身近にあった“借金”が原因で泥沼に…! 人生の破滅を経験した11人の体験談

社会

2020/4/2

『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(増田明利/彩図社)

 世の中を見ていると、借金へのハードルは下がり続けているように思えてならない。サラ金は消費者金融というマイルドな呼称になり、CMでは芸能人が爽やかな笑顔で金融会社を宣伝する。購入時にはありがたく感じられるネットショッピングの後払いや分割払いシステムも、借金であることには違いない。
 
 こんな時代だからこそ、身に染みるのが『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(増田明利/彩図社)。本書の著者、増田さんはこれまでにも『今日、ホームレスになった 15人のサラリーマン転落人生』や『今日から日雇い労働者になった』など、独自の視点で現代人の生活に潜む闇をえぐってきた。
 
 借金苦に陥る人は闇金のような性質の悪い貸金業者でお金を借りているようなイメージがあるかもしれないが、実際は自分が借金をしていることをきちんと理解できていなかったり、無計画に借りてしまい泥沼にハマってしまうというケースが多いのだという。
 
 思わぬところにある、借金の罠。それを知っても「自分の人生は大丈夫」だと言い切れるだろうか? 本稿では夢を追う果てに借金を掴んでしまった、ひとりの女性の体験談を紹介したい。

夢を追って上京、思わぬ展開で借金苦に…

 秋田県で生まれ育った中川圭子さん(仮名)は小さな頃からマンガが大好きで、中学生の頃から声優に憧れるように。CDを出したり歌番組に出たりしている人気声優たちは彼女の目にまぶしく映り、自分もスポットライトを浴びるような声優になりたいと思った。

 親や教師には反対されたが、高校卒業後は夢を叶えるべく上京し、アニメ・声優の専門学校へ入学。しかし、学費は高く、初年度の納入金130万を支払うため、第2種の奨学金を利用した。月6万円×2年間、総額144万円が圭子さんにとって初めての“借金”となったのだ。

 学校ではさまざまなレッスンが受けられ、満足感も得られた。しかし、卒業が間近に迫った頃には業界の厳しさをひしひしと痛感する。卒業前に学校ではさまざまな芸能プロダクションや声優事務所の幹部を招き、入所試験にあたるオーディションを行ったが、圭子さんにはどこからも声がかからなかったのだ。

 実は、声優事務所は自前の養成所を持っていることが多く、専門学校を卒業した後に改めて養成所に入り直し、そこで認められてやっと事務所に所属できるという厳しい世界。業界の厳しい現実を初めて知った圭子さんは、ここで諦めたらそれまでの2年間の努力が無駄になると思い、有名声優を多数抱える事務所の養成所へ。そのために必要な入所金と受講料は30万円。貯蓄は当時15万円ほどしかなく、アパートの契約更新が重なったこともあり、圭子さんは銀行のカードローンを利用した。

 生活が目に見えて一気に苦しくなったのは、奨学金の返済を促す通知が届き始めてから。144万円の借金が自分にあるのだと我に返った。月1万5000円の返済は、養成所通いの身の上にのしかかってくると非常に重い。夢だった声優業も芽が出ず、ついに諦めてしまう。

 1年間のプログラムが終了した時点で、養成所を退所。その後アルバイトをかけもちしながら就職活動に励んでいたが、社会人として即戦力となる資格を持っていないからか不採用の連続。次第にアルバイトも採用されにくくなって困り果てた末、キャバクラでアルバイトをしている知人に相談し、キャバ嬢になった。

 こうして銀行のカードローンは全額返済できたが、奨学金の返済はまだ残っているため、圭子さんは今でも就職活動をしながらキャバクラで働き続けている――。

ごく身近にある“借金”を見直したい

 明るい未来を掴もうと進んだ道の先で待ち受けていたのは、借金苦という悲しい現実。夢は本来人の生きがいとなるが、時には足枷にもなり得るのかもしれない。奨学金制度は“お金を借りている”という感覚が薄れやすいからこそ、“もしもの未来”についてあらかじめ考える必要もあるだろう。

 本書には他にも、マイホームや会社経営という健全に見える借金理由から、ギャンブルや買い物依存症など心の穴が垣間見える要因まで、さまざまな事情によって借金苦に陥ってしまった11人の人生を紹介する。キャッシュレスが浸透しつつある現代は、自分の手持ちや使った金額を失念してしまいがち。こんな時代だからこそ、身の丈に合ったお金の使い方を、改めて自分自身に問いただしたくなる。

文=古川諭香

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