「この子のせいで、私は不幸だ」と絶対に思わない――子どもを不幸にしないで。 わが子の障がいとの向き合い方

出産・子育て

2019/9/2

『障がいのある子を育てるのが楽になる本 お母さんの不安と悩みが解消』(川岸恵子/現代書林)

 わが子に障がいがあると知り、戸惑わない親はいないでしょう。障がいの重い・軽いにかかわらず消えることのないわだかまりを心に感じるかもしれません。でも、それも永遠ではありません。障がい児を持ったことをどうか「悲しみ」ととらえないでください。ある先輩ママはこのように言っています。

「人として生きるために大切なことは、すべて彼から学んだ」

 この言葉を教えてくれたのは、川岸恵子さん。「彼」とは、22歳で授かった長男のこと。わが子が重篤な障がいを持ち悩み苦しんだ経験を持っています。しかし今では、児童発達支援センターなど合計28の施設を運営する「特定非営利活動法人あかり」の代表理事を務めるなど、前向きに障がいと向き合っているのです。

 川岸さんは子どもを出産するまで、障がい者と縁のない生活を送っていました。難産の末、生まれた長男は、知的・視覚・聴覚など全身のいたるところに不自由を抱えていました。しかも生後4カ月まで、医療機関は障がいの可能性を見落としていました。川岸さんは、子どもの障がいを知ったとき、医療機関へ不信感を抱くと同時に、子どもの異変に気がつかなかった自分を責めたそうです。

 障害が発覚したあと、手術を行ったり、頻繁に病気を患ったりと長男の対応に忙しい日々の中で、「この子と一緒に歩もう」という覚悟が出てきたと言います。

 わが子の障がいの受容、この苦しい経験を今まさに悩んでいるお母さん・お父さんたちとシェアしたい本があります。『障がいのある子を育てるのが楽になる本 お母さんの不安と悩みが解消』(川岸恵子/現代書林)です。2011年に出版された初版の改定版となるこの本の中から、「わが子の障がい」との向き合い方について少しご紹介しましょう。

■障がいなんて、命の重さより小さなこと

 まず悲しんでいるあなた、その考え方をリフレーミングしましょう。障がいがあること、障がい児を授かること、イコール「不幸」ではありません。他の人とは少し違った人生になるかもしれません。ですが人として生きるために「大切なことを学べる」人生になります。このように川岸さんは、ニュートラルに考えるよう言います。

 川岸さんの息子は、いつもニコニコ笑顔を絶やさない子でした。その笑顔がいろんな人と出会わせてくれたそうです。この「人のつながり」から生き方が大きく変わりました。

 地域の人々に障がいの認知を促すために、特別支援学校のPTA会長を買って出る。また定型児である次男の中学校のPTA会長も務めます。さらに地域の福祉ステーションとして「珈琲豆焙煎屋ポアポア」を地元の埼玉県久喜市に開店するまでになりました。

 けれど運命は残酷なものです。川岸さんの活動が順調に進んだ矢先、長男は23歳という若さで、くも膜下出血で天へ召されてしまいました。そこで、気がついたのは次のことです。

「障がいなんて命の重さから考えたらほんの些細なこと」
「『生きている』その素晴らしさをもっと感じてほしい」

 長男を亡くした川岸さんは、体の一部を失ったような喪失感に襲われたそうです。手塩に掛けた福祉関連の活動をすべて手放すことを考えるほどに落ち込みました。

 目の前のわが子が「生きている」。それだけで奇跡のようなことなのです。

■その考えが子どもを不幸にする

 川岸さんは自身の経験から、わが子と出会えたこと、それだけでも奇跡であると教えてくれます。だからこそ「この子のせいで、私は不幸だ」と絶対に思わない。そう訴えます。なぜならこの考えは子どもを追い詰めるからです。

「自分が生まれたために親を不幸にしたと思ったなら、子どもは何よりもつらくて、自分を消してしまいたくなってしまいます」

 障がいは、本人の努力で改善することや我慢して克服できるものではありません。すぐにとは言いませんが、障がいも含めて「すべて」を受け入れることが必要です。「なぜ自分だけがこんなことになるのか」とか、子どもを何とか「健常児に追いつかせよう」とか、目の前の現実を受け入れることができない間は、苦しみが続きます。

 障がいは、その子のすべてではありません。障がいの名前もその子を表すものではありません。障がいがあるために絶対にできないこともあるかもしれませんが、日々の生活の中で克服できることもあります。「障がいがあっても、幸せに生き切る」これが目標だと川岸さんは言います。

 いったん受け入れることができたら、目の前にある喜びに気付くことができるでしょう。

■みんなに子どもの障がいをオープンにしよう

 しかし「受け入れる」とは、なんとも抽象的で難しいことです。何をもって「受け入れる」とするのか。そこも川岸さんはアドバイスを送ります。

 1つは、「障がいをよく知る」こと。親は、子どもがどんな困難を抱えているのかを知ることが大切です。

 例えば、発達障害の子ども。より五感が鋭敏であったり、逆に鈍感であったりします。自分の子どもは何に過敏であるのか、そして何が「できない」のか。発達障害などの子どもが抱える具体的な事例が著書では紹介されています。その子の特性を知ること。健常児との違いを知ること。そこからすべての支援がはじまるのです。

 もう1つの「受容」の大事な儀式は、誰にでも「障がいをオープンに話す」こと。

 周囲のみんなに話して知ってもらいましょう。子どものことを隠したりごまかしたりすることは、子どもを認めていないことと同じです。人は皆やさしいと川岸さんは言います。隠せば知らない振りをしてくれますし、ごまかせばかかわらないようにしてくれます。

 でも子どもの状態を話しておけば、困ったとき助けてもくれますし、協力者を増やしておくことにもなるのです。

 障がいのある子どもは健常の子とは異なる成長過程をたどりますが、成長とともに少しずつ克服できることもたくさんあります。それが喜びに変わることもあります。

 本書には、障がい児の「成長」について誤解しがちなこと、また地域とのつながり方なども紹介されています。親の気持ちに寄り添い、子どもと歩む人生の手助けとなることでしょう。

文=武藤徉子