「今月のプラチナ本」は、幡野広志『なんで僕に聞くんだろう。』

今月のプラチナ本

2020/4/6

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『なんで僕に聞くんだろう。』

●あらすじ●

webメディア『cakes』史上、最も読まれた連載が書籍化。「家庭のある人の子どもを産みたい」「ガンになった父になんて声をかけたらいいかわからない」「自殺したい」「虐待してしまう」「兄を殺した犯人を今でも許せない」……。誰にも言えない悩みを抱える人々の人生相談に余命数年の写真家・幡野広志が答える。

はたの・ひろし●1983年、東京都生まれ。2010年より広告写真家・高崎勉氏に師事。11年、独立し結婚する。12年、エプソンフォトグランプリ入賞。16年に長男が誕生。17年、多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。著書に『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』、『写真集』、『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』がある。

『なんで僕に聞くんだろう。』書影

幡野広志
幻冬舎 1500円(税別)
写真=首藤幹夫

編集部寸評

 

あなたは/私はどうしたいの?

人生相談というのは不思議なコンテンツだ。悩む人は、赤の他人に相談する。その悩む人も、われわれ読者からすれば赤の他人。悩みも回答も、自分のものではない、なのに読みたくなる。幡野さんは「答えは悩む言葉のなかに隠れている」と言い、つまり悩む人は自分で答えを持っているが、そのことに気づけていない。であるならば読者も、自分の中の言葉に気づくために、赤の他人の言葉が必要なのだろう。その時、「背中を押す人でありたい」と言う幡野さんの言葉が、助けになるはずだ。

関口靖彦 本誌編集長。いちばん感銘を受けた人生相談本は車谷長吉『人生の救い』。相談者の本心を血刀でえぐり出すがごとき回答は、果たして救いなのか。

 

真剣なお悩みに真摯な回答

お悩みを聞くことについて、著者の幡野さんは、「相談はすべて自分の息子からされたものだと想像するようになりました」「息子からの相談であれば、こちらも真剣に答えてあげなければと考えるようになるから」と書かれています。見ず知らずの人からのたくさんの相談事を親身に考えてくれるなんて、どんなモチベーションなんだろう、と不思議だったので納得でした。お悩みは様々、でもそれぞれ真剣で、幡野さんの答えも、なるほどと思うものばかり。なんだか読後、元気になれる一冊。

鎌野静華 来月はなんと健康特集です。特集のために背筋力など測ってもらったのですが、平均値が遠い……。せめて年齢並みに改善するとよいのですが……。

 

そりゃあ、あなたに聞きますよ。

僕は人生相談本が好きではない。だから書店で見かけても、この本を手に取ることを避けていた。しかし読み始めてみると、著者は本当にすごい人だと思った。彼がガンだとか写真家であるということは、読み進めるほどに抜け落ちてくる。掲載されている相談には読むだけで苦しくなるものもある。しかし著者はこれに答える。真摯に、軽妙に、時に辛辣に。相談を寄せたくなる人の気持ちが良くわかる。そしてここぞで差し挟まれた写真が、またすごいのだ。良い本をありがとうございました。

川戸崇央 「自分がなんでそう思うのか掘り下げれば小説は書けるようになる」とある作家さんから聞いた記憶があるが、幡野さんの本を読んでそれを思い出した。

 

「聞いてもらえている」と思えるから

書店で本書を手にしたきっかけは、かつて父がステージ4のガン患者だったから。「ガン患者に何と声をかければ?」という、私も悩んでいたその相談には、〝声に耳を傾けることが正解なんです〟〝話を聞いてほしいからです〟〝否定されるって本当につらいのよ〟と綴られている。「おわりに」には「悩み相談でいちばん大切なことは、相手の答えを探ることだ。」。どの悩みの答えもしっかりと「聞いてもらえている」ようで、嘘もなく誠実。だから相談したくなる。大切に開きたい一冊。

村井有紀子 父はある医師に巡り合えたおかげで元気に暮らしています。本書の〈ラッキーはいつどこにあるかわかりません。〉本当にその通りだと思います。

 

まるで写真集のような

いい写真は、そこに写っているものよりむしろ、写っていないあれこれ─過去や未来や関係性─を想像させる。いい悩み相談もそれと似ていて、そこに書かれていないあれこれこそが、回答者の手で浮かびあがる。幡野さんは写真家の眼をもつ人だ。相談者が隠したものにも容赦なくまなざしを向ける。読者である私たちはその眼を借りて、生きることの複雑さや豊かさに触れる。「なんで僕に聞くんだろう」。それは死が迫る人だからではなく、幡野さんが素晴らしい写真家だからだろう。

西條弓子 春はいつも明るすぎるから、ちょっとさびしいくらいがちょうどいい(自説)。そんな季節にうってつけの孤独特集。ずんと腹にくる自信あり!

 

自分がいい顔になるために

家族のこと、恋のこと、命のこと。幡野さんに寄せられるありとあらゆる相談の中には、読むだけでひるんでしまうような深刻なものも多い。どんな悩みも丁寧に解きほぐし、ときには書かれていないことまで読み取って、プロファイルしていく。幡野さんのすごいところは、視点を切り替える軽やかさだと思う。相談者だけでなく、関係者の立場までシミュレーションしたうえで、きれいごとや世間の目をとっぱらって「背中を押す」言葉をくれる。噓のない言葉が持つ力の強さが伝わってくる。

三村遼子 ハードな悩みがつづく中、「正義の仮面をかぶった人たちの無責任な言葉」という一人旅についての章は清々しく、でも大事なことがつまっています。

 

残してくれて、ありがとう

ガン患者の著者が、すべての相談を息子からされたものと想定し、真摯に回答する人生相談コラムを収録した本書。そのどれもが気づかされることばかりで人気なのも納得だ。でもこの本の本当の価値は別のところにある。人生相談は、回答者の人柄はもちろん、何を愛して何に苦しみ、どんな主義主張を持っているのかも浮かび上がる。彼が旅立った後も、本書があれば「自分はこんな人間だったんだ」と自身の言葉で息子さんに伝えることができるのだ。尊いほどの愛を感じた一冊。

有田奈央 配属されて1年半ちょっと。少々早いですが編集部から離れることになりました。楽しくて勉強になる仕事をさせて頂いた、すべての皆様に感謝!

 

人間性をはかるリトマス試験紙

誰かの相談を受けるとき、正直面倒に思ってしまったり、早く話を切り上げようとしてしまうことがある。だからこそ、どんな相談にも真摯に向き合い、本質を捉えながら答えを導き出す幡野さんはすごい。「人生相談ってじつは相談をうけた人の人間性をはかる、とても簡単なリトマス試験紙」であるならば、私はどうだったのだろうか。自分の都合だけを押し付けてしまっていたのではないだろうか。私も幡野さんのように、言葉で誰かの背中を押してあげられる、そんな人になりたい。

前田 萌 いよいよ新年度が始まりましたね。ついに私は社会人1年目に終わりを告げました! あっという間の1年でした……。2年目も頑張ります!!

 

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