サラリーマンのあなたが会社を買うために。価値ある会社の見極め方、会計の基本がスラスラわかる!

暮らし

2019/3/5

サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編
『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編』(三戸政和/講談社)

 働き方改革時代のサラリーマンにとっての新たな選択肢、それが個人M&A(企業買収)だ。つまり、中小企業の社長さんに転身するのである。このアイデア、サラリーマンの間でかなり人気(というか注目)を集めているようだ。

 火付け役となったのが、以前本サイトでも紹介した、三戸政和氏の著書『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社)で、13万部超えのヒットとなった他、三戸氏はテレビにも頻繁に登場しているという。

 一方で、興味はあるが「300万円で買えるはずがない」「会社の選び方がわからない」といった声も多く寄せられたという。そこで、続編『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編』(講談社)の登場である。

 今回は、会社を買う際に必須となる「最低限の会計知識」、「危ない会社」の見抜き方、「儲かる会社」の見つけ方、賢い会社の買い方など、より実践的なM&Aレクチャーだ。

●サラリーマンが日常的に使う会計用語や決算資料への理解が深まる

「むむっ、会計レクチャーか…」と、構えるなかれ。本書は、会計素人にも読みやすく、理解しやすい。登場する会計用語や知識は、「小規模な個人M&Aをするために必要なもの」に厳選されていて、おそらくサラリーマンを2、3年以上やっていれば、耳馴染みのある用語がほとんどだ。

 サラリーマンが日常的に使う「営業利益」「粗利益」「減価償却」などの会計用語も登場するが、これらを「企業を買収する側」という視点で学ぶと、その言葉の意味や違い、示す価値などが、これまで以上に深く理解できるようにもなる。

 また本書は、企業の2大成績表、「貸借対照表」(以下BS)と「損益計算書」(以下PL)を、ある程度分析できるようにリードしてくれるので、「会社を買うつもりはない」というサラリーマンも本書から多くを学べるだろう。

 さらに、例え話や実例の引用が巧みで、レクチャー本にありがちな退屈さを見事に回避させているあたりは、まさに著者の真骨頂だろう。

 銀行との企業の攻防例では半沢直樹、資金繰りの失敗例では旅行代理店「てるみくらぶ」のケースなど、随所にわかりやすい例を盛り込み、会計だけでなく「企業経営の基本」も学べるのが本書の特徴だ。

●大手メーカーを1年半で辞めて中小企業の社長となった25歳!

 さて、では本当に300万円で企業買収は可能なのか? 本書には、前著を読んだ読者(なんと25歳!)が奮起して個人M&Aを成功させた事例が紹介されているので、その内容を手短に紹介しよう。

 ある大手メーカー勤務の25歳のMさんのケースだ。1年半勤めた後、前著に触発され、M&A紹介サイトを調べたところ、ある製造業の中小企業があったという。従業員は5名だが大手企業と取引のある金属加工会社だ。

 そこで後継者不在に悩む社長と面接。25歳の若者ということで最初は戸惑ったものの、最終的に3000万円で買収することになったという。

 次に銀行との交渉だ。結果的に「創業融資」(低金利融資制度)をしてもらえることになり、買収に成功。その後は若手社長として手腕を振るい、現在、月商約250万円を400万円近くまで伸ばし、経営は順調だという。

 Mさんによれば、この会社は技術・製品は確かだったが社長が高齢のため、営業力に問題があった。そこを若手のMさんがカバーし、業績が伸びているのだそうだ。

●もはや会社の借金を社長個人が背負う時代ではない!

 このケースのように、300万円は銀行融資の際の頭金のようなもので、M&Aは銀行融資を引き出して行うのだ。

「銀行融資なんて怖い。倒産したら自分も破産して莫大な借金に追われる」、というイメージがあるだろう。

 しかし著者は「もう、その考えを改めてください」と記している。

 以前は、会社の借入金に対して、中小企業の多くの社長が「連帯保証(個人保証)」をしてしまっていたという。そのため、会社倒産=借金地獄になっていた。しかし現在では「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、銀行は融資の際に「経営者の保証を求めない」ことになったのだ。

 つまり、借金は不安材料ではなく、企業の潤滑油。大いにチャレンジすべし、なのである。

 本書には他にも、アップルの在庫を持たない受注後生産商法のメリットなど、会社経営に役立つ情報も多数掲載されている。

 著者によれば、今後10年間で、日本の中小企業は126万社が後継者不足などで廃業に追いやられるという。きっとその中には、日本ならではの匠の技を持つ、キラ星のように輝く企業もあるだろう。

 もし、「こんな会社をこんな方針で経営してみたい」という夢があるなら、個人M&Aはその近道かもしれない。本書で、そのために必要な会計知識、企業の精査の仕方などをしっかり学んでみてはいかがだろうか。

文=町田光