粉引・漆器・アンティークetc… 人気スタイリスト伊藤まさこさんに教わる器えらびの極意とは?

食・料理

2019/5/8

『伊藤まさこの器えらび』(伊藤まさこ/PHP研究所)

 無類の器好きの我が家の食器棚にはお気に入りの器がたくさん並んでいる。食器棚に入りきらないものも多く、いつか使われる日を待って部屋の片隅でダンボールの中に収まっているものも少なくない。いつも自分の感覚でピンときたものを選んでいるのだが、どうしても似たようなものばかり買い求めてしまう。他の人はどのように器を選んでいるのだろう?という疑問を解消してくれたのが『伊藤まさこの器えらび』(伊藤まさこ/PHP研究所)だ。

 雑誌で大活躍の人気スタイリスト伊藤まさこさんは、自身「大のおいしいもの好き」と公言している。そんな彼女が大事にしているのが器えらびだ。不思議なことに、料理は器ひとつ、盛り付けひとつ変えただけで印象がガラッと変わる。合わせる器によってよりおいしそうに見せることができるのだ。本書では、著者の自宅の食器棚に並ぶ器について、またそれぞれにまつわる物語や相性の良い料理とそのレシピなどについても紹介してある。

 

 陶芸家・島るり子さんの粉引の丸い器は、リムがなく平らなつくり。一見どうやって使えばいいのか難しそうに思えるが、著者は器をキャンパスに見立てるという。絵を描くような感覚で料理を盛り付ければ、和菓子や漬物、できあいの寿司も美しく見えるから不思議だ。粉引の器は水染みなどが気になる人も多いかもしれないが、島さんからはあまり神経質にならず、使っていくうちに変化していく様子を楽しむのがおすすめといわれたそう。確かに、作家物の器は扱いに気を遣ってしまいそうだが、普段使いの器だからこそ日常で頻繁に使うことで楽しめるのだろう。

 著者は自宅に友人を招き、料理でおもてなしをすることが多いという。しかし、いつもがんばっていては疲れてしまうので、おもてなしのテーブルコーディネートは肩の力が抜けた手軽なものを心掛けているそうだ。そんなときに便利なのが「どうぞご自由にプレート」。あらかじめテーブルの上に取り皿やグラスを用意しておき、各自が自由に使えるようにしている。取り皿には使い勝手のいい五寸皿がおすすめだそうで、来客時だけでなく毎日の食卓でも重宝してくれるだろう。特に、器えらびの初心者は、使い方を限定するものではなくいろいろな用途に使えるものを選ぶこともおすすめだ。

 海外旅行の楽しみのひとつに骨董市やアンティークマーケットめぐりがある。目を疑うような破格の値段で雑然と置かれている器も多く、目利きの力を問われる格好の場所だろう。もともと無地のシンプルな器ばかりを集めていた著者は、柄物の器に興味がなかったという。しかし、北欧旅行の際に訪れたマーケットで古い花柄のプレートに出会い、器の可能性が広がったそうだ。柄は盛り付ける料理のじゃまをすることなく、さりげなく引き立ててくれる効果がある。骨董市などでは揃いの器を探すことは難しいが、気に入ったものを一枚ずつ選ぶのもまた楽しいだろう。

 本書には、著者が日頃からつくっている料理のレシピも掲載されている。花柄のプレートには鮮やかな色のかぼちゃのポタージュ、スウェーデンの古い皿にはチャーシューなど、器と料理の組み合わせや盛り付け方もとても参考になる。また、食べてほっこりする切り干し大根の煮物やかぶの炒め煮などの和食は、毎日の食卓の定番レシピとなってくれるはずだ。

 食器棚をのぞくことで、その人の生活ぶりや好みなどがわかる気がする。自分の好きな器をおしゃれにディスプレイすれば、見せる収納としてインテリアのアクセントにもなるだろう。著者も、時々リビングの棚にピッチャーをずらりと並べて、その姿を眺めるのが好きだと話す。また、お気に入りの器には料理を盛るだけでなく、アクセサリーなどを入れて飾るという活用方法もある。自分の感性を信じ、少しずつ器を集めていくのは大きな楽しみとなるだろう。本書は、器えらびに自信がないという人の力強い味方となってくれるはずだ。

文=トキタリコ

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