『バチェラー・ジャパン』史上最速の破局! 番組を壊した友永氏は、何がしたかったのか?【ネタバレあり】

エンタメ

2019/10/31

『バチェラー・ジャパン』シーズン3最終回は、視聴者にとっては思ってもみない方向性での裏切りをもたらした回となった。

 バチェラーである友永真也さんが、最後のローズセレモニーでローズを渡した水田あゆみさんを1ヶ月でフって、最後の最後まで迷っていた岩間恵さんに交際を申し込んだ、というのだ。そして、いまお二人は付き合っている。

 結果として言えることは、今回「バチェラー・ジャパン」という番組を、バチェラー自身が壊したということである。

「最後のローズを渡した女性との結婚」を賭けたバトルのはずが、彼だけは「知ったこっちゃない」とルール無視してローズを撤回。彼自身は「真剣に考えたからこそだ」と言いそうだが、彼が真剣に立ち向かったのは自分の欲望に対してであり、バチェラーという立場ではない。

 最初はSNSやレビューなどでも「最高のバチェラー」と呼び声高い友永さんだったが、今となっては賛否両論。それも仕方ない。というか、わりと最初の方から彼の難ありな人間性はチラホラ見えていたところがあったし、冷静になって振り返れば、ありえた展開だったなとも思えてしまう。

 ただ、ひとつ言えるのは、彼の今回の決断は皮肉にも「もう破局報告は聞きたくない」という我々の不信感に対するひとつのアンサーにもなっている、ということである。

 なぜ、そう思うのか。恋愛リアリティ番組の構造や、その中における「バチェラー・ジャパン」の立ち位置と歪さ、そして友永氏が他のバチェラーと違う点などを振り返りながら考えたい。

■恋愛リアリティにおける「リアル」とは

 そもそも「恋愛リアリティ番組」というコンテンツの構造自体が、なかなか歪なものである。

 一視聴者は決してその裏側を知り得ないので、果たしてそれがどこまでリアルで、どこまでが作られたものなのか、論ずることは不可能だ。たとえ参加者にどれだけ同情せざるを得ない出来事が起こっていても、映らなければなかったことになってしまう世界である。

「あいのり」や「テラスハウス」そして「バチェラー・ジャパン」でもまた、度々「台本がない」という言葉でそのリアリティを表現しようとするが、台本がないからリアルな世界が映し出されるという意味ではない。ここでいうリアルというのは、「台本がないまま舞台に上がり即興で演じる役者たち」程度のニュアンスが正しい

「あいのり」であれば「世界旅行で共に乗るピンクワゴン」、「テラスハウス」であれば「一つ屋根の下で暮らす生活」。

 その舞台上でどのように立ち振る舞うか、そこに参加者の責任が生じてくる。当然モラルのない行動をすれば叩かれるし、素敵な恋をすれば盛り上がる。たまにテラスハウスで、特に何もイベントを巻き起こさずにサッと卒業する人に対して「売名だ」と叩かれる場面があるが、それは舞台上で何一つ責任を果たしていない人たちへの非難として成立してしまっている(テラスハウスは、決して恋愛だけが目的とした建前ではないが)。

 逆に言えば、その舞台から下りてしまえば、彼らがどう振る舞おうと番組に対する責任はない。たとえそこで成立したカップルが別れてしまっても(多々ある)、彼らが謝罪をする必要はないのだ。舞台上ではとても素晴らしい「リアリティのあるやり取り」を視聴者に提供したわけだから。

■「バチェラー・ジャパン」の異質さ

 しかし、「バチェラー・ジャパン」はその点で異質である。「社会的に成功している容姿端麗な男性との”結婚”を巡って数多の女性が競い合う」という前提のもと成り立っているため、当然のように彼らは番組後の動向まで注視されることになる。そもそも番組のルールは「結婚を前提に付き合う」であり、契約関係を結ぶことは絶対ではないが、当然視聴者の期待感は生まれる。結果として、彼らは舞台を下りたあとも、結婚という契約関係を結ばない限りこの番組における責務を果たせていないように見えてしまう構造になってしまっているのだ。

