「玄関の鍵かけたっけ?」「テレビ消したっけ?」──そういう「不安」があまりに強いと、それは病気かも!

暮らし

2020/2/23

『几帳面だと思っていたら心の病気になっていました』(菊晴/KADOKAWA)

 私に限らず、誰でも一度は外出時に「出かける前に鍵かけたっけ?」とか「テレビ消したっけ?」などと気になった体験をしていると思う。とはいえ、外出してまだ間がなければ戻って確認するだろうが、そうでなければ「まあいいや」くらいに考えるのではないか。しかし、そういうことが本当に気になりだすと、外出前に何度もテレビや火の元をチェックしたり、鍵がちゃんとかかっているか、しつこいくらいに確認してしまったり。挙句の果てには、気になることを恐れて外出もできなくなってしまうというのだ。その症状、実は「強迫性障害」というれっきとした病気であった。『几帳面だと思っていたら心の病気になっていました』(菊晴/KADOKAWA)は、そんな病気になってしまった作者の苦しさを描いたエッセイコミックだ。

 本書の作者・菊晴氏は最初から強迫性障害だったわけではなく、人よりちょっと「几帳面」くらいの程度であったという。しかしあるとき、古くなった大切なバッグを処分したのだが、しばらくして後悔してしまう。さらに大事なネックレスを不注意から無くしてしまい、そこから「何か」おかしくなったと作者は語る。

 具体的には「自分の目で見たものが信じられなくなった」のだ。水道の水を止めた様子を見ても、それが実感できないのである。だから水が出ていないか手を出して確認することに。玄関の鍵をかけてもピンとこないので、何度も閉まっていることを、ノブを動かすなどして確認するのだ。果ては電気を消した証拠をスマホで撮影して、それを記憶と照合するなんてことまで始める。そしてその行為に時間と労力を費やし、作者は疲弊していったのである。

 症状はさらに進み、今度は手に何かを持って人とすれ違っただけで「危害を加えてしまったかもしれない」と思い始める。そして人とすれ違うことがストレスになり、次第に外出することすら怖くなっていく。ついには派遣の仕事も断り、作者は家に引きこもるようになるのである。ただ、引きこもったからといって、平穏が訪れることはなかった。今度は「家族を傷つけてしまうかも」という強迫観念に駆られることに。娘の異変を感じていた両親の対応によって、何とか日々の生活を送る作者だったが、それでも問題が解決したわけではなかった。

 その後、作者はついに心療内科でカウンセリングを受けることに。その結果、彼女は「強迫性障害」だということが判明する。強迫性障害とは、簡単にいえば「鍵をかけたか?」というような「強迫観念」から「何度も確認してしまう」ような「強迫行為」に結びついてしまう状態をいう。カウンセリングの先生は治療方法として「認知行動療法」と「脱感作」を提案。認知行動療法とは、自身が不安に感じることをあえてやってみて、「大丈夫」という経験を積み重ねることで認知の歪みを修正する治療法。そして脱感作とは、これまでできなかったことを挑戦しやすいことから慣れていく治療法。例えば作者は菌の汚れが気になって外のトイレを使えなかったが、清潔な高級ホテルのトイレからチャレンジを始めて、ついには駅のトイレまでクリアできたという。

 現在、作者の強迫性障害はほぼ回復し、年に数回のカウンセリングを受ける程度に。やはり医師のカウンセリングを受けることは、有効なのであろう。何より他人に自分のことを理解してもらい、解決法を共に考えてもらえるというのは作者にとっては心強かったはずだ。彼女が「不安になることは悪いことじゃない」「不安を消そうと執着することそのものが強迫だ」と気づけたのも、カウンセリングのおかげなのである。もちろん最適解は人それぞれだが、ひとりで抱え込まず専門家に正しく対処してもらうことが、問題解決の近道だといえそうだ。

文=木谷誠