多くの凄惨な未解決殺人事件の実行犯は、“雇われ外国人”――彼らを生み出す裏事情とは?

社会

2019/10/30

『外国人ヒットマン』(一橋文哉/KADOKAWA)

 漫画の海賊版サイトを運営した男がフィリピンで逮捕されたり、タイに拠点をおく振り込め詐欺集団が逮捕されたり、ここのところアジア各国を舞台にした逮捕劇が以前より頻繁に目につくようになった。犯罪者が「法の及ばない海外に高飛びする」という話は以前から耳にするが、こと近年の犯罪の多くは何かしら海外が絡んでいることが多くなっているようだ。

 実は犯人が見つからないまま捜査が暗礁に乗り上げてしまう「未解決事件」の背後にも、同じように外国の陰が見え隠れするという。数々の未解決事件を追ってきたジャーナリストによる新刊『外国人ヒットマン』(一橋文哉/KADOKAWA)によれば、恐ろしいことに中でも凄惨な殺人事件においては、実行犯そのものが外国人で、しかも依頼された殺人を実行するためだけに来日し、犯行後は即座に出国して姿を消すというプロの殺し屋(=ヒットマン)の可能性が大きいというのだ。

 たとえば、高校生ら女性従業員3人を射殺した「八王子スーパー強盗殺人事件」(1995年)、犯人が子供を含む一家4人を惨殺した後に、風呂に入ったり食事をしたりして逃走した「世田谷一家惨殺事件」(2000年)、至近距離から4発の銃弾を浴びせた「〈王将〉社長射殺事件」(2013年)――その犯行の残忍さが印象に残るこれらの未解決事件を記憶している方も多いと思う。なんと本書によれば、これらの事件の実行犯も外国人ヒットマンだというのだ。実際に著者はほぼ実行犯と思われる人物に肉迫しており、彼らの無慈悲な恐ろしさの一端をリアルに伝える。真相は是非とも本で確かめてほしいところだが、こんな「プロ」に一般人が殺されてしまうとしたら実に恐ろしい。

 著者はそうした実行犯の足取りを追って、台湾、香港、韓国、フィリピン、カンボジアといったアジアの近隣国に潜入。そこから見えてくるのは各国の政治・経済の動向に乗じてじわじわと勢力を拡大し、国際的に連携する裏社会の闇だ。暴対法(暴力団対策法)で活動が制限されている日本の暴力団組織も海外に積極的に拠点を築き、さらに関係は緊密に。誰かが殺人の依頼を持ちかければ海外からヒットマンが来日し、仕事(殺し)を終えたら複数の国を経由して足取りを消して完了――そんな一連の流れが出来上がっているという。もちろん日本の警察も手をこまねいているわけではなく、捜査員を近隣諸国に派遣して内偵調査を進めているものの、アジア各国に広がる裏社会の闇は深く、手がかりがまるごと消えてしまうことも少なくない。

 本書によれば、日本で仕事をする外国人ヒットマンの多くは日本人と顔形の見分けがつきにくいアジア諸国出身者とのこと。身近な風景に入り込んでいても違和感がないということは、自分の周りにそんな物騒な存在が潜んでいても気がつけないということだ。実際、著者は日本に迫る脅威として「外国人ヒットマンの存在を白日の下に晒す」ことを第一に、早急に本書をまとめたと語る。正直、凡人には縁がない世界と思いたいところだが、やはりゾクリとする。本書はまさに無防備な社会に鳴り響く不穏なアラームだ。

文=荒井理恵