舌がんでも「生きなければならない」。堀ちえみさんが綴る、壮絶な闘病記

暮らし

2019/12/16

『Stage For~ 舌がん「ステージ4」から希望のステージへ』(堀ちえみ/扶桑社)

「つかぬことをお伺いしますが、堀ちえみさんですか?」

 仕事の合間を縫って駆け込んだ病院で、医師は動揺した様子を見せながらそう尋ねたという。

「先生、これは所見の段階で、悪性でしょうか?」と堀ちえみさんが問い返すと、医師は「はい」と即答した。

 しかし、彼女に最初に浮かんだ感情は、なんと安堵だったという。舌の痛みは、長い間、耐えられないものになっていた。別の疾病で飲んでいた薬の副作用だと思い込んでいたが、そうではなかった。彼女はその晩、冷静に「手術となったら邪魔になるかもしれない」と考え、伸ばしていた髪を切った。

『Stage For~ 舌がん「ステージ4」から希望のステージへ』(堀ちえみ/扶桑社)は、堀さん舌がんを疑ってから10カ月間の手記だ。本書は徹頭徹尾、飾らない堀さんの言葉が綴られ、病気が近くにあるものだと実感させられる。

 7人いる堀さんの子どものうち、もっとも小さい16歳の次女は、舌がんと聞いて泣き叫んだ。堀さんは半ばあきらめかけていたが、そこで初めて「生きなければならない」と感じたそうだ。「花の82年組」としてともに時代を席巻した友人たちも、大きな支えとなった。

 正確には「口腔がん(左下扁平上皮がん)」といい、堀さんのそれは、もっとも進行した状態の「ステージ4」となっていた。

 著名人だからこそ、自身が手術前で心の整理もついていない中で、さまざまな方面に気配りをしながら、伝え方を模索した。がんの告知を受けてから、TBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』で公表するまでの詳細なスケジュールの記述は、迫真だ。

 堀さんはそれ以前にも、激しい痛みを伴う病気と闘い続けてきた。34歳で特発性重症急性膵炎にかかった。陣痛が始まったかのような痛みがあった。一歩間違えれば命を落としていた可能性があったことを、後に知った。次に特発性大腿骨頭壊死症だ。リハビリはとても辛いものだった。そしてリウマチは、薬がよく効いたが、副作用の口内炎がひどかった。神経障害性疼痛にも悩まされた。慢性的にピリピリ、チクチクと痛む。痛みに強くなってしまっていたがゆえに、がんの発見が遅れたとの堀さんの言葉には、やりきれない気持ちになる。

 そんな体験をしてきたからこそ、堀さんは強調する。「口内炎が2週間治らなかったら、それは悪性腫瘍の可能性あり」と。今では、舌がんは初期の段階で見つかることが増えているそうだ。

 文字通り命懸けで乗り越えてきた堀さんによって綴られた本書は、ぜひ「自分ごと」として読んでほしい。

文=えんどーこーた