閉じられた国・中国はなぜパワーを持っているのか? マンガ『キングダム』で、その歴史を読み解く

文芸・カルチャー

2019/6/16

『始皇帝 中華統一の思想 『キングダム』で解く中国大陸の謎』(渡邉義浩/集英社)

 山﨑賢人さん主演で実写映画化された『キングダム』。4月の公開から早2カ月。しかし、その勢いはいまだ衰えを見せず、興行収入は51億円を突破したという。この数字は、今年公開されたマンガ実写化映画のなかではトップ。その数字がどこまで伸びていくのか、映画ファンのみならず、原作ファンも注目しているだろう。

 映画の大ヒットの背景にあるのは、やはり原作の人気ぶりだ。マンガ『キングダム』(原泰久/集英社)は、マンガ好きはもちろんのこと、経営者からの厚い支持を集めており、一部では「ビジネスの教科書」とも呼ばれている。主人公である信と嬴政がタッグを組み、中華統一を目指す姿勢が、ビジネス界を生き抜く上でのヒントになりうるというのだ。

 この『キングダム』の舞台ともなっている、中国について、ぼくらはどれくらい理解しているだろうか。日本にとって「隣の国」とも言えるが、その関係は決して安定しているわけではない。なかには、文化の違いから、中国に対して苦手意識を抱いている人もいるかもしれない。そんな状況だからこそ、まずは「中国を知る」ことが必要なのではないか。そこで読みたいのが、『始皇帝 中華統一の思想 『キングダム』で解く中国大陸の謎』(渡邉義浩/集英社)だ。

 本書は中国の謎を、『キングダム』の名場面を引用しながら解説した1冊。『キングダム』のストーリーが始まる以前の歴史から丁寧に説明しつつ、物語に流れる地下水脈と史実をリンクさせ、中国に対する理解を促している。

 そもそも、現代中国は国内で海外のITサービスの多くにアクセスができないようになっている。Google検索やYouTube、Twitterといったサービスが締め出され、国内企業に同様のサービスを提供させているのだ。

 しかし、そんな中国ローカル企業が世界的IT企業に引けをとらないものを提供できているのには理由がある。それが中国に住む14億人もの人口である。この巨大市場は、中国の力の源だ。そして、これほどの人々が暮らす広大なエリアをなぜ統一できているのか。その答えが初の統一帝国・秦にあるという。そう、信と嬴政が生きる国家だ。

 秦では「法家」という思想が採用され、それによって統一国家が保たれた。血で血を洗うような戦乱の世に、「法」という概念をもたらす。これは『キングダム』第45巻で、嬴政が宣言した「“法”に民を治めさせる」というセリフからもわかる。彼の誓いは現実のものとなり、現代まで続いているのだ。

 本書ではこの他にも、中華統一のカギを握る「戦神」たちについても語られている。なかでも、嬴政のライバルとも言える存在・李牧。幾度も秦を苦しめた李牧は、史実ではどんな人物だったのか。『キングダム』ファンならば、実に気になるところではないだろうか。

 中国の歴史を人気マンガ『キングダム』とともに読み解くという、ユニークな試みがなされている本書。もはや、決して無視はできない隣の国を理解するために、まさに教科書になる1冊だ。

文=五十嵐 大