話題の“インスタ映えするおじさん”の正体とは!? 壇蜜と「友達がいない」について語り合う

エンタメ

2019/5/8

『幻の哀愁おじさん』(岩井ジョニ男/文藝春秋)

 今、巷で話題の「インスタ映えするおじさん」をご存じだろうか。新橋、新宿、五反田、浅草……昭和の香りを残す町で撮り続けるポートレートを2018年5月から投稿しはじめ、すでにフォロワー数は67万人を超える大人気インスタグラマーだ。

 その名も、岩井ジョニ男。タモリさんの付き人(運転手)を経てデビューした芸人で、自称40~50代。生年月日は非公開。メガネにちょび髭、スーツをまとった、まごうことなきただのおじさんの彼に、なぜこれほど人気が集まるのか。その魅力に迫ったのが初のフォトエッセイ『幻の哀愁おじさん』(岩井ジョニ男/文藝春秋)である。

 好かれるおじさんと嫌われるおじさんの違いは、媚びや下心の有無ではないだろうか。岩井さんのインスタグラムには、それがない。あるのは、人を不愉快にさせない最低限のマナーと、哀愁おじさんとしての美意識。驕らず、飾らず、おもねらず。あるがままで生きる自然な姿に昭和の香りがプラスされおしゃれに演出されている。その絶妙なバランスで映し出されているから、投稿写真は見ていてただただ美しく、そして心地がいい。

 その心地よさは、壇蜜さんとの対談にもあらわれている。自分と同じ「昭和の匂い」を感じる壇蜜さんにどうしても会ってみたかったという、岩井さんの熱望で実現した同企画。芸人になりたくて、タモリさんに憧れて、四十九日押しかけて弟子となった岩井さんのデビュー秘話も興味深いが、何よりおもしろかったのは2人が「友達はいない」と語りあうところだった。

ジョニ男 最近、僕も友達の必要性を感じなくなってきたんです。以前はさんざん仲間とつるんできたのに……。なんでですかね?

壇蜜 きっと、自分の生活スタイルがきちんとできたからですよ。これまでは足りないところをお互いに補填し合っていたんじゃないですか。

 友達がいない=さみしいととられがちな現代において、「知り合いくらいの距離感がちょうどいい」とさらりと言えてしまう2人の身軽さ。最初からそうだったわけではなく、他人への嫉妬や自分への不甲斐なさ、様々な感情と経験を超えてきたからこそ辿りついた「大人」の境地。

 一方で、今なお人生は修行だと自覚しながら、それでも気負わず生きていくための心得が胸に響く。ちなみに「口説かれる美女と、華麗にかわされるおじさん」というていの、ツーショット写真もおしゃれだ。

 タイトルにもあるとおり、こんなにも軽やかで、哀愁漂う、美しきおじさんなんて、昭和の幻に過ぎないのかもしれない。だがそれでも、もしかしたらだからこそ、写真におさめられた岩井さんの佇まいは眺めているだけで楽しく、そして気持ちを癒してもくれるのである。

文=立花もも