お寺に暮らす猫たちの写真エッセイ集『てらねこ』――ゆっくりと、生きていく

文芸・カルチャー

公開日:2019/3/31

 皆さんは「◯◯ねこ」、というと何を思い浮かべますか?

 3月20日(水)に『てらねこ 毎日が幸せになる お寺と猫の連れ添い方』(写真:石原 さくら, 長楽寺/KADOKAWA)が発売されました。

『てらねこ 毎日が幸せになる お寺と猫の連れ添い方』(写真:石原 さくら, 長楽寺/KADOKAWA)

 栃木県 那須にあるお寺、長楽寺(@nasu_chourakuji)。そこでは住職さんたちと共に4匹のねこたちが、ゆっくりと流れる時間のなかで、幸せそうに暮らしています。本書には「お寺はすべてに開かれた場所で、誰がきてもいいし、心のよりどころになる場所」と書かれています。適度な距離を保ちつつも突き放すでもなく、じっくり相手と向き合い、じんわり心を癒してくれる。お寺とねこは、そういった点で同じ空気感を持っている気がします。

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長楽寺のねこたち

 長楽寺の看板ねこであるミー子は、子猫の頃に小学校で捨てられていた捨て猫でした。そんなミー子をお寺のお母さんが拾ったことから、ミー子は「てらねこ」になりました。ひーちゃん、シロ、まー君はミー子の子どもたちです。子猫だったミー子はお寺で暮らす日々の中で母親になり、住職さんやお母さんにされたのと同じように、子どもたちをしつけ、育てました。住職さんとお母さんは、人間が人間らしく扱われたいように、猫も猫らしく扱われたいのではないかという考えから、ミー子をしつける際、猫のようになってしつけたそう。

 写真と共にミー子視点で語られるお寺での日々は、読み進めていくうちにまるで自身もお寺の猫になったかのような気持ちになります。住職さんやお母さんの膝の上で愛おしく撫でてもらったり、お寺の中を自由自在に歩き回り、暖かい陽だまりを見つけては日向ぼっこをする。長楽寺での時間の流れがゆったりと伝わってきます。

 ときおり挟まれる「おてらのひとりごと」コラムでは、動物を飼うこと=命を預かることへの覚悟。必ず訪れる別れとどのように向き合うかなど、お寺ならではの視点で動物と暮らすことへの心構えが書かれています。家族である動物と一緒に生きていくために、ルールを設けちゃんと一線を引く。叱るときには叱り、愛するときには最大限に愛する。「こうであれ」と押し付けるのではなく「こんな考えもありますよ」と優しく説いてくれています。

 本書を読み終えたら、ミー子たちに会いに長楽寺へ行ってみてはいかがでしょうか? きっと温かく出迎えてくれるはずです。

文=ひじりこ