修学旅行や林間学校などに同伴する看護師「ツアーナース」の仕事を見学

社会

2019/5/9

『漫画家しながらツアーナースしています。』(明/集英社)

 先日、大変お世話になった看護師の葬儀に参列した。お世話になったのは私個人ではなく、私が20年ほど携わっていた教育関係のボランティア団体の主催による、小中高校生たちのキャンプなどの野外活動に看護師として長年付き添ってもらっていたのだ。葬儀会場には参列者の長蛇の列が成り、スタッフが対応に大わらわで、ご遺族もこれほど人が集まるとは思っていなかったと驚いていた。催し物に参加していた子供たちが大人になり、自分の子供を連れて参列している人も多く、それほど慕われていたということだろう。私も彼らの近況を聞いて懐かしく思っていたところ、このコミックエッセイ『漫画家しながらツアーナースしています。』(明/集英社)を見つけた。

 学校の修学旅行や林間学校などに同伴する看護師を通称「ツアーナース」というのだが、看護師歴十数年の作者は漫画家と兼業しているとのこと。その仕事内容は体力勝負で実にハード。具合の悪い子がいれば、夜中に何度か体温を確認したり水分補給をしたりして徹夜は当然、それが複数人となると、そのまま2晩連続で睡眠時間がとれないなんてことさえあるのだ。

 看護学生時代に「くすりにはリスクがある」と教わった作者の場合は、たった一つの薬のために山の中を全力疾走したこともあるそう。心臓病の子供がいて、服用している薬に悪影響を起こしやすい納豆とグレープフルーツは食事に出ないことを確認して安心していたら、山道でのハイキングの休憩中に先生が熱中症対策にと、子供たちにアメ玉を配り始めた。ところがそのアメ玉は、グレープフルーツの果汁入り。心臓病の子は最後尾グループにおり、先頭グループにいた作者は慌てて携帯電話を手にするも圏外。アメ玉に含まれる果汁の量は少ないとはいえ、薬の成分と結合した場合にどうなるのかジュースでの臨床試験のデータは参考にならないし、運動をしているという別の要素も加わって予見できない。やむなく作者は、岩をこえ橋をわたり、500メートルほどを駆け下りてその子を見つけると、ちゃんとグレープフルーツのものは避け、塩アメだけを食べたと分かって一安心。

 ツアーナースは当日に付き添うだけではなく、事前の打ち合わせで行事の工程や参加者の既往症などを確認し、先生方にも薬と食べ物の組み合わせの注意や、水筒の水が無くなった場合の補給方法など、健康に影響がありそうな点について助言するのも大事な仕事だ。先の心臓病の子供の場合も、ハイキングへの参加を医師が許可していることと食事内容の確認をして、薬とグレープフルーツの組み合わせが危ないことは先生方に説明していたのだが、充分に認識してもらえなかったようだ。このこと以来、作者は「口に入れる可能性のあるものは全て」事前にチェックするようになったという。

 しかし、そんな先生たちも頑張っている。作者によれば、「ひょっとすると子どもより多いかもしれない患者さん」は先生なのだとか。大人数の子供たちに対して先生方は、常に安全に気を配り、子供たちが自由に過ごす時間も打ち合わせなどで休むヒマが無い。それを支えるのもツアーナースの役目なのである。

 作者の経験では、たまに子供たちの行動がしっかりしている学校があり、さぞ先生たちが厳しく管理しているのだろうと思ったら、子供たちの個性を分かったうえで、うまく対応していたのを見て感動したそうだ。また、ADHD(注意欠陥・多動症)の子供がいた学校では、車道などの危険な場所でこそ先生がその子をつかまえて捕まえていたのが、安全な場所では皆が整列している中でも走り回るのを、先生が落ち着いて見守っていた。他の学校で、糖尿病の子がクラスメイトから「お菓子もってくるのはズルイ」と云われていたケースがあったそうだが、その学校では同じく糖尿病の子がいてもトラブルは無かったという。子供の成長と健康について描かれた本書は、子育ての参考になる一冊としてオススメしたい。

文=清水銀嶺