巨大企業でも一寸先は闇! あなたの会社は大丈夫? 危険なパターンを分類してみると…

ビジネス

2020/1/15

『世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由』(荒木博行/日経BP)

 成功よりも失敗に学ぶべき、とは昔からよく聞く言葉だ。成功の背景には時代や環境といった“運”の要素も含まれるが、失敗には必ず原因があるため、それをつぶしていけばおのずと成功する確率を高められるからだ。
 
 人だけではなく、「会社」にもさまざまな失敗があると教えてくれるのが『世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由』(荒木博行/日経BP)。当事者目線を通じて各社の失敗事例を取り上げた本書を読めば、必ずや自分自身の仕事や生き方の教訓にもなるはずだ。

■時代の流れをつかみ切れずに幕を閉じたポラロイド

 インスタントカメラの代名詞にもなっていたポラロイドは、2度の倒産を経ても事業を継続していたが、2001年10月にアメリカの会社更生法にあたる「連邦倒産法第11章」を申請し、約60年にわたる歴史にピリオドを打った。

 大きな原因としてあげられるのは、みずからの成功体験に頼りすぎてしまったこと。本書では「過去の亡霊」型と表現されているが、時代の波に乗れなかったのが理由だという。

 1947年に現像までわずか50秒という初代インスタントカメラを発売したポラロイドは、大企業としてのその道中、コダックや日本企業であるオリンパスやキヤノンとシェア争いを繰り広げながらも、インスタントカメラ市場で大きな地位を確立していた。

 しかし、運命の分かれ目となったのは1990年代にカメラ市場にもデジタル化の波が一気に押し寄せてきたことだった。

 じつは、1980年代から社内の一部にはデジタル技術を推進しようとする人たちがいたものの、当時の経営陣は「デジタル技術の市場が未知数」「(自分たちにとって)重要なフィルムの市場を奪ってしまう」「写真の品質は当時のアナログ写真技術からすれば『粗悪品』に他ならなかった」という理由から、デジタル推進の企画を否決。当時はまだ存在しなかった市場に、目を向けることができなかったというのだ。

■みずからの本分を超えてしまい破綻したリーマン・ブラザーズ

 2008年9月にポラロイドと同じく、連邦倒産法第11章を申請したのがアメリカの大手投資銀行であったリーマン・ブラザーズである。メディアで「リーマンショック」と名付けられて破綻のニュースがしきりに流されていたのも記憶に新しいし、今でも時代の節目として語られることが多い。

 リーマン・ブラザーズが大きく傾き始めたのは、21世紀に入った直後。ライバルであったゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリルリンチに追随しようという“焦り”から、みずからの許容範囲を超えた資金調達の方法に舵取りをしてしまったことが破綻への第一歩だった。

 かつてのリーマン・ブラザーズは、M&A(企業の合併や買収)へのアドバイス、保険会社や大手機関投資家に代わって株や債券の売買を代行することを生業として、その手数料を主な資金源としていた。しかし、競合他社に追いつこうとして、彼らが手を出し始めたのが、みずから資金を出して株や債券に投資をする「自己売買型」の取引だった。

 大きな問題となったのは、その資金源である。当然ながら、リーマン・ブラザーズの資金源の大半は、顧客から預かっていたお金だ。他人から借りた資金で投資をすることがハイリスク・ハイリターンであるのはいうまでもないが、いったん回りだした歯車を止めるのはたやすくない。倒産間近には、自己資金が230億ドルだったのに対して、株や債券への投資額が7000億ドルに達していた。

■会社がなくなるだけではない本来の「倒産」の定義

 いくつかのケースを紹介したが、最後に、企業の行く末にある「倒産」の意味についてもふれておきたい。その言葉を聞くだけだと「会社が潰れ、社員が路頭に迷う…」といったイメージがあるかもしれないが、じつは、会社そのものがなくなってしまうケースばかりではない。

 帝国データバンクによれば、日本での倒産の定義は「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」とされている。つまり、期限どおりに払わなければいけない借金を返せず、どうにも回らなくなった状態を指すのだが、その先は大きく2つに分けられる。

 1つは、倒産によって会社がなくなる「清算型」の倒産で、もう1つは、いったん事業を整理しながら継続して債務を弁済していく「再建型」の倒産だ。

 倒産に関連してよく聞く「破産」とは前者にあたり、それにからんで話題にのぼる「会社更生法」や「民事再生法」といった法律が適用されるのは後者となるが、いずれにせよ企業が何かしらの形で現状をみすえて“いったん立ち止まる”という意味合いも込められている。

 さて、人生において「一寸先は闇」とよくいわれる。本書は企業の倒産事例を取り扱ったものではあるが、大は小を兼ねるとはよくいったもので、さまざまな「失敗の事例」は、おそらく人ひとりの身近な体験にも通じるはず。ときには現状を見きわめながら挑戦し、またときには身の丈をわきまえながら行動するのが大切だと、改めて気付かせてくれる1冊だ。

文=カネコシュウヘイ