 それを前提にしているとは言うものの、たった数ヶ月の間に初対面同士で「結婚」を納得できるほどの関係性を作り上げないといけない、というのはなかなか難儀な設定だ。

「だからこそ、男女ともにガチのぶつかり合いが見れるんだ」

 そう思う人も多いだろう。私もそう思って最初は見ていたが、シーズン1、シーズン2、と2回を経て、だんだんと気づくのである。

どうやら、結婚までいくのは難しそうだ

 シーズン1では久保裕丈さんと蒼川愛さんの破局、シーズン2では小柳津林太郎さんと倉田茉美さんの破局、いずれも次のシーズンが始まるぞ、というところでの報告が続いた。

 どれだけ熾烈な争いを経て、ドラマチックなローズセレモニーと熱いキスを交わしても、一年足らずで別れてしまうのである。観ている側からすれば、観るモチベーションをどこに保てばいいのかわからくなる。リアリティ番組というより、もはや設定劇である

 そして、追い打ちをかけるような「人間むきだし」という(他番組を彷彿とさせる)PRが目に止めるようになったのが、シーズン3が始まる直前、今年の8月頃の話である。「今までの何がむき出しだったのか?」と思った人は私だけじゃないだろう。

 しかし皮肉にも、今回のシーズン3は、人間、というかバチェラーの人間性がむき出しになったという点でその言葉は確かであった。

■友永さんは今までのバチェラーと何が違ったのか?

 今回、最終回が衝撃的だったのは確かなのだが、友永氏が今までのバチェラーとして違う点は他にもいくつかある。たとえば、その本気度を表明するためオーダーメイドの指輪を自ら用意したこと。

 また、第7話のカクテルパーティで弱音を吐き試すようなことを言った中川友里さんに対して「ローズを渡されへん」と宣言したこと。基本、女性に対する結果はローズセレモニーで伝えることが原則である。この時点ですでに友永さんは「バチェラージャパン」という番組の構造を少しずつ壊し始めていた

 そして特筆すべき点は、ファーストローズ(第一話、初対面のカクテルパーティで最初に特別に渡されるローズ)を渡した相手を最後の最後まで残したこと。

 ファーストローズを渡した相手は、途中で脱落することが今までのシーズンのジンクスになっていた。シーズン1でいえば、鶴愛華さん。シーズン2でいえば、岡田茉里乃さん。最初のカクテルパーティとなると、判断基準は自己紹介時の第一印象と限られた時間での少ない会話程度である。バチェラーに限った話ではないが、第一印象がよすぎることはその後のちょっとしたボロで一気に減点されてしまいやすくなる、というリスクもある。

 ファーストローズについては、一歩リードというよりは、ハンデを抱えてスタートした、という方が正しい見方だろう。

 ファーストローズを渡された相手が途中で脱落してしまうことは、なんら不自然ではない。

 しかし、今回シーズン3では、ファーストローズをもらった岩間さんが最後まで残り続けた。序盤は特に目立った出来事もなく、2人きりのデートや会話もあまりないまま、彼女は当然のように残り続ける

 これはシーズン1と似たような流れである。女性の中でも特に容姿の美しい女性が、他の女性が試行錯誤してバチェラーの気を引こうとする中、ストレートのグーパンチで勝ち進んでいくあの流れ。シーズン1も終わってみれば、久保さんは最初から蒼川さんがタイプだったことは明らかで、「好みの容姿」に小手先の技術は歯が立たないのだ、という残酷なひとつの事実を突きつけてきたのだった。

 シーズン3も、「とにかく強い女が好きだ」と言い続けてきた友永さんは、しかし最も容姿も性格も理想的であるはずの野原遥さんを最後まで残すことはなかった。彼女が彼のタイプだったかどうかは知らないが、とにかく岩間さんとは対極といっていいほど違う女性なので、彼にとって、口先の理想と、現実のタイプには大きな隔たりがあったのだろう

 また、野原さんが脱落した9話は、友永さんの人間性が最も露骨に出た場面としても記憶している。

 3人の女性に会った後の家族に、誰がよかったか聞いた彼は、全員が口を揃えて「水田さん」というのに対して、突如烈火のごとくキレ始める。自分から聞いておいて「女性を比べるなんておかしい」というおかしなことを語り始め、最後「俺は恵さんがいいと思っているのに!」である。

