『覆面系ノイズ』福山リョウコの最新作は、無駄口とバカやることに全力をそそぐ男4人の笑い&胸キュンの恋模様

マンガ・アニメ

2020/2/21

『恋に無駄口』(福山リョウコ/白泉社)

 この人の描くものなら絶対におもしろいに決まってる、と信頼のおけるマンガ家はみんな、その人にしかない“変態性”をもっている。というと聞こえがわるいが、要するに作者自身のフェチが見えて、全力で萌えを体現しているということである。そこにストーリーテリングのセンスがくわわると、笑いと胸キュンが融合した極上のマンガとなる。『覆面系ノイズ』の作者・福山リョウコもそのひとり。最新作『恋に無駄口』(白泉社)も期待を裏切らない、どころかはるかに上回る作品だった。

 まず、あらすじからしておかしい。元女子校に入学した男子10人のうち、4人が所属するのは「無形文化遺産代行保存部」。登校から下校までの約3万6000秒を、無駄口を叩いて馬鹿やることに全力をそそぐ彼らは、無駄にイケメンゆえに無駄部と呼ばれて、引かれている。そうはいってもイケメンならモテるだろうと思うのだが「食パンを咥えて走ったら本当に角で女子とぶつかり恋に落ちるのか?」を検証したり、下駄箱をマスキングテープでデコりまくって遊んだり、学園祭では「ツンデレは本当にモテるのか?」をテーマに写真館を開催したりと、「あーこりゃ無理だわ」と納得せざるをえないあほな言動をくりかえす。高校の同級生がこれだったら「顔はいいのに」の残念感で、絶対モテない。でもかわいいしピュアだし超いい子だから、読んでるこちらは全力で萌えてしまうけどね!

 少女マンガ大好きな仁科は、本当にパンを咥えて走ってぶつかった女子に恋してしまうし、モテたいのに恋愛アンテナが死んでる葵は、巨乳美少女の幼なじみからの猛アタックにまったく気づかない。かわいい自分大好き!なシロは天然ツンデレ生徒会長にふりまわされ……と3人のべたでピュアな恋愛模様にも釘づけなのだが、個人的に気になるのは、1巻でひとりだけ恋の気配が感じられないメガネ男子のマヤ。雑誌のインタビューで好みの女の子が「こんがり日焼け男子大好き!」と言ってたというだけで日サロに走り、第1話からガングロで登場した彼。2話ですっかりまっしろに戻っているのもおかしいし、ツンデレ鬼ごっこを提案して「捕まえたぞおおおお 蝋人形にしてやろうか~~~~~!!!! しゅき★」と狂気の形相で仁科を追いかけるところなんて、あほすぎて笑えるし、かわいすぎる。まだ描かれてもいない彼の恋が、今から気になってたまらない。

 あきらかに両想いなのに、ツンデレと鈍感ゆえに進まないじれったい恋は、連載デビュー作『悩殺ジャンキー』以来、福山リョウコの十八番テーマ。パンを咥えた仁科とぶつかったのは、漫画部の美少女・依麻(ふつう逆だ)。仁科を意識しすぎてだいっきらい! とじたばたする彼女も、そんな依麻を「かわいさ甲子園優勝!」と脳内で叫びながら恋愛なんてめんどくせえと近づくのをためらう仁科も、やっぱりかわいい。かわいいしか語彙がないのかと叱られそうだが、とにかく隅々まで全力であほかわいい、ゆえにときめきが止らない作品なのである。

文=立花もも