8年間無敗の営業マンが営業先で繰り出す「3つの質問」とは
更新日:2020/1/6
服を買いにいくのが苦手だ。ゆっくり自分のペースで店内をうろうろしているのに、すぐに店員が近づいてきて「ご試着できますよ!」と迫ってくる。いやいや、ほっといてほしい。そこまでコレが気に入っているわけじゃない。せめて、自分に似合う服を提案してくれるならまだしも…と思いながら、退店を決意するのである。
店員の「押し売り」が苦手な人は多いはずなのに、どうしてなくならないのだろうか。本書『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(高橋浩一/日経BP)によれば、これは典型的な「営業と顧客の認識のズレ」だという。お客さんの立場からすれば、「すぐに試着を促してくる店員」がダメなのは感覚的にわかるはず。なのに、いざ服を売る営業の立場になるとそれが見えなくなってしまう。服屋の研修では、新人に「試着してもらえれば、お客さまが買う確率はX%上がる」といった情報が伝えられるそうだ。
本書は、コンペで8年間無敗だという著者・高橋浩一氏が、豊富な実例や調査結果から体系的に営業ノウハウを解説する本だ。その内容は、先述のような「営業と顧客の認識のズレ」を解消するための「3つの質問」と「4つの力」がメインになっている。バリバリの営業マンだけでなく、対外的な仕事をする社会人なら知っておいて損のないものばかりだ。
■接戦のコンペを制するための「3つの質問」
本書のタイトルにもある「3つの質問」は、接戦の案件を落とさないために、顧客から戦いに必要な情報を引き出すためのもの。具体的には、「接戦状況を問う質問」「決定の場面を問う質問」「裏にある背景を問う質問」の3つが挙げられている。後の2つはぜひ本書で読んでいただくとして、ここでは、「接戦状況を問う質問」について解説しよう。
接戦の場合、顧客が「何と迷っているか」でこちらの打つ手が変わる。主な場合は、「競合(他社と迷っている)」「保留(今発注すべきなのか迷っている)」「内製(外部に発注するべきなのかを迷っている)」。接戦の案件は、これを早い段階で聞き出しておくのが理想だ。例えば、「今回は、弊社が提案をお出ししたら、社内ですぐ、ご判断されるような感じでしょうか」などと切り出し、「NO」と答えられたら、さきほどの3パターンのうち、どれが接戦の原因になっているのかを聞けばよい。
■「4つの力」を使い、PDCAサイクルを回していく
3つの質問を身に着けたら、あとは回数をこなしてPDCAサイクルを回していこう。著者によれば、その際、大事になってくるのが「4つの力」だという。「質問力」で顧客の理解を深めるためには、それに答えようと思わせる「価値訴求力」がなければならない。また、要件にそった提案をするための「提案ロジック構築力」、段取りよく案件を進めていく「提案行動力」も必要だ。こちらも盛りだくさんなので、ここでは「価値訴求力」について説明しよう。
本書は、営業から顧客に提供できる価値を「情緒価値」「機能価値」に分け、細かく紹介している。中でも、新人営業マンでも取り組みやすいのが「労務提供」と「適量コミュニケーション」だという。どちらも、顧客の仕事内容をよく知ることで提供できる価値だ。営業が提案する相手になりやすい企画職は、定例会議などの前に上司に報告する資料作成に追われている。であれば、顧客の会社の資料テンプレートを使った提案をして顧客の手間を省いたり、定例会議のスケジュールを聞き、その前後に役立つ情報を提供することができる。企画職から見て、「ありがたい」存在になれば、それだけで営業としての価値はグッと上がるだろう。
「3つの質問」「4つの力」の詳細が知りたければ、ぜひ本書を読んでみてほしい。いかに相手の立場に立ち、顧客との「ズレ」をなくすか。本書を読んでいると、営業の本質はそこにあるのだと実感させられる。それをマスターすれば、顧客からも会社からも必要とされる存在になるはずだ。
文=中川凌
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