近い将来、音楽やダンスの教室は失われる!? 著作権問題をマンガで解説!

マンガ・アニメ

2019/9/2

『音楽を取りもどせ! コミック版 ユーザー vs JASRAC』(城所岩生:著、山口クミコ:イラスト/みらいパブリッシング)

「何もそこまでしなくても…」

 筆者をはじめ、多くの人が同じ感想を抱いただろう。2019年7月、一部メディアが日本音楽著作権協会(JASRAC)の「潜入捜査」を報道したのだ。約2年間にわたり、JASRAC職員が身分を隠し、ヤマハ音楽教室に通って楽曲の利用実態を調査していたという。確かに、楽曲の著作権は守られなければいけない。しかし、音楽教室で先生が生徒にお手本を演奏することすらも許されないのは、あまりにも杓子定規な価値観ではないだろうか。

『音楽を取りもどせ! コミック版 ユーザー vs JASRAC』(城所岩生:著、山口クミコ:漫画/みらいパブリッシング)は、国際IT弁護士として著作権に関する法律を研究してきた著者の新刊である。厳密になりすぎた著作権のもたらす弊害が、マンガとコラムでわかりやすく解説されている。少しでも問題に関心のある人が入門書とするにはぴったりだ。

 マンガの主人公・カナはダンスが大好きな中学2年生だ。毎日のように友達と河川敷でダンスの練習に明け暮れている。ある日、憧れのダンスユニットのMVをコピーして、動画サイトに投稿したいと話すカナに、先輩はこう言った。

これさ、アーティストのCDかダウンロードした曲使ってるでしょ 無許可でアップしたら違法だよ?

 これまで、ただダンスが好きなだけだったカナたちは、初めて「著作権」を意識させられた。その後、自主的にダンスイベントを企画しようとするカナたちに、著作権問題は容赦なく降りかかるのだった。

 勘違いしてはいけないのが、著作権そのものはアーティストの利益のために保護されるべきだということである。しかし、著作権の定義が拡大解釈され、これまで使用料を支払わなくても許されていた場所も請求されるようになったことが問題なのだ。たとえば、著作権料は「お金をもらって公衆に音楽を演奏するとき発生する」お金である。ライブやコンサートなどはわかりやすい。しかし、JASRACは音楽教室の生徒も公衆にあたるとし、生徒がたった1人の教室でも著作権料を支払わなければいけないと主張し始めたのである。先生が生徒という公衆に演奏をしているから、というわけだ。

 こうした流れを文字だけで読んでもピンとこないかもしれない。しかし、青春をダンスに懸けるカナたちのリアクションをマンガで読むことで、著作権問題の危険性が見えてくる。

音楽はもっと気軽に習えるものだといいなぁ

 そう、音楽教室が請求された著作権料を支払えば、どんな楽曲でもレッスンに使えるようにはなる。ただ、当然経費は増えるので、レッスン料は上がる。そうなると、教室に通うハードルは高くなり、純粋に歌やダンス、演奏が好きな子どもたちが音楽をあきらめざるをえなくなるケースも出てくるのだ。一方、著作権の切れた音楽であれば、どれだけ演奏しても自由である。しかし、現代を生きる子どもたちが思い入れのない懐メロしか演奏できないのに、教室に通ってまで音楽を勉強したがるだろうか?

 そのほか、バレエ教室などの発表会で赤字が出る原因、飲食店などでヒット曲を流しにくくなった理由など、カナたちは音楽をとりまく現実を知っていく。それでも、ダンスイベント実現に向けて走り続ける彼女たちを、読者は自然と応援してしまうはずだ。

 マンガと交互に登場するコラムでは、著作権問題をさらに詳しく、事例を挙げながら追求していく。そこでは、爆風スランプのファンキー末吉さんが、経営するライブハウスでの楽曲使用料を支払わずにJASRACと争った事件なども紹介されている。「著作権者に適切な著作権料が支払われているかわからない」という、ファンキー末吉さんの支払い拒否をする理由は、決して的外れではない。カナたちのように、音楽の道を志す少年少女にどんな未来を残せるのか。著作権問題は現代を生きる大人たちで考えていくべきだろう。

文=石塚就一