を計画・実行」した犯人による、詳細な告白である。事件が起きた背景、決行までの計画、当日の行動までが詳細に描かれ、作中では、現場にいた犯人にしか知り得ない、とある遺留品の存在も明かされる。

 しかし、その一方で、白田が50年ものあいだ忘れることができなかった、どうしても語り残したかった、かけがえのない青春を描いた作品でもあるのだ。

 果たして、この作品は、センセーショナルな事件をモチーフにした、よくできた青春小説なのか? それとも、フィクションというエクスキューズをまとうことで、ついにすべてを明るみに出した真犯人の告白なのか?

 真実のありかは、本書を読んで、ぜひ自ら判断してほしい。

構成・文=波多野公美

 

府中三億円事件とは?

今から約50年前の1968年12月10日、東京都府中市の路上で、3億円を積んだ現金輸送車が偽の白バイ警察官により車ごと強奪された。犯人は武器や暴力を使わず、発煙筒をダイナマイトに見せかけて運転手たちを避難させ車を奪い、逃走用の車両を駆使して逃げ切った。死傷者を出さず、3億円は保険で補填され、誰も損をしなかった事件とも言われる。現場に残された白バイや、乗り捨てられた車など、遺留品も多く、犯人はすぐに捕まると思われた。しかし、7年にわたる大捜査にもかかわらず事件は1975年に時効を迎え、日本の犯罪史に残る未解決事件となった。現在の貨幣価値で20億円ともいわれる被害の大きさかつ、迷宮入りの完全犯罪となったため、フィクション、ノンフィクション問わず、事件をテーマとする作品は多い。

 

【Pick up! 読者の声】

■本物なのか、フィクションなのか? ハラハラドキドキを楽しむ読み方ができると非常に面白い。(40代・男性)*読書メーターより

■先が気になる展開で一気に読まされた。これ、本当に事実なんだろうか?​(40代・女性)*読書メーターより

■青春小説という体裁以上の何かがある。(50代・男性)

■著者が真犯人でなく、真相を推察した上で、真犯人像を想像してこの文章を創造したのであれば、紛れもなく天才(20代・男性)*読書メーターより

■犯人が今まで生きてこられたのは大変な幸運なわけだが、ちっとも幸せそうには思えない。人生の幸せとは何だろう。やはり犯罪は割に合わぬものには違いない。(60代・男性)

■読んでて飽きない。随所に読者に語りかけられるやり方も、最後の伏線の回収もお見事。エンタメってこういうことかー!(30代・女性)

 

【登場人物紹介】

イラストは『少年ジャンプ+』(集英社)にて連載中のMUSASHI/画によるコミカライズより。
(c)白田・MUSASHI/集英社

白田
大学2年生。今は平凡に過ごしているが、高校生までは省吾と暴走族に所属していた。バイクの運転がうまい。

省吾
白田の親友。行動力があるタイプで、暴走族のリーダー格。一目惚れした京子にアプローチするが……。

橋本京子
白田の大学の同級生。地方から上京している。女子校育ちで、男性にあまり免疫がなく、白田と省吾がはじめての男友達。

三神千晶
白田の大学の学生運動家。美人で頭がよく、カリスマ性がある。経済理論研究会の会長をつとめる。