「セックスしたい!」なのにできないのは誰のせい? セックスレス・セックス難民に救いはあるか

恋愛・結婚

2019/12/12

『セックス難民 ピュアな人しかできない時代』(宋美玄/小学館)

「セックスはしたい」
「でも相手がいない…」
そんな人が確実に増えているらしい。セックスをしない若者が多い現状は、「若者の草食化」などとよばれることもあるが、問題なのは、その中には「したいと思っているのにできなくて困っている人」も多いという点だろう。
 
 お腹が空いているのに食べるものがない人が食料難民ならば、上記のようなセックスしたくてもできない人は“セックス難民”とよべるのではないだろうか。本稿では、「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」シリーズ(ブックマン社)や多数メディアへの出演などで人気を博す宋美玄(ソン・ミヒョン)氏の新刊『セックス難民 ピュアな人しかできない時代』(小学館)の内容から、セックス難民の現状、そしてそこから見える「セックス難民にならないためのノウハウ」を掘り下げていきたい。

■若年世代独身者の2人に1人は未経験

 2015年に国立社会保障・人口問題研究所が18~34歳の未婚の男女を対象に行った調査では、男性の42%、女性の44.2%が「性経験がない」と回答したという。未婚化・晩婚化が進む現在、この割合は妥当なものだろう。また、年齢を重ねると、「配偶者はいるけれどセックスの相手になってくれない」という人も増えてくる。たとえば夫婦の双方が納得してのセックスレス状態ならば問題ないかもしれないが、パートナーとセックスをしたいという意欲が“一方通行”になって、不和を生み出すケースも多々あるのだとか。

■セックスのメリットは? きれいになるって本当?

 もちろん、セックスしたくないと思っている人が無理に相手を探す必要はない。女性向けの雑誌などでは「セックスするほど健康になる。きれいになる」といった特集が組まれることも多く、セックスのもたらす心身への効果も研究が進んでいるという。しかし、本書は、健康や美容のために無理してセックスをする必要はないと説く。そして、セックスそのものより大きなメリットとして「人と人とのつながり」「裸と裸のコミュニケーション」を挙げている。

 セックス相手との人間関係を重視しなくても、オーガズムを得ることはできる。インターネットにはアダルトコンテンツが溢れるほど充実し、性風俗店でお金を払えば“性的サービス”を受けられる。そんな社会の中にありながらも、「相手がいなくて困っている」人が多いという状況は、単なる性欲の問題ではないということだろう。結婚相手や恋人といえども、それはやはり自分ではない“他人”。そんな他者と深く通じ合い、理解し合ったうえで成り立つオーガズムは、やはり人生において大きなものであるようだ。

 2007年に発表されたコンドームメーカー「デュレックス」が26カ国で行った夫婦間のセックス年間平均回数の調査結果は、私たちに現実を突きつける。日本は最下位で48回。それに対して1位はギリシャの164回。この回数は日本人の約3.5倍であり、2日に1回ほどのペースでセックスしているようだ。日本人が少ないのはわかるが、ギリシャはギリシャで多すぎじゃ…そう思われる方も多いかもしれない。

■セックス難民になる人とそうでない人との決定的な違い

 著者は、セックス難民になるリスクが高い人とそうではない人とでは、考えている“セックスの意味合い”が異なっていると指摘する。「セックスは挿入、射精を必ず伴うもの。それがなければセックスではない」――このように考えている人は、たとえパートナーがいてもセックス難民に陥るリスクが高いというのだ。「テクニックを駆使して相手をイカせればいい」といった考えも、難民リスクは高そうだ。

 反対に、いつまでも幸せなセックスに困らない人にとって、セックスはもっと広範囲のコミュニケーションだ。会話から始まる一連のふれ合いすべてがセックスなのだという。共働きも多く、忙しい日本人夫婦が、キスから前戯、挿入してから体位をあれこれ変えて最後は射精でフィニッシュ――そんな定義を日々のセックスに当てはめていると、だんだんセックスが疎ましく感じてしまうのも無理はないかもしれない。

 裸で抱き合ってキスをする。お互いの気持ちのいいところにふれ合う。そのまま挿入せず、ずっと互いに愛撫し合う。挿入して満足感を得られたので射精せずにあとは抱き合っておしゃべりをする――こうした行為のひとつひとつもセックスだととらえることができれば、相手がいてもセックスできないというリスクは減らせるのではないだろうか。ギリシャや欧米をはじめ、前述の調査でセックス回数が上位だった国では、時間の余裕もさることながら、「セックスはこうあるべき」といった固定観念が薄く、愛情主体でラフに愉しめるという側面も大きいのかもしれない。

 本書では、「あなたがセックス難民になりやすいかどうか」のチェックリストもあり、手に取ったそれぞれにとって充実した情報が詰め込まれている。本書を読んで感じたのは、「セックスを特別視するあまりセックスのハードルが上がり、疎遠になってしまう人が多い」ということだった。セックスとは本来「しなければならない」堅苦しい行為ではなく、お互いを深く理解し求め合い、自然に愉しむことなのだ。

文=K(稲)