「今月のプラチナ本」は、志村貴子『おとなになっても』

今月のプラチナ本

2020/5/7

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『おとなになっても』(1~2巻)

●あらすじ●

小学校の先生をしている綾乃は、久しぶりに立ち寄った行きつけのバーで朱里に声をかけられる。二人は初対面ながらも意気投合し、そのまま朱里の部屋へ。互いに惹かれ合う彼女たちは、キスをして再会を約束する。しかし、綾乃には「夫」がいて――。初めての気持ちに戸惑いながらも想いを募らせていく綾乃と、そんな綾乃に振り回されながらも惹かれる心を止められない朱里の少しビターな大人の恋物語。

しむら・たかこ●1973年、神奈川県生まれ。97年、『ぼくは、おんなのこ』でデビュー。代表作『青い花』『放浪息子』はテレビアニメ化、2015年には『淡島百景』が第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。その他の著書には『こいいじ』『娘の家出』など。また、アニメ『アルドノア・ゼロ』『バッテリー』のキャラクターデザイン、小説の装画など、マンガ以外にも活躍の場を広げている。劇場アニメ『どうにかなる日々』が近日公開予定。

『おとなになっても』(1~2巻)書影

志村貴子
講談社KC Kiss 440~450円(税別)
写真=首藤幹夫

編集部寸評

 

おとなになった自覚がある人、いますか?

自分のことは、自分で決める。それがおとななんじゃないのか。しかしこの“自分”こそが、ままならない! 朱里は思う、「また会うの?あたしたち 会えんの? 会ってどうなるの⁉」。自分がどうしたいのかわからぬままに、電話をかけメッセージを打ち、足を運んで会ってしまう二人。相手のせいではない、自分自身が濁流となって自分を押し流していく。それでも淡々と仕事はこなしているあたりがおとななのか……。おとなの自覚のないまま35歳を過ぎたすべての男女に読んでほしいです。

関口靖彦 本誌編集長。読むのがつらいほど不穏で、「あー、もう!」と言って本を置き、続きが気になってすぐにまた手に取る。というのを繰り返しました。

 

綾乃ちゃんはタラシ

1巻目を読み終わった感想は、綾乃ちゃん何か怖い!だった。恋に純粋な少女の顔と、大人の女の顔が交互に出てきて、良くも悪くも自分本位で欲望に忠実な感じ……。うう、お義母さんもキャラ濃いし、こりゃ朱里さん大変だなぁ……なんて。でも2巻目の朱里さんのセリフ「やだもう! タラシ!!」で、ああ!綾乃ちゃんのずるいけど憎み切れない感じって、タラシの人のそれだわ、と腑に落ちました。大人になってからの恋。二人の関係が、これからどうなっていくのか楽しみです。

鎌野静華 健康特集の1カ月筋トレチャレンジ、超〜初級にしてもらったおかげでなんとか続けられました。まったく運動していない方、きっかけにぜひ。

 

ふたを外して皿まで食えるか

世界の多くの都市部において、この物語が前提としていることは一時的に成り立たなくなってしまった。学校に子供の姿はなく、正当な理由なく会いたい人と会うことも難しい。だからこそ、この物語をとても眩しく感じた。綾乃の振る舞いがわがままに思えるのは、彼女の中に人を寄せ付けない判断基準があり、2巻を読み終えると、それがある記憶から形成されていることがわかる。朱里が綾乃に惹かれるのも、そこ。絡まりあう二人の過去と今は、人間のことは、出会いがあるから始まった。

川戸崇央 今、先月号の孤独特集で掲載された海外文学を読み返している。『ある一生』と『黄色い雨』は、遠い世界の果てしない孤独な話。おすすめです。

 

“消耗する”ことはしたくないのに

綾乃さんのふわふわ天然っぷりが恐ろしい。ナンパにのって女性とキスをして、不倫相手の家に行くのに旦那と一緒にいっちゃいます? “普通”レールに乗れたのに、感情のままに朱里さんを抱きしめにいきます? 私はどちらかといえば朱里さん側の気持ちがとてもわかる。もうおとななんだから“消耗する”ようなことはしたくない。でも電話番号を消してしまいたいのに、かけてしまう。彼女たちの過去が描かれていて、「いま」につながっていて、だからこそ今後に期待。ああ、恋愛がしたい。

村井有紀子 中村倫也さんがツイッターで動画配信していた「○○(動物)を飼ったらやりたいこと」シリーズを見ては、ひとりでふき出していました。ぜひ!

 

誠実ってなんなんでしょうね

「どっちつかずの女たちはみーんなそう言うの。不誠実だから正直になりますって」朱里のこの台詞が秀逸だ。「今のままだと結局二人とも欺くことになるので」夫に正直な気持ちを話す、と言う綾乃に向けてコレ。誠実でいたい、自分に正直でいたい、この世で賞賛される感情をバッサリである。でも確かに綾乃の判断が周囲をかき乱すわけで。誠実さや善良さで必ず幸せになれるなら物語なんていらないかもしれない。こういう話が必要なのだ。おとなになっても、いや、おとなになったら。

西條弓子 なんとか運動せず健康になれないかと真剣に考えるようになり、なにやら凄そうな健康茶と青汁を調達。私、なんでこんな運動したくないんだろう。

 

どっちつかずのおとなたち

「おとなの三角関係」とあるけれど、3人の関係をまっすぐそう捉えているのは朱里だけ。打ち明けられた夫は信じたくないという思いもあって、「それだけのこと」だと向き合わないし、なにより綾乃自身が初めての気持ちを持て余しまくっている。それこそが綾乃の「好き」が本物である証拠だと思いたいが、朱里にとっては「いつものズルズル泥沼パターン」なのだ。はたして今回は? おとなになるほど自分の気持ちと向き合うのはしんどくなる。でも、認めた先につづく道を見てみたい。

三村遼子 在宅勤務が増え、以前ここに書いた平日昼だけ開いているパン屋の常連になりつつあります。外出自粛中の運動不足は特集の筋トレで解消を!

 

一筋縄ではいかない大人の恋

大人になってからの恋は、より周囲の人や社会との関係性も問われるものだと思う。子供の頃は、お互いが好きでいられたらそれで良かったことも、大人になってしまえば、二人だけの世界で完結することはできない。ましてや、既婚者でありながら朱里に恋をしてしまった綾乃は尚更であろう。旦那、義母、家族、職場など、彼女たちが持つ社会や人との関わりが二人の恋の行く末にどう影響を与えるのか。綾乃たちがどんな選択をするのか楽しみです。どうか旦那さんも幸せになっておくれ……。

前田 萌 一人暮らしにはなかなか辛い在宅勤務……。仕事ははかどるのですが、お話しする相手がいないのです。孤独に押しつぶされそう……。誰か構って!

 

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