実写ドラマ化熱烈希望! 正直でかわいいお母さんと、不器用な娘が織りなす、『娚の一生』西炯子による4コマコメディ【試し読み】

マンガ

公開日:2020/3/14

『ちはるさんの娘』(西炯子/双葉社)

 実写ドラマ化してくれないかな……と常々思っているマンガがある。『ちはるさんの娘』(双葉社)だ。著者の西炯子さんは、恋に不器用なアラフォー女性を主人公に作品を描くことが多い。恋に不器用、というよりは、自分の感情をとりあつかうのが下手なのだ。なにごとにも一生懸命心を注いでしまうから、仕事はできるけれど、傷つきやすいから誰かと深く関わることを避けてしまう。“ちはるさんの娘”である、人気ミステリー作家でバツイチのちなつさん(38歳)もそう。ただ、彼女のそばにはいつも、パワフルで自分の心に正直なお母さんのちはるさん(80歳)がいる。

 同作は、西さんにはめずらしい4コママンガ。いろいろ問題を抱えて心をこじらせがちなちなつだけれど、母娘関係を軸に物語は進むから、ほかの作品に比べて、主人公がぐるぐる悩む描写が少ない。それよりも、くすっと笑えるユーモアや、心がぽかぽかあたたかくなる癒しのほうが多めだ。それが、なんだかとてもリアルなのである。現実には、どんなに悩んでいても、仕事はがんばらなきゃいけないし、母のもちこむ厄介事を片づけているうちに、いつのまにか気がそれていることもある。人生は、複合的に展開していて、喜怒哀楽も一貫はしていない。そんな時間を共有しながら、寄り添いあって生きる2人のやりとりが、なんだかとても沁みるのだ。ものすごくドラマティックなわけではないし、どちらかというと笑えることのほうが多いのに、最終4巻では不覚にも、目頭が熱くなってしまった。

 とにかく、ちはるさんがいい。イケメンが大好きで、出会いにも積極的で、見知らぬ人にもてらいなく話しかけるし、「私はもういい歳だから」なんてしり込みせず、どんどん新しい場所に出かけていく。「いつになったら再婚するのかしら」とか「女の子なのに…」と小言をもらすちはるさんはいかにもな“お母さん”だけど、腕の立つ洋裁屋として信頼されているところも、かっこいい。いつだって自分の心に正直で、まわりの人の幸せを願いながら自分の人生も楽しむちはるさんに触れているだけで、心が癒されていく心地がする。

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 決して無神経ではないがお節介なちはるさんのおかげで、ちなつの恋も動き出す。このお相手がなかなか個性的で、(1)ひとまわり年下の頼りない担当編集者・梅本くん、(2)梅本くんの後輩で優秀な女編集者・武者小路さん、(3)武者小路さんのイトコで宝束(たからづか)男役のトップスター・すみれ野園。それぞれ押しが強くて、わちゃわちゃである。

 実写化したら、ちなつさんは竹内結子さんか仲間由紀恵さん、あるいは松たか子さんあたりがいい。梅本くんは中川大志さんなんてどうだろうか。坂口健太郎さんもいい。武者小路さんは、お金持ちで華やかだから、上品な桜庭ななみさんとか。園さんはやっぱり北川景子さんでは……? ちはるさんは、個人的には松坂慶子さんのイメージなのだけど、年齢が全然ちがうので悩みどころである。……などなど、キャスティングを考えていくのも楽しい。できれば日曜の夜あたり、こんなあったかい気持ちになれて胸キュンもできるドラマを見られたら、どんなに心地がいいだろう。完結してしまったのは残念だけど、何度も何度も、ちょっとさみしくなったときにくりかえし読みたいマンガである。

文=立花もも

【試し読み】









©西炯子/双葉社