日常的に付き合う「歯科衛生士」が健康や社会問題を解決する!? 歯科のパラダイムシフトをわかりやすく解説

健康・美容

2019/6/21

『予防歯科シフト 人生も社会も変える口腔ケアのすごい力』(中山豊/幻冬舎)

 平成から令和へと時代が移り変わるなかで、「働き方改革」や「人づくり革命」などが叫ばれ、仕事のあり方や働く人を取り巻く環境もドラスティックに変わりつつある。専門性の高い、歯科医師や歯科衛生士という仕事も例外ではない。そんなことを教えてくれるのが『予防歯科シフト 人生も社会も変える口腔ケアのすごい力』(中山豊/幻冬舎)だ。

 著者は、歯科医師・歯科衛生士専門の求人情報誌や求人サイトを運営する中山豊氏。歯科医療の専門家ではなく、人材ビジネスという視点から歯科医療市場を客観的にとらえ、現在、歯科医院がどのような環境に置かれていて、これからどのように変化していくのかを大胆に予想している。その予想は歯科業界で働く人ばかりでなく、歯科医院を利用する私たちにとっても有益な情報に富んでいる。早速その一部を紹介していこう。

■歯科医院は治療の場から予防(ケア)の場へ

「歯科医院の数は、コンビニの数よりも多い」
 このフレーズは、東京をはじめとする都市部に住む人なら、比較的よく聞くものではないだろうか。本書では問題提起の部分で、歯科医院とコンビニの数を具体的に検証している。

“歯科医院の数は、厚生労働省の医療施設動態調査を参照すると6万8544軒(2018年12月末概数)一方のコンビニは、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会のデータによると5万5743軒(2018年12月末時点)です”

 このデータが示すとおり、歯科医院の数はコンビニよりも多い。そして、その変移をみると、1993年の歯科医院の数は5万5906軒なので、この25年間で1万軒以上も歯科医院の数が増えたことになる。

 では、歯科医院に通う人の数は、どう変化しているのだろうか?

“文部科学省が公開している学校保健統計調査によると、1985年の12歳児の虫歯の数は、平均4.63本でした。しかし、2018年の同調査では、0.74本となっています”

 もちろん虫歯になるのは子供だけではないが、この変化は歯科医院に通う必要のある人の数が、この20~30年の間に急激に減少していることを示唆している。その背景にあるのは、虫歯予防や歯周病予防など、口腔ケアに対する人々の意識の高まりだといって間違いないだろう。

 歯科医院を取り巻くこうした環境の変化は、歯科医院で行われる医療のあり方そのものを変えていく。昭和からこれまで連綿と続いてきた歯科医療は、「虫歯を削って、埋める」といった「治療」行為だった。だが前出の数字が示すように虫歯患者の数が減ってきた現在進行しているのは、虫歯や歯周病を予防し、口腔内の健康を保つ「予防歯科」へのシフトなのだという。

 著者はそれを「キュア(治療)」から「ケア(予防)」へのパラダイムシフトだといい、それを確実に推進するために歯科衛生士が大きな役割を担うと指摘している。

■口腔内を健康に保つと、誤嚥性肺炎や動脈硬化を予防できる!?

 予防歯科とは、「口腔を健康に保つための専門的なケアと助言」を歯科医院で受けることだ。痛くなったから歯科医院に行くという考え方とはまったく異なるものだが、個人でできるケアに加えて、3カ月おきに歯科医院で専門家によるケアを受けることで、虫歯や歯周病のリスクはグッと低くなる。

 そればかりではなく、口腔を健康に保つことは、全身を健康に保つことにもつながっていくという。なぜなら、今、歯周病と関連が疑われる疾患として、誤嚥性肺炎、動脈硬化、糖尿病、腎臓疾患、骨粗鬆症、関節炎、メタボリックシンドロームなどがあるとされているからだ。歯周病を予防することで、これらの疾患にかかる可能性を減らすことができれば、豊かな人生の実現に大きく貢献し、末長く健康でいるための一助になることは想像しやすいのではないだろうか。

 これに加え、予防歯科が広まることによって、今、国にとって大きな課題である「年間医療費の抑制」と「新たな労働力の獲得」もうながすことができるという。その詳細はぜひ本書で確かめていただきたいが、個人の健康を保つのに大きな効果があり、国の財源にとってもよい効果が期待できる「予防歯科」を、私たちが日々の生活に取り入れてみる価値は充分にあるといえるだろう。

 歯医者というと、その響きだけで思わず毛嫌いしてしまう人もいるかもしれない。しかし、時代はいま確実に「予防歯科」へとシフトしていることが、本書を読むことで理解できる。自身とプロによる予防歯科を実践し、健康かつ豊かな毎日を暮らしてみてはいかがだろうか?

文=井上淳