自撮り術も皆伝! 9年間地中に埋まっていたグラドルが「尻職人」として花咲いたSNS活用術

エンタメ

2019/5/8

『グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術』(倉持由香/星海社)

「尻職人」として人気を誇るグラビアアイドル、倉持由香さん。『週刊プレイボーイ』で表紙を飾り、Twitterで「尻時計」を投稿すれば37万人のフォロワーがリツイートやいいね!で応援する。厳しいグラドル業界で華々しく活躍する倉持さんだが、ここまでの道のりはとても一言で語れるものではなかったという。『グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術』(倉持由香/星海社)の冒頭にはこんな記述がある。

“ときにはお金がなさすぎてワカメを食べて空腹を凌ぐといった毎日を過ごしていた時期もありました。デビューから約9年間は地中で生活。セミより長かったです。”

 13歳で芸能界の門戸を叩いた倉持さんは、いくつもの苦難に見舞われた。それでも夢を諦めることなく、グラドルとして生き残る道を探し続けた。そして見つけ出したのが、過酷なグラドル界を生き残るためにSNSを使った自己プロデュース術だ。

 本書はグラビアアイドルが書いた仕事論。ページをめくるほどに驚くだろう。まるで実業家が書き下ろしたビジネス本を読んだかのような、理論に裏付けされた圧倒的な仕事論が本書にあるからだ。

■今では想像もできないグラドルの下積みが13歳から始まった

 倉持さんがグラビアアイドルを目指したきっかけは、小学生の頃のこと。9歳離れた兄の部屋に置いてあったちょっとエッチな雑誌『裏モノJAPAN』(鉄人社)を読んで性に目覚めた。それからパソコンでエロゲーにハマり、放課後に友達とエロ本漁りに勤しみ、女体への情熱が高まっていった。この頃に徹底的に磨いた「エロ目線で女体を見る」ことが、グラドルの仕事で大いに生かされていると倉持さんは語る。

 それから13歳で芸能界の門を叩いた倉持さんは、グラドルとして下積み生活を始める。親元から離れて、当時所属した事務所にそのまま寝泊まりする生活。5時に起きて朝ごはんの支度を済ませ、日中は電話番やウェブサイト制作。ときには仕事で疲れた先輩にマッサージをするなど、雑用をこなす日々。

 その後、現在の事務所に所属することになるが、初任給が5000円だったり、渋谷のネットカフェで寝泊まりしながら細々と仕事をしたり、とても現在の華々しい活躍が想像できない。

 なぜ倉持さんは9年間の苦しい下積みを抜け出し、一流グラドルの仲間入りを果たせたのか。それは、本書第2章以降で解説されるグラドル的マーケティング術があったからだ。

■独自の仕事論に裏打ちされた人気獲得の自己プロデュース術

 倉持さんの代名詞は「100cmのお尻」。その大きくて魅力的なお尻を突き出した写真を見れば、どんな男性だって目が離せなくなる。ところが倉持さんはこのお尻をコンプレックスに感じていた。素晴らしいお尻を活かせない日々が続いていたのだ。ところが2013年頃に転機が訪れる。あるカメラマンさんからこんなことを言われたのだ。

「もっちーは大きなそのお尻を武器にした方がいいよ。出さなかったらただの無駄尻だよ!」

 思わず傷つきそうなこの一言。しかし、倉持さんはアドバイスとして素直に受け止め、尻職人の誕生のきっかけとなった。

 そしてもう1つ、大きな武器となったのがTwitterだった。セクシーな露出で人気のコスプレイヤー・うしじまいい肉さんがTwitterにアップする自画撮り写真を見て、「自画撮りってすごくエロい」という発見があった。それから自身も少しずつ自撮りをアップするように。ここから倉持さんのグラドル的マーケティング手法が炸裂する。

 そもそも自撮りを頻繁にSNSにアップすると、「魅力の安売りでは?」という疑問がわくかもしれない。実際、倉持さんの当時のマネージャーから「自分自身が商品なんだから、そんなに自画撮りを載せてDVDが売れなくなったらどうする」と心配されたそうだ。しかし倉持さんは自撮り画像をアップし続けた。そこには、自ら導き出した「知名度のピラミッド理論」が根拠にあったからだ。

 知名度のピラミッドとは、ファンを3段階に分かれたピラミッド状の階層で考えるもの。一番下に位置する幅広い階層は、何かしらのきっかけで自分のことを知ってくれた人たち。Twitterで考えると、主にフォロワーの人数を指す。

 次に、真ん中にあるのが興味を持ってくれた人のうち、自分が掲載された雑誌や写真集などの作品を実際に購入してくれる人たち。頂点に当てはまるのが、撮影会やイベントへ実際に足を運んでくれるコアなファンだ。

 直接的な利益をもたらしてくれる頂点や2層目の人数を増やすためには、まず一番下の階層の人数を広く増やすことが必要。自撮りアップは、この階層を広げるための言わば「ティッシュ配り」だ。「自画撮り」をばらまき、私のグラビアに触れる人=フォロワー数を増やすことは、マイナスにはならないはずだという確信があったのだ。結果、フォロワー数が増えたことでその後発売したDVDは、Amazonランキングで第1位を獲得した。

 いかがだろうか? この考え方はまさしく経営の専門書に書かれているマーケティング手法に通ずる。無料でコンテンツの一部を潜在顧客にばらまき、その魅力を周知することで顧客を獲得する「フリーミアム」にも似ているだろう。本書では、このような鋭い分析とマーケティング的な考え方から導き出された仕事論がいくつも記されているのだ。

 ネットニュース化を狙ってハッシュタグ「#グラドル自画撮り部」を作成。人から応援されるためには、ある種のストーリー性が必須であることを知り、このタグがグラビアアイドル界全体で活用され、グループアイドルのような存在になることを目指した。その結果、さまざまなグラドルたちがブレイクするきっかけにも繫がった。さらに「単純接触の原理」を利用して「尻時計」を始めるなど、独自の理論に裏打ちされた倉持さんのSNSプロデュース術が本書で鋭く光る。

 本書を読むと、その濃密な仕事論に目が離せなくなるだろう。過酷な9年間を嘆くことなく、常に上を目指して前向きに活動を続けたから、これだけの仕事論が生まれ、現在の唯一無二のポジションを見つけたのではないか。尻職人の仕事論はファンを魅了し続けている。

■理論化されたグラビアアイドルの自撮り術

 さらに本書では「番外編」として、「グラビアアイドルの自撮り術」を公開している。倉持さんのグラビアと共に、そのテクニックを紹介しているのだが、とにかく理論化がすごい。

 たとえば「水着のキワに肉を乗せる」ことで、身体の柔らかさを視覚的に伝えるテクニック。自身の肉感的魅力を見事に表現し、フォロワーさんに「触ってみたい…」と思わせる。テクニック論としてこれだけ言語で理論化していることにも感嘆する。相当な研究と積み上げたノウハウがなければ、このようなテクニックは生まれないだろう。

 倉持さんのお尻につまっているのは、ファンのロマンであり、9年間いた地中から抜け出すために見つけた濃密なグラドル的ビジネス論だ。だからファンは彼女の姿に魅せられる。

 そして、本書を読んで驚くのは、倉持由香はグラドルとして偶然売れたのではないということだ。圧倒的な分析と独自の仕事論によって、売れるべくして売れた。その証拠が本書には記されている。

文=いのうえゆきひろ