一晩限りの恋人は、兄嫁でした――。浪人生と人妻が織りなす、インモラルなエロラブコメが開幕

マンガ

更新日:2019/7/13

『月に溺れるかぐや姫~あなたのもとへ還る前に~』(北崎拓/小学館)

 毎日夜6時から翌朝6時まで閲覧できる“インモラル”をテーマにした作品が集まる『夜サンデー』に、日本一の大学を目指す少年と、きれいでちょっとエッチなお姉さんが織りなすエロコメマンガが登場した。それが『月に溺れるかぐや姫~あなたのもとへ還る前に~』(北崎拓/小学館)だ。独特の色気を醸し出す筆遣いで知られる作者・北崎拓さんは、折に触れて「生粋の人妻好き」「人妻ものですごいエロマンガネタを思いついた」と吐露していた。本作は、作者ならびにファン待望の「人妻」をテーマにした作品だ。

 東大受験に失敗した高校3年生・月丘輝(つきおか・あきら)が、卒業旅行で訪れた京都で人妻の香夜(かよ)と出会うところから物語は始まる。互いの名前も明かさないまま、一夜限りの恋人で終わるはずだったふたりだが、帰京後、香夜は輝の兄の妻であることが発覚する。

 設定からしてドロドロの不倫ものになりそうだが、京都での一夜以外、エロシーンはすべてふたりの妄想で展開される。東大を目指す輝と東大卒の香夜。偏差値の高いふたりであるが故、ともすればギャグにもなりそうな妄想だが、恋慕や欲情などの切なさも等しく描かれているのはさすがである。

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 本作の魅力は何といっても魅惑の人妻・香夜だ。困り眉にたれ目、抱き寄せれば折れそうな華奢な体。屈託のない笑顔とは裏腹に思い悩む夫との不和や新しい家庭環境への不安。そんな事情を秘めた表情にすら色気を感じてしまう。年上でありながら危うさを感じさせる行動からも目が離せない。

 輝の兄であり香夜の夫である八雲の性格がこれまたひどい。学歴至上主義、世界の中心は自分だと言わんばかりに生きているような男である。賢明な香夜がなぜ八雲と結婚したのだろうと疑問にさえ思う。これまでの人生、すべて正しく判断し何も間違ってこなかったという香夜。しかし、これから先を「正しく」生きるために「決定的な間違い」を必要としたのだろう。

“これは「間違いでした」ってことをしてみないと、私はこれから先、正しく生きていける自信が――ない――”

 香夜にここまで言わせてしまう八雲は、1巻では回想シーンのみの登場で、表情や風貌は謎なままである。2巻で顔を見られるのだろうか。波瀾万丈な浪人生生活をスタートさせた輝は来春無事に東大合格となるのだろうか。ふたりの妄想エロシーンにムズキュンし、切ない恋物語に胸キュンする。次巻以降の展開が今から楽しみである。

文=水本このむ