赤字経営のサンリオピューロランドに奇跡を起こした元専業主婦の人材育成術

ビジネス

2019/9/3

『来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり』(小巻亜矢/ダイヤモンド社)

 ハローキティやシナモロール、ポムポムプリンなど、国内だけでなく海外にも熱狂的ファンを持つ人気キャラクターで世界にKAWAIIブームを巻き起こしたサンリオ。しかし、近年の不況の影響で東京都多摩市にあるテーマパーク・サンリオピューロランドは赤字経営に陥っていた。その経営を2年で黒字に再建した女性館長がいる。彼女が行ったのは設備投資やリストラではなく、「みんななかよく」を掲げた人材育成だった。

『来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり』(小巻亜矢/ダイヤモンド社)には、度重なる不幸や大病を患いながらも51歳で東京大学大学院に入学し、専業主婦からサンリオピューロランドの館長となった小巻亜矢さんが、如何にして廃園寸前の経営難を脱却したのかが描かれている。

 もともと結婚前はサンリオの社員だった小巻さんだが、久しぶりに遊びに訪れたサンリオピューロランドの実状に愕然とした。どこか暗く、スタッフに笑顔はなく、統一感がなく、レストランのメニューもパッとしない。すぐに問題点をまとめてサンリオの辻社長にレポートを送った。すると「君がやってみないか」と、顧問に大抜擢される。そこからが小巻さんの挑戦の始まりだった。

■社員の本音を引き出す「対話的自己論」

 スタッフはサンリオが好きで入社してきた人ばかり。やる気がないわけがない。経営が低迷した根本的な問題は社員のコミュニケーション不足だと気づいた。まずは全社員と面談を行い。仕事への思いや本音を聞き出した。実は小巻さんの専門は経営学などではなく、教育学。とくに「対話的自己論」と呼ぶ、自分の内なる声との向き合い方を模索する学問だ。面談でも「本当の自分だったらどうしたいですか?」と問いかけ社員の積極性を引き出した。自分の得意分野に問題を引き込んで解決する点がユニークだ。

■「やさしい話し方」と「あたたかな聴き方」

 加えてスタッフと話すときに注意したのが、「やさしい話し方」と「あたたかな聴き方」だ。「ゆっくり、わかりやすく」「相手の話を遮らない」「感謝の気持ちで話す」など、話を否定せずに聞く姿勢を心がけることで、次第にスタッフたちも活発に意見や提案を言うようになり、社内の雰囲気は少しずつ変わっていった。心の余裕が皆に笑顔を取り戻した。

■「部署横断型会議」

 続いて演出の統一にも着手した。以前は、例えばショーのメインカラーはオレンジ、限定グッズはピンクとバラバラで、レストランのメニューにも連動性を感じなかった。これはグッズを手掛ける販売部、イベントを展開する企画部、そして営業部や運営部などの連携が足りないせいだった。そこで部署ごとの代表者が集まって企画を話し合う「コンセプト会議」を導入した。部署の垣根を越えて一緒に議論することで、お互いが他の部署の仕事を理解することにも繋がった。

 その他にも、お金をかけない策を次々と打ち出すことで、サンリオピューロランドの経営はだんだん上向きはじめ、2年で来客者数4倍という快挙を成し遂げた。小巻さんのモットーは「みんななかよく」。これはサンリオの企業理念で、若き頃にサンリオから学んだことだった。

 どんな大企業でも経営が傾くと人材教育はおざなりになりがちだ。だが人材なくして会社は成り立たない。会社は人を育てる場所という小巻さんの人材育成こそが、会社経営のあるべき姿なのかもしれない。

文=愛咲優詩