食べ歩き50年の散歩ライターが語る「究極のナポリタン」。劇的においしく作る“ひと工夫”レシピも伝授!

暮らし

2020/1/26

『ぶらナポ 究極のナポリタンを求めて』(下関マグロ/駒草出版)

 甘いケチャップ味と、もちっとした太麺が食欲をそそるナポリタン。日本人なら誰もが知っている、なつかしい味だ。

「ナポリタンを食べ歩いて50年」の食べ歩き評論家・散歩ライターの下関マグロ氏が上梓した『ぶらナポ 究極のナポリタンを求めて』(駒草出版)。本書は名店や歴史、レシピ、コンビニ各社の商品比較など、“ナポリタン愛”にあふれた1冊である。

 ナポリタンの構成要素は麺、ケチャップ、ピーマン、タマネギ、ハムなど身近で安上がりな食材。作り方は茹でた麺と具材をフライパンで炒めて完成、ときわめてシンプルだ。

 しかしシンプルなものほど、じつは奥が深い。著者いわく“おいしいナポリタンがいただけるのは昔ながらの洋食店、喫茶店”。本書では、その店独特の食材だったり、調理法だったりで、他では食べられない「こだわりのナポリタン」が多く紹介されている。

ごく身近に潜んでいるナポリタンの名店を求めて

 本書の半分近くを占めるのが「何度でも食べに行きたいナポリタンの名店」だ。“ナポリタンというのは、わざわざ電車に乗って遠くまで出かけて食べるものではなく、自分の家の近所とか職場の近くにあるもののような気がする”という著者が、自分の行動範囲から厳選した50店である。

 そのため本書で紹介されている店の所在地は横浜にある1店をのぞき、他はすべて都内だ。「東京か…」とがっかりした人のために補足すると、これはあくまで著者の“極私的”な選定であり、自分にとっての究極のナポリタンは身近に潜んでいるかもしれない、というのが本書の趣旨だ。

“誰かのおすすめ”を参考にするのもいいが、時には自分の足で気ままに“究極”を探しに出かけるのも悪くない。そう思える1冊である。

働く男性たちに愛される「リーマンパスタ」という一面

 読んだらもうすっかり気分はナポリタン通! というくらい、本書ではじつにさまざまな“ナポリタンうんちく”が披露されている。

 なかでもちょっと意外だったのが、ナポリタンの聖地が「サラリーマンの街・新橋」ということ。昼の休憩時間でパッと食べられて、おなかいっぱいになるナポリタンは「リーマンパスタ」とも呼ばれ、働く男性たちに愛される料理なのだそうだ。

 てっきり女性や子どもに人気の甘めのスパゲティと思いきや、じつはナポリタンをいちばん食べているのは働き盛りの男性たちなのかもしれない。そう思うとナポリタンは日本社会を支える一品なのだなあ、と感慨深い。

 また新橋には粘度が高く、どろっとしたナポリタンを出す店がある。これはサラリーマンたちの白いシャツにソースが飛ばないように、という店側の心遣いなのだそう。なんともやさしいナポリタン・エピソードだ。

自宅で作る「本当においしいナポリタン」

 本書には自宅ナポリタンを劇的においしくする7つの“ひと工夫”とともに、下関マグロ氏直伝のナポリタンの作り方も紹介されている。さっそく筆者もレシピ通りに作ってみた。

 詳しくは本書を手にとった人のお楽しみにとっておくが、「さすがナポリタン」というくらい材料も調理もシンプルである。

 個人的に「ほほう」と感じたひと工夫は“茹でた麺を一晩寝かせる”こと。ナポリタンはシンプルな料理だけに麺のおいしさが重要であり、時間を置くともちっと感がアップするそうだ。

 たしかに筆者宅ではお馴染みのスパゲティを茹でたのに、いつもとまるで食感が違う。なんだかなつかしさのあるもちっと麺。焦げた部分の香ばしさがまたいい!

 味はケチャップへのひと工夫で、甘さが引き立ち、粉チーズやタバスコがよく合う。ついつい食べ過ぎてしまうおいしさだ。

 知れば知るほど、愛おしい。ナポリタンにすっかりゾッコンな筆者である。甘くてもちっとしたなつかしの味・ナポリタンの魅力にぜひ本書で触れてほしい。

調理・文=ひがしあや