報道の現場は意外と「地味」!? 新米カメラマンアシスタントが求める「好き」のある仕事とは

マンガ

公開日:2020/2/25

『ニュースの現場から! 1』(都陽子/KADOKAWA)

 新型コロナウィルスのニュースが連日伝えられているが、現場の報道スタッフたちはリスクも含めて、さぞ大変なことだろうと思う。そんな仕事に携わる彼らを支えているのは、報道することへの使命感なのかもしれないが、同時にやはり仕事が「好き」ということもあるのだろう。もちろん最初から「好き」を仕事にできればいいのだが、多くの場合は仕事に就いてから「好き」を見出すことになるのでは。『ニュースの現場から! 1』(都陽子/KADOKAWA)には、仕事でいかにやりがいを見つけていくかで苦闘する女性の姿が、漫画でコミカルかつリアルに描かれている。

 主人公の相原夏未は26歳にして、ぬるま湯と感じていた会社を辞めて「好き」を感じられる仕事に就きたいと考えていた。しかし明確なビジョンもなしに仕事を見つけられるはずがなく、気づけばバイトで再びぬるま湯の日々。そんな彼女の前に現れたのは、大学時代の先輩である岩隈慎吾だった。彼は現在、ローカルテレビ局で報道の現場を映像で撮影する「報道カメラマン」の仕事をしていた。そして夏未が仕事を辞めたと聞き、彼女をカメラマンアシスタントとして誘いに来たのだ。岩隈の話から厳しそうなイメージを持つ夏未だったが、岩隈に事件の一報が入り、彼の仕事を見るため共に現場へ向かうことに。

 夏未たちが向かったのは、「火事」の現場だった。間近で見る火の勢いに、思わず恐怖を覚える夏未。しかし岩隈は躊躇することなく、カメラを担いで現場を撮影していく。撮影から編集まで、ひたむきに仕事に取り組む岩隈の姿を見て、面白いと思える「何か」があると感じる夏未。自分の感じた気持ちを信じて、アシスタントを志望するのであった。

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 やりがいを求めてアシスタントを始めた夏未だったが、現実はそう甘くなかった。日々の仕事は天気予報の映像撮影など地味なものが多く、彼女の望んだ「ハデな現場」は見られない。さらに急な事故が起こっても、身体がすくんで何もできなかったのだ。同僚の記者からは、報道に対する考えかたの甘さを責められ、果てはベテランカメラマンのカメラを壊してしまい、失意のどん底へ叩き落とされることに。

 それでも一所懸命な岩隈の姿を見習い、真摯にアシスタントの仕事に取り組む夏未。そこへ局の制作部長から彼女に対し、アシスタントからカメラマンにならないかという打診が。しかし経験不足から自分に自信が持てない夏未は、それを断ってしまう。それでも彼女のフォローを買って出る岩隈の後押しもあり、カメラマンとして撮影に臨むことに。彼女が担当するのは、ご当地アイドルを特集する5分の企画だった。初めてメインでカメラを持つ夏未に対し、この現場は一体何をもたらすことになるのだろうか──。

 かつて報道関係に勤める私の友人が、クリスマスに彼女とデートしている最中、とある芸能人の訃報が入って急遽、現場に駆り出されたという愚痴をこぼしていた。かくも非情な報道現場であり、こんなの「好き」でもなければやっていられないであろう。報道以外の業界でも、やはりどこかに「好き」がないと長続きはしないのかもしれない。本書で岩隈は「自分だけの『こだわり』を見つけたら、もっと楽しくなる……はず」と言う。きっとどんな仕事においても、それは当てはまるはずだ。「自分だけのこだわり」──それこそが「好き」の根源なのかもしれない。

文=木谷誠