スマートフォンの中には格差が隠れている! SNSで棲み分ける現代女性たち

社会

2019/9/26

『露出する女子、覗き見る女子 (ちくま新書)』(三浦展、天笠邦一/筑摩書房)

 ツイッターやインスタグラム、フェイスブックなど、スマートフォンをタップするだけで多様なSNSにアクセスすることができる。写真をアップしたり、情報を検索したりとSNSの使い方は人によってさまざまだが、どのメディアも私たちの生活に大きな影響を与えている。

 そんな現代はスマートフォンの中に、外からは分からない多様性や格差が広がっているという。『露出する女子、覗き見る女子 (ちくま新書)』(三浦展、天笠邦一/筑摩書房)は、SNSの使い方から現代女性の価値観や生活満足度の違い、階層格差などを調査した興味深い1冊だ。

■居心地いい場所をつくる。SNSで棲み分ける現代女性たち

 デジタルネイティブな現代の女性たちにとっては、“今ここ”に縛られる現実よりも、ネット世界のほうが広大で有益に感じられやすい。彼女たちは自己像や求めるニーズに合わせ、利用するSNSを自然に選択し、棲み分けを行っている、と本書はいう。

 例えば、中高年のSNSという印象が強くなった感もあるフェイスブックの利用者は、実名利用前提ということもあってか、結婚の有無に関係なく高収入の人が多く、いわゆるバリキャリ女性向けの上流SNSだという。自らのステータスや持っているつながりを他者に伝えやすいメディアでもある。

 対して、ツイッターは経済的に不安定な環境にある未婚女性の利用率が高い反面、個人年収が高い既婚者の利用も多いというおもしろい特徴を持つ。その理由は、ツイッターがLINEやインスタグラム、フェイスブックといったメディアより優れた情報流通能力を持っているからだという。

 ツイッターは友人から届いた情報を他の友人に転送する「リツイート」や検索など、情報を発信・受信する機能が充実している。一方で、フェイスブックのように持っているつながりやステータスを伝える力が弱い。そのため、社会的ステータスを持っていなくても結婚などで社会的ステータスが固定されていても純粋に情報を求めることができるのだ。

 そして、近年、人気になっているインスタグラムは数あるSNSの中で、最もユニークなメディア。インスタグラムは都会の人ほど利用率が高い都市派のSNS。仲間や友人とのつながりをアピールできるだけでなく、人脈から切り離されたモノや食べ物の消費も伝えられるのが特徴。ステータスの発信と情報流通の両方が叶うハイブリッドなメディアだ。

 こうした違いを持つ各メディアを、コミュニティの開き方や流通している情報内容を踏まえて分類すると、現代女性は大まかにいって4つのタイプ別にSNSで棲み分けていることが分かるという。

 本書では、より特徴的なSNS機能の利用にフォーカスを当てながら、4タイプの女性の行動や価値観、人間関係を深掘りしている。

 おじさん的正しさを獲得して消費する「フェイスブック女子」や“今”を露出しながら正解を作る「インスタ女子」、ここではないどこかを求めて情報を探す「検索女子」、幸せを覗き見て幸せに備える「閲覧女子」など、調査結果をもとに独自の視点でひもとかれた現代女性の生き方には考えさせられるものがある。

 自分の思考や価値観に合ったSNSを無意識に選び、棲み分ける女性たち。彼女らはSNSを通して他者の中に自分を映し出すことで、「これでいいんだ」という小さな正解を見つけ、人生を歩んでいるのかもしれない。

 現代はファストファッションが主流となり、見た目から若者の思考や価値観、階層などを判断することが難しい。ヤマンバのようなギャルメイクが流行った頃とは違い、多くの人は似たような髪型やファッションに身を包んでいる。だが、日頃、利用しているSNSや活用法に目を向けると見えない多様性が明らかに。格差が拡大する中で現代女性がどんな意識や目標を持ちながら生きているのかを知ることができるのだ。

 ぜひ女性の心境にも目を向けながら、現代社会の問題を考えるきっかけを本書で得てみてほしい。

文=古川諭香