 彼は最初から最後まで、岩間恵さんがいいと思っていた、ただそれだけである

■岩間恵さんと付き合うための最適解が番組の破壊だった

 では、それがなぜ、こんなにもこじれたのか。

 それは最後に岩間恵さんがゴネ始めたからである。というより、最初から岩間さんを好きで、「好きになってほしい」という告白までしていた友永さんだが、バチェラーとしての驕りがあったのだろう。当然岩間さんは自分のことを好きだと思っていたのだろう。だから、特別なデートなんて用意せず、ただ最後にローズを渡すだけで満足していた。

 しかし、彼女にとっては、最初にローズを渡されてデートをしたあとは、すっかり放置。いわゆる「釣った魚に餌をやらない」男に思えてきても仕方がない。油断をしている友永さんに対する、苛立ちもあるだろう。おまけにどうやら、彼女が異性との相性として大事にしている食の好みも合わないようだ。

 信頼関係を深めるよりもまず、不安ばかりを育んでしまっていた彼女は、最終話、彼に対して本音を打ち明ける。「人としても好きだし、一緒にいる時間も好き。なんだけど、これって恋愛感情なのかなって思うと、ちょっと違和感がある」と。事実上、友永さんはフラれたのだった。

 これはシーズン1でも同様のことがあった。久保さんが当然のようにローズを受け取ってもらえると思ったら、その場で辞退されたことがあったのだ。バチェラーは、単に選ぶことができる最大の権力者ではない。彼らもまた選ばれる立場にある

 最後のローズセレモニー。フラれる覚悟があっても、岩間さんにローズを渡す、という選択肢もあっただろう。また、セレモニー前の彼女の心の内を聞く限り、渡されたら辞退することはなさそうだった。しかし、彼は渡さなかった。

 その理由については一視聴者の立場ではわからない。しかし、その彼の選択こそが、この番組において、最も好きな女性である岩間恵さんと結ばれる可能性の高いことだったというのは否めない。

 覚悟ができていない恵さんにローズを渡しても、結局いままでのバチェラー同様、実生活までの関係性を築くのはかなり難しかったかもしれないからだ。

 しかし、彼は舞台を下りたあと、バチェラーという立場を一切合切捨て、その上で本当に求める相手のもとに向かっていった。

 これはもはや「バチェラー・ジャパン」が標榜する「真実の愛」の否定でしかない。この世界では真実の愛は手に入らないとわかり、一度は終わらせたあと、改めて彼は諦めきれない欲望のまま動いた。

 7話で中川さんが脱落したあと、スタジオではMCの藤森慎吾さんが「バチェラーは全員が幸せになるなんてことはないんです」という真実をさらりと言ってのけていた。そんな彼の残酷な一言に、しかし今田耕司さんは同調しながらも「そのために豪華な車で泣けるようにしているんです。リムジンで送っていきますから」とカバーする。まさか、最後のローズを渡された相手が泣くことになるとは、誰も想像していなかった。

 顛末を伝えたあとのスタジオでは、バチェラーとしてのプロ意識の低さを糾弾される場面もあった。「バチェラーじゃなくて婚活パーティ行ったら?」という辛辣なセリフも吐かれていた。しかし、彼にとっては屁でもないだろう。だって、バチェラーという番組に背を向けて得た幸せなわけだから。知ったこっちゃないだろう。

 時間も距離も不自然なほどに制限された世界で争う「バチェラー・ジャパン」という番組において、一度相手と距離をとり、ゆっくりと時間をかけながら絆を結ぶ、という恋愛における最適ルートを選んだ友永さん。番組としては崩壊しているが、たとえば「いい加減、結婚報告を聞きたい」というスタジオメンバーや多くの視聴者の望みには、もしかしたら最も高い可能性で応えるかもしれないのだから、皮肉である

 といっても、これは何度も使える手ではないだろう。シーズン4の募集はすでに始まっている。「バチェラー・ジャパン」という番組に対する視聴者の期待や、それに応えることの難しさがこのような形で明らかになったあと、次のバチェラーはどのようにして「真実の愛」を手に入れようとするのだろうか。

文=園田もなか

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