それぞれの人生と向き合い強く生きる3人の女性たち――不思議な縁で繋がる彼女たちの心揺さぶられる感動の物語!

小説・エッセイ

2019/6/5

『三つ編み』(レティシア・コロンバニ:著、齋藤可津子:訳/早川書房)

 久しぶりに爽快感のある小説に出会った。読後のなんともいえない清々しさに、もう少しゆっくり読めばよかったと後悔したほどだ。『三つ編み』(レティシア・コロンバニ:著、齋藤可津子:訳/早川書房)は、3大陸それぞれの場所で生きる3人の女性たちが紡ぐ物語。同時代に生きる彼女たちだがお互いに面識はなく、共通しているのは逆境に立ち向かいながらも強くたくましく自分自身を信じて生きていることだろう。本書では彼女たちの人生が交互に綴られ、最後には結びつくことになる。

 インドで暮らしているスミタは、カースト制度のもっとも低い身分よりもさらに下、「ダリット(不可触民)」の女性。彼女の仕事は各家庭の糞尿を始末することで、体にはその強烈な匂いが染みついている。ダリットの女性は代々この仕事を受け継いでいくことが習わしで、彼女自身も母親から仕事を教え込まれたが、彼女は自分の娘にはこのような仕事をさせないと心に誓っている。しかし、現実は厳しく、なかなか現状を変えることができないでいる。インドでは牛は神聖な生き物と人々から崇められているが、彼女たちは牛以下の扱いを日々強いられているのだ。

 イタリア・シチリア島で暮らすジュリアは、彼女の父親が経営するランフレッディ工房で働いている。シチリアでは抜け毛や切り髪を保存するのが伝統とされ、ランフレッディ工房はそれらの毛髪を買い取り、洗浄、染色、加工などを行う毛髪工場だ。ある日、父親が事故に遭い昏睡状態に陥ったことで彼女の運命は大きく変わる。父親は隠していたが、実は工場は倒産の危機に瀕していた。その事実を知った彼女は、なんとか工場を再建したいと奮起する。

 カナダ・モントリオールで弁護士として忙しく働くサラ。3人の子どもを抱えるシングルマザーのサラは、アソシエイト弁護士にまでのぼりつめた最初の女性として一目置かれている存在だ。男性優位の法律事務所において、連日の残業や週末出勤などものともせず、努力して周囲に認められているやり手の彼女。しかし、ある病気をきっかけにその地位が大きく揺るがされることになる。これまで信じてきた同僚や上司は手のひらを返したように彼女を扱い、彼女を締め出しにかかるのだ。

 住む場所も生活環境もまったく異なる3人の女性たちだが、自分の信念を以って大きな敵に立ち向かう姿には勇気を与えられるだろう。インドのスミタにいたっては、日本で普通に生活していると想像もできないほどの境遇にさらされていることに驚く。ダリットには満足な仕事が与えられない、学校に行けないなどは当たり前で、罪を犯した場合は家族全員が公の場で公開処刑されることもあるという。定めだから仕方がないと誰もが諦める中、娘のことを思いスミタは戦うのだ。自分のことなら我慢できるが、子どもには同じ思いをさせたくないという母親の強い思いには感動を覚えるだろう。印象的だったのが、虐げられている女性の「牛に生まれていればよかった」というセリフだった。

 弁護士のサラについては、恵まれた生活環境ではあるものの病を機に人間関係に苦しむことになる。信じていた人たちから裏切られ、病気という理由だけで突然差別を受けるのだ。これまで不当な待遇で苦しむ人たちの弁護をしてきたが、まさか自分が逆の立場になるとは夢にも思わなかった。病気のみならず差別とも戦わなければならなくなったサラのその後は…。

 本書は3人の女性たちの視点で綴られた物語なので、つい彼女たちに感情移入してしまう。「なぜこんなことが起きるのか」と、読み進めながら声を荒らげたくなることも一度や二度ではなかった。最後にはタイトルにある「三つ編み」の通り、3人の人生がどのように交わるのかも楽しみに読み進めてもらいたい。

 本書がフランスで85万部を突破するベストセラーとなったのも驚くことではないだろう。この本に込められた女性たちの生き様や祈りは、きっと世界中の女性の魂を勇気づけ癒やしてくれるはずだ。

文=トキタリコ